認知症予防のための食事とは
公開日:2016年7月25日 10時00分
更新日:2024年8月30日 13時17分
認知症とは1)
「脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態」を言います。
認知症には、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきるアルツハイマー型認知症や脳梗塞や脳出血などの脳血管障害による血管性認知症などいくつかの種類があります。
認知症予防のための食事とは2)
認知症予防のための食事
- バランスの良い食事
- 摂取カロリーを守る
- 塩分を控える
- 間食、糖分を控える
認知症の予防に大切なことは脳の健康を維持することです。生活習慣病の改善と食事からの老化予防です。
1. バランスの良い食事
たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルの栄養バランスの良い食事をすることは、脳に必要な栄養素である魚油に多く含まれるEPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸、葉酸、ビタミンA、C、E、ファイトケミカル(植物性化学物質:健康に良い影響を与える植物由来の化学物質の総称)、ミネラルを補うことになります(リンク1参照)。
イタリア料理に代表される地中海食は穀類(パン、パスタ類)、野菜、果物、オリーブ油、魚、ワインを主体として肉類摂取は比較的少ないのが特徴で、脂質異常症や糖尿病、冠動脈疾患、高血圧の予防になるとされていますが、アルツハイマー病のリスクを抑える効果も期待できます4)(リンク2参照)。
2. 摂取カロリーを守る
摂取カロリーに気をつけることで肥満を予防できます。肥満はアルツハイマー型認知症になりやすいだけでなく、内臓脂肪の蓄積によって高血圧や糖尿病、耐糖能異常を引き起こします。
3. 塩分を控える
脳血管性認知症は脳梗塞と関連性がありますが、脳梗塞の背景には高血圧が存在している場合が多いので、高血圧予防のために減塩(食塩を減らす)をし、血液中のナトリウムを排泄する働きのあるカリウムを多く含む野菜や果物、海藻類を補います。脳梗塞を予防することで、脳血管性認知症の予防になります。
4. 間食、糖分を控える
また、糖尿病や耐糖能異常は脳血管性認知症、アルツハイマー型認知症の発症リスクを高めます。血糖値をコントロールするためにも、糖分の多い甘いお菓子、うどんや食パンなどの炭水化物中心の食事を控えていきます。食物繊維は野菜やきのこ類、海藻類から摂取し、血糖値の上昇を抑えます。
認知症のリスクを上げる食べ物
- 肉の脂身(ラードやヘッド)
- マーガリン
- ショートニング
動物性の油(魚は除く)で飽和脂肪酸やショートニングやマーガリンなどのトランス脂肪酸の過剰摂取は血中のLDLコレステロールを増やし動脈硬化を引き起こします。動脈硬化が起きると脳梗塞も発症しやすくなります。
特にファーストフードや市販のお惣菜、菓子類、菓子パンなど中心の食事になるとトランス脂肪酸の摂取量が増えるので、これらの食品の過剰摂取は控え、適度な摂取に留めることがすすめられます。
認知症の予防になる食べ物
- 魚
- 緑黄色野菜、豆類、果実類
- カレー
- コーヒー
- 緑茶
- 赤ワイン
魚
特に秋刀魚(さんま)、鯵(あじ)、鰯(いわし)、鯖(さば)などの青魚には、オメガ3脂肪酸のDHAやEPAが多く含まれています。DHAは脳の構成成分であり、記憶力や判断力の向上、認知症予防、特にアルツハイマー病発症予防に有効であるという報告があります6)。
また、EPAは脳まで届きませんが、血管を拡張して血行を促進するので生活習慣病を予防できます。生活習慣病の予防により、間接的に認知症に役立ちます。
緑黄色野菜、豆類、果実類
緑黄色野菜ではほうれん草、小松菜、菜の花。豆類は納豆、枝豆、空豆。果実類はいちご、キウイ、オレンジに葉酸が多く含まれています。葉酸はビタミンB群の一種であり、不足すると肝臓で作られた悪玉アミノ酸であるホモシステインという物質が増えます。ホモシステインは動脈硬化を進行させるほか、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβの作用を強めます。
また、血中のホモシステインが増えると認知症だけでなく、脳血管疾患を招くこともあります。葉酸を摂取する事でホモシテインを減らすことができ、認知症予防に期待できます4)。
カレー
カレー粉に入っているウコンには、クルクミンというファイトケミカルが含まれています。クルクミンはYangらによる報告によると、17ヶ月齢のアルツハイマー病モデルマウスにクルクミン500ppmを混ぜた餌を与え5ヶ月間飼育したところ、22ヶ月齢時のマウスの老人斑面積は17ヶ月齢時のマウスの老人斑面積に比べ、30%も減少していました6)。
アミロイドβが脳内にたまる速度を抑えるほか、できてしまった老人班の分解を促します。
コーヒー
コーヒーに含まれるクロロゲン酸はポリフェノールの一種で抗酸化作用を持っています。
緑茶
新茶に多く含まれるテアニンといううまみ成分(アミノ酸)には血圧上昇を抑制し、脳の神経細胞を保護する働きもあり、認知機能の低下を抑える作用があると言われています7)。
赤ワイン
少量ないし中等量の飲酒は認知症の原因にはならないのみならず、認知症の予防になる可能性があります3)。赤ワインに含まれるポリフェノールには、強力な抗酸化作用があり、老化、動脈硬化、高血圧、認知症予防に期待できます。一日250mlから500mlのワインの飲用はアルツハイマー病、認知症の発症を抑えるという報告もあります4)。しかし、ワインの持つ抗酸化作用によるものと推定されるが、ワインを飲用するような生活様式が認知症の発症を押さえている可能性もあります。また、1日に350mLのビール4本相当を越えるような大量の飲酒は認知症の危険性を高めるので、注意が必要です。
自分で調理することも認知症予防に
自分で調理をすることも認知症予防としてオススメです。調理は何を作るか?材料はどうやって切るか?など複数の作業を同時に行うので、特に頭を使っています。また調理の時は立っているので、身体機能も維持できます。使わない機能はどんどん低下してしまうので、調理は1度に頭も体も使います。脳の前頭前野の活性化を誘起する可能性もあると言われ、認知症予防にも効果があると期待されています。
参考文献
- Mukamal KJ, Kuller LH, Fitzpatrick AL et al. Prospective study of alcohol consumption and risk of dementia in older adults. JAMA, 289:1405-1413, 2003.