後縦靭帯骨化症の診断
公開日:2016年7月25日 12時00分
更新日:2024年9月10日 13時44分
後縦靭帯の骨化があるからといって、必ずしも自覚症状が出るわけではありません。後縦靭帯骨化症と診断されるには、自覚症状があるかどうか、またレントゲン写真で後縦靭帯の骨化がみられるかどうかがポイントになります。
まずは自覚症状があるかどうか
後縦靭帯骨化は、レントゲン写真などをみないとはっきりしません。診断のきっかけは、自覚症状です。手や腕がしびれる・痛い、肩や首が凝って痛い、手指の痛みがある、などの整形外科ではよく見かける自覚症状と同時に手指がうまく動かせず細かい動作ができなくなった(巧緻運動障害;こうちうんどうしょうがい)などが出てきたり、手や腕の症状と同時に、またはそれらの症状に引き続き足のしびれや痛み、歩行障害などの下半身の症状が出てきたりしたときは、後縦靭帯骨化症など脊髄を圧迫するような病気を疑います。
後縦靭帯骨化症の診断にはレントゲン写真が大切
脊椎のレントゲン写真を撮ると、ほとんどの後縦靭帯骨化は診断が可能です。問題は、その骨化が自覚症状の原因となっているかどうかです。
頚椎後縦靱帯骨化症診断基準によると、「後縦靱帯骨化を画像上確認でき、それによる臨床症状が出現している場合を頚椎後縦靱帯骨化症とする。」 という決まりがあります。「画像上確認」というのは一般的にはレントゲン写真を指しますが、レントゲン写真で判断が難しい場合にはCT検査などを参考とします。CT検査をしなければわからないような小さな骨化は、後縦靭帯骨化症とは診断できません。
症状としては、画像検査で判明した脊椎の骨化の位置と一致する神経障害による症状があるかどうかをみていきます。脊髄神経の圧迫による症状として特徴的なのは、手や足がつっぱって動かせない痙性手(けいせいしゅ)または痙性歩行(けいせいほこう)、手袋や靴下を履いているような部位に見られる特徴的な感覚障害などです。圧迫が長期間にわたると筋肉の萎縮がみられることがあります。またそれに基づく感覚や筋力の異常、神経の反射の異常があるかどうかを診察で確認します。
頸椎の場合、後縦靭帯骨化によって首が曲がらなくなっているのかどうかを確認します。首が通常の半分以下しか曲がらないことによって日常生活に支障が出ているような場合は、上記のような症状の基準と合わせて後縦靭帯骨化症と診断されます。
症状の重症度は、日本整形外科学会頸部脊椎症性脊椎症治療成績判定基準(JOAスコア: 日整会誌 1994; 68: 490-503)で判断します。この基準は、上肢(腕)、下肢(足)の運動および知覚、膀胱の機能で点数をつけるもので、満点は17点です。症状が重たいほど点数が低くなる仕組みとなっています。
後縦靭帯骨化症と同じような症状が出る病気がたくさんある
後縦靭帯骨化症と同じような症状が出てくる病気には、強直性脊椎炎、変形性脊椎症、強直性脊椎骨増殖症、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、脊柱奇形、脊椎・脊髄腫瘍、運動ニューロン疾患、痙性脊髄麻痺(家族性痙性対麻痺)、多発ニューロパチー、脊髄炎、末梢神経障害、筋疾患、脊髄小脳変性症、脳血管障害、など様々な病気があります1)。
これらの病気と区別するために、レントゲン写真やCT検査・MRI検査などの画像診断のほか、自覚症状の現れ方、神経学的所見、髄液検査、血液検査、脊髄誘発電位や脊髄刺激などの電気生理学的検査などいろいろな所見を総合し、診断を行います。この中でも筋萎縮性側索硬化症などの神経疾患との区別が難しいことがあります。後縦靭帯骨化症とそれらの神経疾患とでは治療法が全く異なるので、ご自身の症状から後縦靭帯骨化症の可能性を疑った場合には、日本整形外科学会の脊椎脊髄病医(リンク1参照)、もしくは日本脊椎脊髄病学会認定の脊椎脊髄外科指導医(リンク2参照)の診察を受けることをお勧めいたします。それぞれの学会のホームページでは、お近くの施設に脊椎脊髄病医、もしくは脊椎脊髄外科指導医が在籍しているかどうか、在籍している場合は氏名を確認することができます。