身体拘束とは
公開日:2019年2月13日 12時30分
更新日:2019年6月26日 14時32分
身体拘束とは1)2)
身体拘束とは、 徘徊、他人への迷惑行為等のいわゆる問題行動などを防止するために、車いすやベッドに拘束するという、高齢者の行動の自由そのものを奪うことです。また、車いすやいすからのずり落ちや転倒、ベッドからの転落、車いすとベッドとの間を移乗する際の転倒等といった事故を防止するために、これらの用具に拘束するという、福祉用具の間違った利用のことを言います。
2000年4月に始まった介護保険制度に伴い、高齢者が利用する介護保険施設などでは身体拘束が禁止されており、現在身体拘束ゼロに向けた取り組みがいろいろと行われています。
身体拘束は人権擁護の観点だけではなく、高齢者のQOLを損なう危険性が指摘されています。
厚生労働省では「身体拘束ゼロ作戦推進会議」という有識者会議を開催し、「身体拘束ゼロへの手引き」が取りまとめられました。
身体拘束とはどのようなものか3)
身体拘束の具体例としては、ひもや抑制帯、ミトンなどの道具を使用して、ベッドや車椅子に身体を縛ったりすることをいいます。また、身体の動きを、道具により制限するということだけでなく、部屋に閉じ込めて出られないようにする、あるいは、向精神薬などを飲ませて動けなくすることも、身体拘束となります。
他にもベッド柵を使用してベッドから降りられないようにする、おむつを外させないように介護衣(つなぎ服)を着せることも身体抑制に該当します。
介護保険指定基準において、身体拘束禁止の対象となる具体的行為には、以下のような行動が明示されています1)2)。
- 徘徊しないように、車椅子や椅子、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
- 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
- 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
- 車椅子や椅子からずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型抑制帯や腰ベルト、車椅子テーブルをつける。
- 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。
- 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
- 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
- 自分の意思であけることのできない居室等に隔離する。
このような、本来であれば「禁止対象」となる介護者側の行動に対し、身体拘束ゼロに向けた取り組みが進められています。
身体拘束に伴う弊害とは1)
身体拘束を行うことにより考えられる影響としては、身体的、精神的、社会的な弊害(ダメージ)を、拘束を受ける高齢者に与えることです。
身体的な弊害
身体的な弊害とは、関節拘縮や筋力低下といった身体機能の低下、固定されることにより局所が圧迫されて褥瘡ができるなど、外的な弊害をもたらします。さらに動けないことによって食欲が低下し、心肺機能低下や感染症と闘うための抵抗力が低下するという、内的な弊害さえもたらします。
また、車椅子に縛っている場合には「無理な立ち上がりによる転倒のリスク」、ベッド柵をつけている場合は「乗り越えようとしての転落のリスク」が考えられますし、抑制具による窒息事故など、重篤な事故を発生させるリスクがあります。
精神的な弊害
精神的な弊害とは、多大な精神的苦痛を与えるだけでなく、人間としての尊厳を侵すことにもつながります。精神的苦痛を継続的に与えられると、認知力の低下もさらに進行し、せん妄などを頻発させるリスクも増大します。また、本人だけでなく家族に対しても、精神的な苦痛を与えることとなります。
社会的な弊害
社会的弊害として考えられるのは、身体的拘束をすることにより、介護スタッフなども自分のケアに誇りが持てなくなることでの「士気の低下」です。それだけでなく介護保険施設などに対する社会的な不信、偏見を生じさせることとなります。さらに、身体拘束によって、拘束を受ける側の高齢者(およびその家族)のQOLが低下するだけでなく、本来不要であった医療的処置を施す必要性が出てきてしまい、個人経済や、社会経済にも影響を及ぼすこととなります。