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第3回 ダイエット「入門」の達人

公開日:2024年10月18日 09時00分
更新日:2024年11月12日 16時08分

仲野 徹
隠居・大阪大学名誉教授


 手を替え品を替え、これでダイエットができますという本が出され続けています。言い換えてみると、それだけダイエットは難しいということでしょう。でも、原理は極めて単純です。摂取カロリーを減らせばいいのです。まぁ、それを実行するのが難しいわけですが。

 運動すれば痩せるのではないのか、と思われるかもしれませんが、それはほぼ間違いです。『運動しても痩せないのはなぜか 代謝の最新科学が示す「それでも運動すべき理由」』(草思社)という本によると、他の動物と違って、人間はどうやら運動しても消費カロリーが増えないようなのです。非常に信頼度の高い方法による結論なので、まず間違いありません。

 自慢じゃありませんが、効きそうなものからそうでないものまで、10種類以上のダイエットを試みてきました。なので、ダイエット入門の達人を名乗ってます。数多(あまた)の経験から導き出した結論は、ダイエット中であると自覚し続けることです。そのためには利き手の親指の爪に、ダイエットしてることがわかる印をつけるのが有効です。そうしておくと、何かを食べる時、箸でもフォークでも手づかみでも、必ずその印が目に入ります。そこで、食べる量を抑えればいいのです。この方法、健康雑誌やテレビでも取り上げられたことがあるほど、確かに有効です。慣れると印などなくても、親指を見れば抑制がかかるようになります。私など、コンビニでお菓子を買おうかどうか迷った時、親指をじっと見つめて、やっぱりやめておこうと決断することがあるほどです。ちょっと怪しいおっさんですけど。

 自分で10年以上続けているのは、レコーディングダイエットです。といっても簡単なもので、毎朝体重を記録するだけ。増えすぎたら食べる量を減らす、の繰り返しです。これについてはスマホよりもグラフ用紙がオススメです。記入しながら、あっちゃ〜増えてきた、とか心理的に自分を追い込むのが大事なように考えています。

 1年ほど前から始めたのはプチ断食ダイエットです。これは、14時間以上、できれば16時間、食事をとらないでおくという方法です。他のやり方は食べる量の制限が必要ですが、この方法は、時間さえ守ればどれだけ食べてもいいというのが大きなメリットです。といっても、それほど食べられませんけど。

 さてどうでしょう。少なくとも私は、親指、レコーディング、プチ断食で適正体重を維持できています。健康のため、気になる人はやってみられてはどうでしょう。

著者

仲野 徹(なかの とおる)
 1957年大阪市生まれ。大阪大学名誉教授。大阪大学医学部卒業後、ドイツ留学、京都大学医学部講師、大阪大学微生物病研究所教授を経て、2004年大阪大学大学院医学系研究科病理学教授。2022年定年退職。現在、晴耕雨読+ときどき物書き生活の隠居。著書に『からだと病気のしくみ講義』(NHK出版)、『仲野教授のこの座右の銘が効きまっせ!』(ミシマ社)など多数。

公益財団法人長寿科学振興財団発行 機関誌 Aging&Health 2024年 第33巻第3号(PDF:6.0MB)(新しいウィンドウが開きます)

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