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ラフターヨガ(笑いヨガ)

公開日:2018年5月 9日 09時00分
更新日:2023年8月 3日 12時58分

図:高齢夫婦が手を上げて笑っているイラスト。ラフターヨガを実践していることを表現している。

ラフターヨガ(笑いヨガ)とは

 ラフターヨガとは、「笑いヨガ」ともいわれ、笑いと深呼吸を組み合わせた、健康体操と考えると分かりやすいでしょう。1995年にインドの医師マダン・カタリア博士と、ヨガの熟練者である妻のマヂュリー・カタリアによって考案されました。最初はたった5人でムンバイの公園で始めたヨガといわれています1)

 現在は、世界100ヵ国以上へ浸透しており、1万人以上を有するラフターヨガのクラブが、定期的に活動をしています。笑うことによって自然に多くの酸素を取り入れることができ、心身ともにエネルギーが満ち溢れた状態となるのが特徴で、心身ともにすっきりとし、元気になることを目的としています(参照リンク1)。

参照リンク1 LAUGHTER YOGA INTERNATIONAL(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

ラフターヨガ(笑いヨガ)の医学的効果とは

 ラフターヨガは、医学的にどのような効果を我々の体に与えてくれるのでしょうか。

 まず、ラフターヨガを行うと、痛みを抑える物質である「エンドルフィン」の分泌レベルを上げることができます。結果的に気分爽快となり、さまざまな痛みを軽減することができると考えられています1)

 この考え方を前提に置き、高齢者がラフターヨガを2週間に1度、計4回行ったことによる効果を調べる研究が滋賀県立大学の研究班により行われました。その結果、次のような効果が確認できたということです2)

身体的効果

 笑いをつかさどる脳の中枢には、大脳新皮質、大脳辺縁系、視床下部があります。特に視床下部は自律神経である交感神経や副交感神経をコントロールする働きがあります。

 また、笑うと呼吸筋や腹筋などが大きく動くため酸素が体内にたくさん入り、酸素供給量が増えます。すると、体の中では副交感神経が優位に働くようにスイッチが入ります。

 こうした変化が体に起こった結果、ラフターヨガをすることによって、脈拍低下、呼吸数減少、および酸素飽和度(さんそほうわど:体内で血液と結びついている酸素の量)の上昇が見られました(表1)。

 通常行っている「ヨガ」の中に、「笑い」を取り入れたことで、被験者の感情は上向きになり、「日常生活でも取り入れたい」「普段から笑顔になった」などの感想も聞かれたようです。

表1:ラフターヨガの前後での身体的変化2)より作成
測定値ラフターヨガ前ラフターヨガ後変化
血圧 137.2mmHg 140.5mmHg わずかに上昇(ただし、運動後に測定したものでることと、高齢者が対象なので血圧が変動しやすい状況にあったと考えられる)
脈拍数 70.3回/分 63.5回/分 減少
呼吸数 19.0回/分 17.4回/分 減少
酸素飽和度 97.9% 98.5% 増加(100に近づくほど良い)
フェイススケール 3.2点 2.3点 わずかに低下
※フェイススケール:
フェイススケールとは、その時の感情を顔の表情であらわすもので、5段階評価のうち3を基準として数値が低いほど気分や感情が「良い」ことを示す(図1)。
図1:フェイススケールとは、その時の感情を顔の表情であらわすもので、5段階評価のうち3を基準として数値が低いほど気分や感情が「良い」ことを示すイラスト。
図1:フェイススケールの例

心理的効果

 心理的な効果としては感情や気分の変化が大きく、楽しい気分になった、体が軽くなった、楽になったという意見が多く聞かれたそうです2)

 楽しい気分になった、体が軽くなった、楽になったという意見が多く聞かれた理由として、笑いによる副交感神経への影響が考えられます。前述のとおり笑いによって酸素が体内にたくさん入り、副交感神経が優位な状態になります。また、「笑うと幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの値が高まりやすい」(高柳)と言われます。そのためラフターヨガで笑うことによって副交感神経が優位になることや、幸せホルモンともいわれるセロトニンの分泌が増えることから、心身ともに安定し、ストレス軽減にも効果がありまると考えられます2)

 また、ラフターヨガによって周囲の目を気にせず、仲間同士で大声で笑い、自己解放感を共有することでセロトニンは多量に分泌されることから、日常の笑いよりも効果が高いと考えられています2)

ラフターヨガは交換神経と副交感神経のバランスがカギ?

 一般的に、体のリラクゼーションを促す、脈拍や呼吸数を減少させる、体を「攻撃的」な状態から「安楽」な状態へ近づけるのは、「副交感神経」の働きによるものといわれています。これまでに行われているラフターヨガに関する研究でも、笑いにはこのような「人がリラックスし、安楽だと感じる状態へ近づける」効果があるとされてきました。

 では、それと対照的な働きをする「交感神経」はどうでしょうか。交感神経は人が活動するときやストレスを感じたときなど酸素が大量に必要になるときに、視床下部からの指示により、血圧を上昇させたり、呼吸数を増やしたりして酸素を体に供給させる働きがあります。

 そのため、人は交感神経と副交感神経のバランスを保ちながら、日常的な生活をしています。

 また、副交感神経緊張の効果は交感神経緊張の存在の下で増強されると言われています。そのため、ラフターヨガは、まず身体を動かし交感神経を刺激させ、交感神経を優位にした状態にします。そして「笑う」ことで副交感神経を優位にさせています。

 ラフターヨガの身体的効果を測定した研究2)では、ラフターヨガの開始前と終了後に、血圧などのバイタルサインや、フェイススケールによる感情の変化を聞き取りましたが、実際には「笑い」を試みる前に、「体を自由に動かす時間」を設けていたのだそうです。これにより一時的に「交感神経が優位な状態」を作り出し、そこ後に「笑い」を取り入れることで、より一層、副交感神経の働きが強まったのだと考えられています。

 このようにラフターヨガを行うことで、心身共に元気になることが医学的にも実証されています。笑い方は、「楽しいことはないが、自ら笑いを発生させる」という自発的な笑い(作り笑い)でも、「楽しい状況から自然に笑いが発生する」という受身の笑い(自然の笑い)でも、身体の作用は同じであることが分かっています3)

ラフターヨガはどこでできるか

 ラフターヨガはNPO法人ラフターヨガジャパンが認定する講師が運営するラフターヨガクラブで体験することができます。ラフターヨガを体験したい方はリンク2よりお近くのラフターヨガクラブを探してみてください。

リンク2 ラフターヨガを探す NPO法人ラフターヨガジャパン(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

参考文献

  1. ラフターヨガとは NPO法人ラフターヨガジャパン(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 高齢者におけるラフターヨガによる笑いの身体的・心理的効果に関する研究 (活動と資料) The University of Shiga Prefecture Repository(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 笑い学研究19(2012.7) 作り笑い(整膚と笑いヨガ)による健康効果(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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