健康長寿ネット

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認知症の予防

公開日:2016年7月25日 19時00分
更新日:2019年11月 8日 15時45分

 認知症にならないためには、どうしたらよいのでしょうか?

 いくつかポイントがあります。第一は、運動をおこなうこと、第二に食事に気をつけること。第三に、社会的な活動に参加することです。

認知症はメタボリックシンドロームとの関連あり

 高血圧、高脂血症、肥満、糖尿病などのメタボリックシンドロームは、脳血管性認知症だけでなく、アルツハイマー型認知症においても危険因子として考えられてきています。

 たとえばLuchsinger1)が、65歳以上のアメリカ一般住民1,138名を対象とした研究で、高血圧・糖尿病・心疾患・喫煙の4つの危険因子の有無とアルツハイマー型認知症の発症との関連を検討していて、その結果、追跡開始時に有していた危険因子の数が多いものほどアルツハイマー型認知症の発症数は増加し、3個以上の危険因子を有するものは危険因子のないものに比して、3倍以上のリスクとなることを報告しています。

 メタボリックシンドロームの予防、つまり運動や身体活動を増やすことが、アルツハイマー型認知症の発症を減少させる可能性を示しています。

運動は認知症の発症数を減少させるか

 1996年から2007年までに発表された文献で、運動および身体活動が認知症およびアルツハイマー型認知症発症に関与するか調査した長期疫学研究では、地域在住の高齢者を2.5年から30年間経過観察した報告24論文中、20の論文で身体活動および運動が認知機能低下および認知症の発症に対して防御的な効果があることを報告しています。

認知症予防のためにどのような運動をすればよいか

 認知症予防のためにどのような運動をすればよいのでしょうか。

 まず第1は、週2から3回以上、30分以上運動をすることです。主としては歩くことがすすめられます。週3回以上30分以上の運動を行ったものは、認知機能の低下するものが有意に少なく、高齢者の認知症の発症を減少させていることを示しています。

 最近は、単純に一つの運動を行うのではなく、運動に他のトレーニングを組み合わせたものがより認知症の予防に有効であるとされています。たとえば、国立長寿医療研究センターの報告では、運動に認知課題(頭の体操)を組み合わせた運動をコグニサイズ(リンク1参照)と名付けています。運動しているときに、「4の倍数で手をたたく」または、しりとりをしながら運動するなどです。

リンク1 国立長寿医療研究センター 認知症予防運動プログラム「コグニサイズ」 (外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

 第2としては、東北大学加齢医学研究所の報告では、筋力強化トレーニングと有酸素運動を組み合わせたトレーニングが認知機能の改善をしたと報告しています。具体的には、マシーンでの筋力強化をおこないながら、自転車エルゴメーターまたはトレッドミルやランニングマシーンで有酸素運動を行うことです。

認知症予防のための食事とは

 まず、認知症になりやすい食事は、若い頃からの食事の傾向に特徴があることがわかっています。それが次の三つのことです。

認知症になりやすい食事

  1. 偏食。野菜と魚を嫌い、肉だけを好む
  2. ビタミンB群、C、E、ミネラルの摂取が少ない
  3. 女性は小食。食事の代わりにお菓子やケーキを食べる

認知症予防のための食事のポイント

 認知症を予防する食事のポイントは、高血圧、高脂血症、肥満、糖尿病などのメタボリックシンドロームを予防する食事が重要です。その食事として日本食が比較的適していると言われています。

 具体的には、まずコレステロールを減少させる不飽和脂肪酸DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を多く含む魚、特にサバ・イワシ・サンマなどの青魚です。米・タフツ大学がおこなった調査によれば、魚を週2回食べている人は、月1回しか食べない人に比べてアルツハイマー病の発症は約41%減少するという結果が出ています。

 また、血中コレステロールや中性脂肪を低下させる働きがあるレシチンを多く含む大豆製品です。血栓の主成分フィブリンを溶かす働きをもつナットウキナーゼを含む納豆も有効な食品です。

 活性酸素によってうける神経細胞膜のダメージを減らす作用のある抗酸化成分を多く含む緑黄野菜、ざくろ・ベリー類・果物、アーモンド・ナッツ類なども有効とされています。黒ゴマには抗酸化作用があると言われるセサミンが含まれています(リンク1)。

リンク1 抗酸化による老化防止の効果

社会活動に参加することは認知症の予防になる

 Verghese2)は、地域在住の認知症がない高齢者469名を平均5.1年経過観察して、読書や楽器演奏などの知的活動やテニス、水泳、階段の昇降、家内作業などの身体活動を含む余暇活動の頻度と認知症発症の関係を調査しました。その結果、124名において認知症が発症し、知的活動が認知症の発症数を減少させ、身体活動を含む余暇活動では、ダンスのみが発症数を下げたと報告しています。

 趣味を持つこと、料理をすること、社会の中で役割を持つことが認知症予防につながります。

関連書籍

 公益財団法人長寿科学振興財団は超高齢社会における喫緊の課題として認知症の実態、診断・予防・ケアについて学術的研究成果を「認知症の予防とケア」と題して研究業績集にまとめました。研究業績集の内容を財団ホームページにて公開しております。是非ご覧ください。

公益財団法人長寿科学振興財団 「認知症の予防とケア」平成30年度 業績集

参考文献

  1. Luchsinger JA,et al: Aggregation of vascular risk factors and risk of incident Alzheimer disease. Neurology,2005; 65: 545-551
  2. Verghese J, et al:Leisure activities and the risk of dementia in the elderly. N Engl J Med 2003;348:2508-2516

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