筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療
公開日:2016年7月25日 11時00分
更新日:2019年6月20日 17時02分
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療方法
現在、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療方法は、薬物療法と対処療法があります。
現在の段階では進行を抑制させる、症状を軽減させる、症状の進行のスピードを遅らせる為の治療が主なものになります。
筋萎縮側索硬化症(ALS)の薬物療法
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の薬物療法といえば、ALS治療薬のリルゾールです。日本で唯一認可された治療薬で、症状を遅らせるといった科学的根拠があり治療法として確立しています。
リルゾール50mgを1日2回服薬することが推奨されています。リルゾールはグルタミン酸の興奮毒素を押さえる効果があります。服薬することで気管切開や人工呼吸器を利用するまでも期間を2、3カ月遅らせることができます。しかし、運動機能や筋力回復といったものはありません。現在、筋萎縮側索硬化症(ALS)の症状を緩和する治療薬は、リルゾールのみとなり、その他の薬剤は現在開発中です。
なお、周辺症状の緩和の為に安定剤や消炎鎮痛剤、湿布などが利用されることがあります。
筋萎縮側索硬化症の対処方法
筋萎縮側索硬化症(ALS)を根本的に治すといった治療法は現在ありません。
したがって、筋萎縮性側索硬化症(cc)の対処方法は、身体に起こる痛みや筋力低下を防ぐためのリハビリ(理学療法)を取り入れることになります。
理学療法では身体の疲労や筋肉の低下を防ぎながら、過ごすことができるようにするために大切な治療です。
筋萎縮性側索硬化症の痛みの治療について
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者の40%~70%は、痛みを伴うことがあります。
痛みを和らげるために、抗てんかん剤、筋緩和剤、マッサージや体位変換、温熱療法、非ステロイド系抗消炎剤などが利用されます。
また、不安からくる不眠などがあります。不眠については各症状に合わせた対処方法で改善されない場合は睡眠薬が使用されます。睡眠薬の利用の場合は呼吸障害などが少ないものを選択して利用することになります。
嚥下障害、代謝、栄養障害治療について
筋萎縮性側索硬化症(ALS)では筋肉の萎縮により、喉や嚥下機能が低下することでむせ、誤嚥などが起こりやすくなります。
初期段階では食べ物については、小さく食品を刻む、とろみのあるものを利用するなどで食べ易い状態にすることによってむせや誤嚥などに注意することは必要となります。
運動機能が低下することで、体が代謝するカロリーが減ってくるため、食べ物として摂取するカロリーも調整する必要性もあります。身体状況に合わせて、医師などに相談しながら、食事の形態や摂取カロリーなどを調整する必要があります。
病気が進行するに従って、自力で食事ができないといったこともあります。この場合は、状況に合わせて、経鼻経管栄養※1、胃瘻(いろう)※2を利用することで栄養を摂取することとなります。
胃瘻には内視鏡などによっての手術が必要となりますので行う時期などについては医師と相談し、実施時期を検討します。
- ※1 経鼻経管栄養:
- 細いチューブを鼻から胃へ通して胃へ水分や栄養を投与します。
- ※2 胃瘻:
- お腹から皮膚を通して直接胃にチューブを挿入して水分や栄養を投与します。
呼吸管理について
筋力の低下に伴って自分で呼吸するのが困難となります。この場合、どういったものを利用すべきかを検討の上で実施すると良いでしょう。
初期的な段階では理学療法や呼吸法などを利用して呼吸を改善することができます。症状が進むにつれて、利用が難しい場合は、様々なケースに合わせて以下を選択するとよいと考えられます。
- NIPPV(呼吸補助具)※3
- 気管切開
- 人工呼吸器
- ※3 NIPPV:
- 気管切開をする必要がなく、人工呼吸の補助具とて使用できるもの。マスクを装着することで呼吸困難時期に使用することができる。(就寝時間など)