嚥下性肺疾患とは
公開日:2016年7月25日 18時00分
更新日:2019年2月 1日 21時27分
嚥下・誤嚥(えんげ・ごえん)とは
嚥下性肺疾患とは誤嚥による肺の病気です。嚥下とは食事や飲み物を飲み込む動作のことです。そして、嚥下をしたときに誤って食事や飲み物、唾液などが気管や肺にはいることを誤嚥といいます。この誤嚥によって肺炎などの肺疾患をきたすのが嚥下性肺疾患です。
高齢者で問題になる誤嚥
嚥下性肺疾患が問題なのは嚥下という動作が日常的に行われているからです。1日3回摂る食事、途中の水分補給、食事をしていなくても口やのどに溜まった唾液を普段は意識せず飲み込んでいます。しかし、喉の機能が低下していると食事中に食べながら呼吸をして食べ物を肺に吸い込んだり、寝ている間に唾液を肺に吸い込んで嚥下性肺炎を発症することがあります。また、嘔吐をしたときに吐いた物を容易に肺に吸い込みます。高齢者の肺炎の7割が誤嚥に関係していると言われています。
なぜ高齢になると誤嚥しやすいのか
なぜ、高齢者に嚥下性肺炎が多いのでしょうか。加齢だけでも神経伝達物質の減少で咳や嚥下反射の低下が起こります。本来は食事をしていると、それほど意識せず食べ物は咀嚼されて、喉に送り込まれ、飲み込んでいます。しかし、嚥下反射が低下すると、食べ物を飲み込む行為は、意識して行わないとできなくなります。また、全部飲み込んだつもりでも食べ物の一部が喉に残って、息を吸い込んだ時に食べ物も吸い込まれて誤嚥をおこします。
本来は異物が気道に入りそうになると無意識に咳が出て、気道に入らないよう防御しますが、咳反射も一緒に低下していることが多いので、食べ物などは容易に肺に入りやすくなります。
これらは喉の知覚(食べ物が喉に触れている感覚)が低下しているので、患者自身も気づきにくく、また家族であってもむせていなかったから、咳がなかったから誤嚥していないと思い込んでいることもあります。
患者によっては誤嚥を繰り返していることは気づいていなくても、食事をすると体調が悪くなることから自然と食事をしなくなったり、食事を拒否することもあります。しかし全く症状の訴えがないこともあり、肺のCTなどを撮ると繰り返された肺炎の傷跡が見つかって、初めて誤嚥している可能性が疑われる場合もあります。
嚥下性肺疾患は繰り返しやすく治りにくい
誤嚥する内容物は大きく2つに分けられます。1つは口の中やのどに溜まったもの、もう1つは胃の中身を嘔吐したものを吸い込む場合です。口や喉に溜まったものは食事もありますが、口の中の細菌も吸い込みます。口の中はどんなにきれいにしても無菌状態にはできません。ただし、口腔ケアをして菌の量を減らすことは肺炎を起こしにくく予防にはなります。嘔吐したものを吸い込む場合は胃酸を一緒に吸い込むことが問題です。この場合、細菌による炎症よりも胃酸による化学的な炎症が問題になります。
高齢者の嚥下性肺疾患の主な原因は喉の機能の低下なので、嚥下性肺疾患は繰り返しやすいのが特徴です。肺炎になれば抗生剤によって治療をされますが、抗生剤は何度も使用すると体の中にその抗生剤が効かなくなる細菌(耐性菌)が現れ、その後の治療を難しくします。