その他の早老症(ダウン症候群など)
公開日:2016年7月25日 11時00分
更新日:2019年8月 6日 09時29分
早老症とは何か?
早老症(そうろうしょう)とは、"早期老化症"とも呼ばれ、実際の年齢よりも、老化の徴候が早く、全身にみられる疾患の総称です。実際には、約10の疾患が含まれています。
代表的なものとして、ウェルナー症候群や、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群、コケイン症候群、ロスモンド・トムソン症候群などがあります。これらの疾患を発症しても、実際の疾患や、患者の状況により、老化の症状の重症度や進行するスピードには、違いがあります。
そのほかの早老症その1 ダウン症候群
ダウン症候群とは?
ダウン症候群とは、最も頻度が高い染色体異常であり、発症する頻度はおよそ600から800人に1人といわれています。ヒトには46本の常染色体と2本の性染色体がありますが、ダウン症は21トリソミーとも呼ばれ、21番目の常染色体が3本存在し、合計47本の染色体をもっています(図1)。ただまれに転座型といい、21番染色体が別の染色体に結合しているため発症する場合もあります。
ダウン症は、1965年に、WHOにより、最初の報告者であるイギリス人のダウン博士の名にちなんで、正式名称となりました。
ダウン症候群の症状は?
主な症状には、次のようなものがあります。
- 特徴的な顔貌(眼瞼裂斜上※1・鼻根部平坦・内眼角贅皮(ないがんかくぜいいひ)・舌の突出)
- 手掌単一屈曲線(しゅしょうたんいつきょくせん 図2)
- 筋緊張低下
- ※1 眼瞼裂斜上(がんけんれつしゃじょう):
- 目が細くつり上がっていること、または眼裂斜上(がんれつしゃじょう)ともいう
手掌単一屈曲線とは、手のひらに一直線にのびる深いシワのことで、ダウン症以外の先天的遺伝性疾患でもみられることがあります 。
この他、関節の弛緩、活気のなさ、小頭傾向、後頭部扁平、大泉門(だいせんもん)の開大などもあります。多くの場合、知的面での発達に遅れが出ます。
主な合併症には、心疾患、消化器系の疾患、甲状腺機能低下症、眼の疾患、難聴などがあります。しかし、ダウン症候群であっても、これら合併症を起こさずに生活できる人も多く、ダウン症候群でない人よりも、これらの合併症にかかる可能性が少し高い、という程度です。
ダウン症候群の原因は?
ダウン症候群の原因は、遺伝子が1本多い(21トリソミー)ことが原因ではありますが、ダウン症候群の人のうちの95%が非家族性であり、遺伝の可能性は極めて低いと考えられています。また、ダウン症候群の子を出産した母親が、再びダウン症候群の子を出産する確率は、1/100程度です。
ダウン症候群の診断は?
特徴的な顔貌などの症状が診断の基準となりますが、確定診断を行うためには、染色体の異常を調べる検査を行います。
そのほかの早老症その2 エーラス・ダンロス症候群
エーラス・ダンロス症候群とは、皮膚や関節の過伸のほか、各組織の脆弱性(ぜいじゃくせい)が特徴的な遺伝性結合組織疾患です。1901年に皮膚科医のエーラス医師が報告し、さらに1908年に同じく皮膚科医のダンロス医師が報告しました。
現在では、6つの大病型(古典型、関節型、血管型、後側彎(こうそくわん)型、多発関節弛緩型、皮膚弛緩型)と、その他の病型に分類されています。
全病型を合計すると、およそ5,000人に1人の割合で発症すると推定されています。病型ごとの発症頻度は以下の通りです。
- 古典型:20,000人に1人
- 関節型:5,000から20,000人に1人
- 血管型:50,000から250,000人に1人
- 後側彎型:100,000人に1人
また、病型により、発現する症状や原因となる遺伝子に違いがあります(表)。
病型 | 特徴的な症状 | 原因となる遺伝子 |
---|---|---|
古典型 |
|
5型コラーゲン遺伝子(COL5A1、COL5A2)またはⅠ型コラーゲン遺伝子(COL1A1)の異常 |
関節可動亢進型 (最も患者数が多い) |
|
不明 |
血管型 (最も重症化しやすい) |
|
Ⅲ型コラーゲン(COL3A1)遺伝子の異常 |
後側彎型 |
|
コラーゲン修飾酵素であるLysyl hydroxylaseの異常 |
多発性関節弛緩型 |
|
Ⅰ型コラーゲン遺伝子(COL1A1、COL1A2)の異常 |
皮膚弛緩型 | たるんだ皮膚以外は多発性関節弛緩型とほぼ同様 | コラーゲン修飾酵素であるprocollagen Ⅰ N-terminal peptidaseの異常 |
エーラス・ダンロス症候群の診断と治療とは?
診断を行うための必須所見として、皮膚・関節の過伸展性があります。さらに診断を支持する所見として、各種組織の脆弱性があります。
病型を確定するためには、表1に掲げたような症状の有無や合併症・家族歴の有無などにより判断されますが、原因となる遺伝子の異常を確認する検査を行うことで、病型が確定します。
エーラス・ダンロス症候群は、遺伝子異常による疾患であり、現在のところは根治療法がありません。それぞれの症状に対する対症療法が行われます。