後縦靭帯骨化症の症状
公開日:2016年7月25日 14時00分
更新日:2019年2月 1日 20時10分
後縦靭帯骨化症の自覚症状は、非常に多彩です。骨化が頸椎、胸椎、腰椎のどの部分に起こっているかによっても異なりますし、そもそも自覚症状がないことも少なくありません。今回は、後縦靭帯骨化症の症状について説明します。
症状がない場合もある
レントゲン写真などで後縦靭帯の骨化がみられることは決してまれではありません。レントゲン写真上は、日本人の1.9~4.3%に後縦靭帯の骨化があるといわれています。
骨化があってもそれが脊髄や神経根を圧迫していなければ、自覚症状はありません。レントゲン写真で見つけた頸椎の後縦靭帯骨化のうち、脊髄症状が新たに出現する可能性は、6年8か月の観察期間の間で14.7%であったとされています。
後縦靭帯骨化症に特徴的な症状
後縦靭帯骨化症でみられる症状は、症状の出てくる場所によって大きく以下の4つに分けられます。
首、肩の症状
首や肩の症状として最も多いのは、首や肩のコリ・痛み、首の動かしにくさなどです。これらの症状は、おもに後縦靭帯の骨化により脊椎が固く動きにくくなることによって起こります。後縦靭帯骨化症に特徴的なものというわけではなく、その他の頸椎の病気などでも起こりますし、そもそも病気がなくても日常生活で普通にみられる症状です。この症状だけでは後縦靭帯骨化症と診断することはできません。
手、腕の症状
手指や腕の痛みやしびれ感、感覚が鈍い感じ(感覚鈍麻;かんかくどんま)、手指が自由に動かず細かい作業ができなくなる「巧緻(こうち)運動障害」、手に力が入らない「運動障害」などの症状が見られます。これらは骨化した靭帯が神経を圧迫することによって起こります。
「巧緻運動障害」の具体的な例としては、「箸がうまく使えず食べ物がつかめない、もしくはつかんだ物を落とすようになった」「字がうまく書けなくなった」「ボタンのかけ外しがうまくできなくなった」などがあります。いずれも、以前は普通にできていた動作ができなくなる、というのが特徴です。
足の症状
代表的な足の症状としては、足のしびれ感や脱力、感覚鈍麻、歩きにくさ、つっぱり感(痙性麻痺;けいせいまひ)などがあります。症状がひどくなると足を動かすことができず、立ったり歩いたりすることができなくなります(歩行障害)。
排尿、排便の異常
尿や便が出にくい、尿の勢いがない、残尿感がある、尿の回数が多い、便秘になる、尿や便が漏れるなどの症状が出ることがあります。これらの症状は「膀胱直腸障害」と呼ばれるもので、比較的末期に起こることが多いとされています。
初期にみられる後縦靭帯骨化症の症状は?
これらの多彩な症状のうち、比較的初期に見られやすいのは手指や腕、肩や首の周りのしびれや痛みなどの症状です。胸椎に骨化が見られる場合は足の脱力感やしびれが下半身の症状が現れます。最初に出てきます。腰椎の後縦靭帯骨化の場合は、歩行時の足の痛みやしびれ、脱力感などがみられます。
はじめのうちは、症状のある範囲が比較的狭い範囲に限られます。脊髄の圧迫が進んでくるにつれて、しびれや痛みのある範囲が少しずつ広がっていきます。
進行すると出てくる後縦靭帯骨化症の症状は?
骨化が進んで脊髄の圧迫が重度になり病気が進行してくると、初期の症状に加え、足のしびれや知覚鈍麻、筋力の低下などが出現します。徐々にしびれや痛みの範囲が広がり、末期には四肢を動かすことができなくなります。同時に膀胱直腸障害も出現し、最終的には寝たきりになります。骨化が頚髄の上の方まで及ぶと、呼吸機能にも障害が出る場合があります。
後縦靭帯骨化症の症状の進行はどのくらいの速さで進むのか?
症状の進む速度には個人差があります。後縦靭帯骨化があっても一生自覚症状が出ないまま終わる方もいれば、ゆっくりと年単位で自覚症状が進む方もおられます。
気を付けたいのは、転倒・転落です。ちょっとした怪我をきっかけに急に症状が悪くなり、四肢麻痺にまで進展することがありますので、日常生活で首を後ろに反らすような動作や泥酔・けんかなど転倒の原因になったり首を急激に動かす可能性のある行動には十分に注意しましょう。