成年後見制度とは
公開日:2019年2月13日 12時40分
更新日:2019年10月23日 09時00分
成年後見制度とは1)
成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害のある方など判断能力が不十分な成年者の財産管理や身の回りの世話の手配を、代理権や同意権が付与された成年後見人等が行うことができる制度です。
具体的には、認知症など自分で自分の財産管理や介護の手配ができなくなったときに、成年後見人に通帳、年金、不動産の管理、税金、公共料金の支払いなどの財産管理、要介護認定の申請、介護サービスの契約、老人ホームの入居契約などの介護・生活面の手配をやってもらう制度です。
成年後見制度の利用人数は、毎年増加傾向にあり需要が高まっています。制度施行時には成年後見人の8割は親族でしたが、2015年には3割ほどになっています。親族の代わりとして、市民後見人や専門職の後見人が増えています。
成年後見制度の種類1)2)
成年後見制度には、「法定後見」と「任意後見」の二つがあります。
本人の判断力が低下していて、本人では後見人を選定できない場合に、家庭裁判所が後見人を選定するのが「法定後見」です。「法定後見」は、本人の判断能力の程度に応じて、本人に代わって行う範囲が決められている「後見」「保佐」「補助」の3型があります。それに対して、本人の判断力が十分なうちに自分で信頼できる後見人や頼む範囲を選んでおく「任意後見」があります。
法定後見
法定後見は、認知症などで判断力が不十分になったときに、家庭裁判所に4親等内の親族(本人でも可)、検察官、市区町村長が、本人の住所地の家庭裁判所に申し立て、家庭裁判所の審判により後見人が決定され、開始されるものです。
「法定後見」は、本人の判断能力の程度に応じて、本人に代わって行う範囲が決められている「後見」「保佐」「補助」の3型があります。
1.後見
後見の対象者は、自己の財産を管理・処分できない程度に判断能力が欠けている者、すなわち、日常的に必要な買い物も自分ではできず誰かに代わってやってもらう必要がある程度のものです。
後見が開始されると、成年後見人が選任され、成年後見人は、広範な代理権と取消権、財産管理権、療養看護義務を持ちます。後見が開始されると、本人が高額な商品を業者にそそのかされて購入した場合、後見人が取り消すことが可能になります。
2.保佐
保佐の対象者は、判断力が著しく不十分で、自己の財産を管理・処分するには、常に援助が必要な程度の者、すなわち、日常的に必要な買い物程度は単独でできますが、不動産、自動車の売買や自宅の増改築、金銭の貸し借りなどの重要な財産行為が自分ではできない程度の判断能力のものです。
保佐が開始されると、保佐人が選任され、保佐人は、重要な財産行為について同意権、取消権、追認権を有し、さらに、当事者が申し立てた特定の法律行為についての代理権を持ちます。
本人が行う不動産、自動車の売買や自宅の増改築、金銭の貸し借りなどの重要な財産行為については、保佐人の同意が必要で、同意を得ないで行った重要な財産行為を取り消すことができます。
3.補助
補助の対象者は、判断能力が不十分で、自己の財産を管理、処分するには援助が必要な場合がある程度の者、すなわち、重要な財産行為は、自分でできるかもしれないが、できるかどうか危惧があるので、本人の利益のためには誰かに代わってやってもらった方がよい程度の者です。
補助が開始されると、補助人が選任され、補助人に本人を代理する権限や、本人が取引等をすることについて同意をする権限が与えられます。代理権・同意権の範囲・内容は、家庭裁判所が個々の事案において必要性を判断した上で決定します。
任意後見
任意後見は、元気なうちに自分で信頼できる後見人や頼む範囲を選んでおき(契約)、本人の判断能力が衰えた場合に、親族、任意後見の契約者等が裁判所に申し立て、任意後見監督人が選任された時に契約の効力を生じさせることにより本人を保護するというものです。
家庭裁判所が任意後見契約の効力を生じさせることができるのは、本人の判断能力が、法定後見でいえば、少なくとも補助に該当する程度以上に不十分な場合です。
特定援助対象者法律相談援助(特定相談)4)
総合法律支援法が改正され、2018年1月24日から、成年後見制度にもつながる新しい制度、特定援助対象者法律相談援助(特定相談)がスタートしました。これは、認知機能が十分でないために権利実現が妨げられている方で、法的支援を自発的に求めることが期待できない方を対象に、資力にかかわらない法律相談が利用できるという制度です(ただし、一定の資力を有している方は、相談料を負担する必要があります)。
この制度の特徴は、本人ではなく、本人を支援している福祉機関等から法テラスに連絡すると、法テラスと契約している弁護士や司法書士が、本人の自宅や施設等に出向いて、法律相談を行うという点です。実際の相談内容のうち、債務整理と成年後見(保佐、補助を含む)に関する相談が7割以上を占めており、実際に「成年後見制度」の利用につながるケースもあります。