後縦靭帯骨化症のケア
公開日:2016年7月25日 10時00分
更新日:2020年2月21日 11時52分
後縦靭帯骨化を予防すること、また一度出現した症状を完全に消すことは残念ながら非常に困難です。しかしながら、気をつけて日常生活を送っていただくことで、今ある症状がこれ以上進まないようにすることは可能です。本章では、ご自分でもできる後縦靭帯骨化症の日常生活上の注意点やケアについて説明します。
首を大きく後ろに反らさないように
頸椎に後縦靭帯骨化のある方は、首を後ろに大きく反らすだけで脊髄症状が急激に悪化し四肢麻痺などを生じて寝たきりとなってしまうことがあります。急に大きく後ろに向かって伸びをするような動作、また背中を反らすような動作はお勧めできません。
また、転倒には十分に気をつける必要があります。頸椎後縦靭帯骨化症のおよそ20%の患者さんは、転倒などの軽いケガをきっかけに症状が新たに出現したり、悪くなったりしています。さらに、ケガをきっかけに脊髄症状が新しく出現した患者さんは、そうではない患者さんと比べると手術成績が悪いといった報告もあるようです。転んだり、首に衝撃が加わったりすることは極力避けなければなりません。
ほんのささいな動作でも神経障害が急激に進む場合がありますので、患者さんの介助の際には首に衝撃を加えないよう細心の注意が必要です。
マッサージなどを受ける前には主治医に相談を
後縦靭帯骨化により脊椎の動きが悪くなると、肩や首が凝りやすくなり、痛みが出ることがあります。あんま、はり・灸、マッサージ、整体やカイロプラクティックなどの民間療法に頼る方もいるかもしれません。脊髄症状がない場合の首・肩の痛みにははり・灸が効果的であるとする報告もあるようですが、医学的根拠はありません。それよりも、徒手矯正などといって急激に首を後ろに反らすような動作をすることにより、脊髄症状が悪化する可能性があります。非常に危険ですので、自己判断でマッサージを受ける前に必ず主治医と相談することをお勧めします。
日常生活でできる後縦靭帯骨化症のリハビリテーション
マッサージなどを受けに行くかわりに、歩行やストレッチなどの軽い体操、水泳などの運動療法を行うことがお勧めです。首を後ろに反らすなどの絶対にやってはいけない動作がありますので、必ず医師や理学療法士などの指導を受けましょう。運動を適切に行うことにより首や肩の周囲の血流が改善し、首や肩の痛み・凝り、手足のしびれ感などの症状が良くなる可能性があります。運動をすることで症状が悪化したと感じたら、すぐに医師の診察を受けましょう。
手足のしびれの悪化や尿の出が悪くなったりする症状が出たら、すぐ病院へ
手足のしびれが少しずつひどくなってきた、手を使う細かい動作がやりにくくなってきた、歩くときに足がうまく前にでない、尿の出が悪い、もしくは尿の回数が多いなどの症状があったら、早めに診察を受けましょう。
初めて病院に行く際には、可能であれば脊椎脊髄外科指導医のいる専門施設の受診をお勧めします。お住まいの地域の指導医のリストは、一般社団法人日本脊椎脊髄病学会のホームページで検索することができます(リンク1参照)。
定期的な通院を欠かさないように
後縦靭帯の骨化は、非常にゆっくりではありますが徐々に大きくなっていくとされています。症状がある場合はもとより、自覚症状がなくレントゲン写真やCT検査で偶然見つかったような場合でも、定期的に病院にかかってレントゲン写真を取り、症状が進行した場合にはしかるべき時期に手術を検討する必要があります。
生活習慣と骨化との関係
後縦靭帯骨化症の患者さんを調べると、豆類を食べている人が多かったという報告があるようですが、はっきりしたことはわかっていません。また生活習慣との関係では、6~8時間の適度な睡眠が発症を抑えるという報告があるようです。これもまだ医学的な根拠はありません。後縦靭帯骨化症の患者さんは明らかに肥満の傾向があるという報告もあり、適度な運動は後縦靭帯骨化症の発症を抑える可能性があります。