加齢黄斑変性
公開日:2017年7月 5日 11時39分
更新日:2019年2月 1日 19時03分
加齢黄斑変性とは
眼のなかでカメラのフィルムにあたる部分が網膜で,網膜は眼の内側に張り付いた神経でできた膜です。ここで光エネルギーを神経刺激に変換します。
その網膜の中央部には、ものを特に鮮明に、はっきりと感じることのできる部分があり、それを黄斑といいます。加齢黄斑変性とはその黄斑に年齢的な変化(変性)が生じて起こる病気です。物を見る中心である黄斑が障害されるため、視野の中心が見えにくくなり、視力低下が生じます。
加齢黄斑変性が発症しますと、「視力が低下した」「見ようとする視野の中心が暗く、黒くなってしまう」「物が小さく見える」「物がゆがんで見える」といった症状がでてきます。視力低下の度合いは患者さんによってまちまちですが、進行すると視力0.1以下に低下する場合もあります。
加齢黄斑変性の原因
網膜の外側にブルッフ膜という薄い膜、さらに奥に脈絡膜という血管に富んだ膜があります。加齢黄斑変性は、網膜やブルッフ膜の年齢による変化を基盤として発症します。この加齢性の変化によって脈絡膜からの新生血管が進展し、その血管が脆弱(ぜいじゃく:もろくて弱い)であるため出血や浮腫(ふしゅ:むくみ)を生じます。
「喫煙」「カロチン(緑黄色野菜)の少ない食生活」「太陽光線中の青色波長」などは加齢黄斑変性の発症との関係が指摘されています。
加齢黄斑変性の疫学
日本の中途失明の第1位は糖尿病網膜症、次いで緑内障、第3位が黄斑変性症(大部分を占めるのが加齢黄斑変性)です。
黄斑変性症は米国では中途失明の第1位で、日本でも増加の一途をたどり、将来は米国と同じような状況になると推測されています。日本での最近の調査結果では、黄斑変性症の方は50歳以上で約0.9%、男性は女性の約3倍みられ、約20%は両眼に発症すると報告されています。
加齢黄斑変性の病型
「萎縮型」(図2)と「滲出型(しんしゅつがた)」(図3)の2つに分けられます。
加齢黄斑変性の約9割を占める萎縮型はドルーゼンと呼ばれる老廃物が貯まり網膜色素上皮と呼ばれる組織が徐々に障害されていくタイプで、長い期間をかけて視力が低下していきます。
もう一つの滲出型はその名の通り血液や滲出物といった液体成分がにじみ出てきて、黄斑に障害が生じるタイプです。原因は脈絡膜新生血管といって、網膜の下の脈絡膜に異常な血管ができる事です。
加齢黄斑変性の治療
ひとくちに加齢黄斑変性といっても病状や病気の状態が様々で、それによって選択される治療法も変わります。
内服薬等にて経過観察のみをする場合もありますし、レーザー光線を眼底の網膜にあてることにより病気の進行を遅らせたり、進行を止めることができる場合もあります。また、不幸にも大きな出血が起こった場合には手術になる場合もあります。
加齢黄斑変性という病名のとおり、歳をとることによる眼の奥の変化によって起こる病気(いわゆる老化)の1つという側面もあり治療が難しいのが現状ですが、よりよい視力の維持のためにこれらのような治療を行っています。