高齢者の食生活
公開日:2019年5月31日 09時23分
更新日:2022年4月27日 10時46分
高齢者の食生活の実態について
健康長寿を目指すためには健全な食生活が大切です。高齢者の食生活の実態とそこから見える課題について考えていきましょう。
健全な食生活を心がけている高齢者の割合
農林水産省の報告では、男性、女性ともに高齢になるほど健全な食生活を心がける人が多くなっています(グラフ1、表1)。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20代 | 53.4 | 67.1 |
30代 | 56 | 88.9 |
40代 | 59.3 | 81.8 |
50代 | 65.8 | 79.7 |
60代 | 71.3 | 85.3 |
70歳以上 | 81.7 | 90.3 |
栄養バランスに配慮した食事をとっている高齢者の割合
毎日の食事で主食・主菜・副菜を3つそろえて食べることは、栄養バランスにとって重要なことです。この栄養バランスに配慮した食事を1日に2回以上取る人の中でほぼ毎日と答えた人は高齢になるほど多くなっています(グラフ2、表2)。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20代 | 34.5 | 39.2 |
30代 | 33 | 46.2 |
40代 | 49 | 54 |
50代 | 45.8 | 63.8 |
60代 | 58 | 66.8 |
70歳以上 | 73.6 | 73.4 |
定期的に持ち帰りの弁当・惣菜を利用している高齢者の頻度
持ち帰りの弁当や惣菜を定期的に利用している人は、男女ともに60歳以上では少なくなっています(グラフ3、表3)。弁当や惣菜を定期的に利用している人は、栄養バランスの整った食事をとっている頻度が少なくなっています(図1)。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
総数 | 41.3 | 29.2 |
20代 | 53.7 | 42.6 |
30代 | 48.1 | 33.4 |
40代 | 50.2 | 34.5 |
50代 | 50.9 | 32.9 |
60代 | 37.2 | 24.4 |
70歳以上 | 25.4 | 21.6 |
高齢者の栄養状態
高齢になるほど低栄養である割合が高くなっています。女性は男性に比べて低栄養の割合が高い傾向にあります(図2)。
高齢者の食生活の課題について
高齢者は健全な食生活を心がけている割合は多いものの、実際に、主食・主菜・副菜がそろった栄養バランスの整った食事をしている割合は、食生活への意識に比較して低い割合となっています。食事をとっていても、高齢になるほど要介護や死亡リスクが高くなるとされる低栄養になる傾向もみられます。
60代の男性の外食や、60代の男女、70代の女性で弁当や惣菜を利用する人の割合は3割を上回っており、弁当や惣菜利用者では、栄養バランスの整った食事をとる機会も少なくなっています。
健全な食生活への意識はあるものの低栄養となる高齢者がいることや、栄養バランスの整った食事がとれていないことの背景には孤食と食料品アクセス困難があげられます。
高齢者の孤食
60代以上で、一人で食べることがある人の割合は60代では男性22.7%、女性28.4%、70代では男性20.0%、女性33.5%となっています。頻度別にみると、70代女性の4人に1人がほとんど毎日一人で食べており、高齢女性の一人暮らしが多いことに関与していると考えられます4)(リンク1参照)。
孤食では、自分以外の誰かのために食事を用意するということがないため、栄養バランスが偏りがちとなります。加齢に伴う口腔機能の低下や一人で食べると食欲がわきにくいということもあり、食事量も低下しやすくなります。食事から必要な栄養やエネルギーをとることができないと筋肉量が減少し、活力が低下します。さらに食欲が落ちて栄養不足となるという悪循環が待ち受けています。
高齢者の食料品アクセス困難
食料品を買いに行く店まで直線距離で500m以上、かつ65歳以上で自動車を利用できない人は、全国で約825万人にのぼると推計され、65歳以上人口の24.6%に当たる人が食料品アクセス困難者と報告されています(平成27年国勢調査(2015年)と平成26年商業統計の地域メッシュ統計より)(図3)5)。食料品の買い物が困難となることで、口にする食品が限られ、低栄養につながるリスクが言われています6)。
高齢者の孤食と食料品アクセス困難への対策
高齢者の孤食から起こるリスクを軽減するために、誰かと一緒に食事をする共食がすすめられています。共食をすると栄養バランスが調った食事をとる機会が増え、コミュニケーションをとりながら食べることで食事がおいしいと思えるようになり、食欲も増します。一人暮らしの高齢者が集まって食事をする食事会や地域の子ども達と食事を共にする事業が地域で開かれています。
食料品アクセス困難に対しては、宅配サービスや買い物代行、移動販売、ミニ店舗の設置などが地域単位で取り組まれています。