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脳血管疾患(脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血)予防のための食事とは

公開日:2016年7月25日 13時00分
更新日:2023年7月14日 09時50分

脳血管疾患とは

 脳血管疾患とは脳の血管のトラブルによって、脳細胞が壊れる病気の総称です。主な脳血管疾患には脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血があります。脳血管疾患は発症すると命にかかわることもありますが、医療の進歩で死亡者数は減ってきており、厚生労働省の令和2年(2020年)人口動態統計人口動態統計によると、脳血管疾患は日本における死因第4位となっています。

 特に脳の血管の動脈硬化が要因で、脳梗塞の発症は増加を占めており、脳血管疾患の約60%を占めています1)

 脳血管疾患の危険因子は、肥満によるメタボリックシンドローム(内蔵脂肪型肥満)をはじめ、高血圧、糖尿病、脂質異常症など基礎疾患が原因になっています。

 また、動脈硬化は老化現象の1つではありますが、動脈硬化が促進することで脳梗塞などの発症率は高くなります。再発率も高く、1年以内で約10%、5年以内で約30%となっています。

 そのため、脳血管疾患の予防は高血圧や糖尿病などの基礎疾患の治療、食事、運動、喫煙、飲酒など生活習慣の改善を行い、健康管理に気を配ることが大切です。

脳血管疾患予防のための食事の仕方とは

脳血管疾患予防のための食事

  1. 適正のエネルギーを摂取する
  2. 3食食べる
  3. 腹八分目にする
  4. バランスの良い食事をする
  5. 食塩を摂り過ぎない
  6. アルコールを控える
  7. 野菜や果物を摂取する
  8. こまめな水分補給を行う

1日3食、腹八分目の食事を心がけて動脈硬化予防

 肥満になると内臓脂肪が蓄積されていきます。内臓脂肪からはアディポサイトカインという物質が分泌され、血栓ができやすくなり、動脈硬化を促進させます。内臓脂肪を減らすためには、適度な運動と食事に気を付けます。カロリーを気にしすぎて1日1食や2食にしてしまうと、ドカ食いになってしまいます。さらに食事を抜くと、次の食事で糖や脂肪が過剰に吸収され、太りやすくなるので1日3食を食べることが大切です。

 日本人の食事摂取基準(2020年版)では、エネルギーの摂取量と消費量のバランスの維持を示す指標としてBMIが導入され、目標とするBMIの範囲が定められています。目標とするBMIの範囲内に体重を設定し、エネルギーの摂取量及び消費量のバランスを維持することが大切です。また、65歳以上の高齢者は、フレイルの予防及び生活習慣病の発症予防を考慮した値に定められています。

 目標とするBMIの範囲は表1の通りです。

表1:目標とするBMIの範囲2)
年齢目標とするBMIの範囲
18~49歳 18.5~24.9
50~64歳 20.0~24.9
65~74歳 21.5~24.9
75歳以上 21.5~24.9
  • 男女共通。あくまでも参考として使用すべきである。
  • 観察疫学研究において報告された総死亡率が最も低かったBMIを基に、疾患別の発症率とBMIの関連、死因とBMIとの関連、喫煙や疾患の合併によるBMIや死亡リスクへの影響、日本人のBMIの実態に配慮し、総合的に判断し目標とする範囲を設定。
  • 高齢者では、フレイルの予防及び生活習慣病の発症予防の両者に配慮する必要があることも踏まえ、当面目標とするBMIの範囲を21.5~24.9kg/m2とした。

バランスの良い食事とは

 日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日の摂取カロリーに対して、エネルギーを産生する栄養素、すなわち、たんぱく質、脂質、炭水化物(アルコールを含む)とそれらの構成成分が占めるべき割合として、エネルギー産生栄養素バランスで構成比率の指標が定められています。これらの栄養素バランスは、エネルギーを産生する栄養素及びこれら栄養素の構成成分である各種栄養素の摂取不足を回避するとともに、生活習慣病の発症予防とその重症化予防を目的としています2)

表2:エネルギー産生栄養素バランス 目標量a,b(%エネルギー)
年齢たんぱく質c脂質d(脂質)脂質d(飽和脂肪酸)炭水化物e,f
18~49歳 13~20 20~30 7以下 50~65
50~64歳 14~20 20~30 7以下 50~65
65歳以上 15~20 20~30 7以下 50~65
  1. 必要なエネルギー量を確保した上でのバランスとすること
  2. 範囲に関しては、おおむねの値を示したものであり、弾力的に運用すること
  3. 65歳以上の高齢者について、フレイル予防を目的とした量を定めることは難しいが、身長・体重が参照体位に比べて小さい者や、特に75歳以上であって加齢に伴い身体活動量が大きく低下した者など、必要エネルギー摂取量が低い者では、下限が推奨量を下回る場合があり得る。この場合でも、下限は推奨量以上とすることが望ましい
  4. 脂質については、その構成成分である飽和脂肪酸など、質への配慮を十分に行う必要がある
  5. アルコールを含む。ただし、アルコールの摂取を勧めるものではない
  6. 食物繊維の目標量を十分に注意すること

こまめな水分補給が大切

 水分不足は血液の粘りを強め脳梗塞の発症を高めるので、こまめな水分補給は大切です。

脳血管疾患のリスクを上げる食べ物

アルコール

 適量(純アルコール20gの飲酒はHDLコレステロールを増やし、動脈硬化のリスクを軽減すると言われています。しかし多量の飲酒は肥満、脂質異常症、高血圧、糖尿病を発症させるので、週1~2回の休肝日を設け、飲酒量は控えましょう。

 また、くも膜下出血や脳出血は飲酒量に比例して発症率が上昇します。

動物性脂肪(飽和脂肪酸)

 肉の脂身、ラードなど動物性脂肪はLDLコレステロールや中性脂肪を増やします。特に注意が必要なのはマーガリンやショートニングなどトランス脂肪酸を含む油です。これらもLDLコレステロールを増やします。パン、菓子類、加工食品など様々な食品に使われています。

塩蔵品、加工食品、調味料

 食塩の過剰摂取は高血圧を招きます。

甘いもの、過剰の糖質摂取

 糖質の過剰摂取は肥満につながるだけでなく、血液中の余分な糖分により血管が傷つきます。高血糖状態が続くと全身の血管が傷害され、動脈硬化が促進され、血栓ができやすくなります。

脳血管疾患の予防になる食べ物

青魚

脳血管疾患(脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血)予防になる食べ物として血栓をできにくくし、LDLコレステロールを下げる働きがあるDHAやEPAを含む鰯と鯵の写真。

 鯖、鯵、鰯などの青魚に含まれるDHAやEPAは血栓をできにくし、LDLコレステロールを下げる働きがあります。

野菜

脳血管疾患(脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血)予防になる食べ物として動脈硬化要因である活性酸素を除去する働きがある抗酸化作用を含むβ-カロテンやビタミンCを含む緑黄色野菜の写真。

 緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンやビタミンCには抗酸化作用があり、活性酸素を除去する働きがあります。動脈硬化の原因は血管壁のLDLコレステロールが活性酸素によって酸化して固まること(アテローム)が原因です。抗酸化作用によってLDLコレステロールが酸化されるのを防いでくれます。

海藻類

脳血管疾患(脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血)予防になる食べ物として腸内でコレステロールや中性脂肪を吸着し、便と一緒に排泄する働きのある水溶性食物繊維と血液中の余分なナトリウムを排泄し血圧を下げる働きのあるカリウムを多く含む海藻の写真。

 水溶性食物繊維やカリウムを多く含みます。水溶性食物繊維は腸内でコレステロールや中性脂肪を吸着し、便と一緒に排泄してくれます。またカリウムは血液中の余分なナトリウムを排泄し、血圧を下げる働きがあります。低カロリーなので、ダイエットにもオススメな食べ物です。

果物

脳血管疾患(脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血)予防になる食べ物として抗酸化作用のあるポリフェノールを含むブルーベリーといちごの写真。

 ブルーベリーやいちごに含まれるポリフェノールも抗酸化作用があります。また果物はカリウムが多いため、ナトリウムを排泄する働きがあります。ただし糖分も多いため、食べ過ぎると中性脂肪が増え、血糖値も上昇するので糖尿病の方や血糖値が高めの方は控えます。

オリーブオイル、菜種油

脳血管疾患(脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血)予防になる食べ物としてLDLコレステロールを下げる働きがあり、動脈硬化を予防するオレイン酸を含むオリーブオイルの写真。

 オレイン酸を含む油はLDLコレステロールを下げる働きがあり、動脈硬化を予防します。

大豆

脳血管疾患(脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血)予防になる食べ物として筋肉と血管の収縮を防ぎ、血液が凝固しすぎないように保つ働きがあるマグネシウムを含む大豆製品の写真。

 大豆はマグネシウムとカリウムを含みます。マグネシウムは筋肉と血管の収縮を防ぎ、血液が凝固しすぎないよう保つ働きがあります。

参考文献

  1. 平成27年(2015)人口動態統計(確定数)の概況 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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