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早老症とは

公開日:2016年7月25日 16時00分
更新日:2019年2月 1日 20時35分

早老症とはどのような疾患なのか?

 早老症(そうろうしょう)とは、"早期老化症"とも呼ばれる、老化の徴候が実際の年齢よりも早く、全身にわたってみられる疾患の総称です。実年齢よりも老化が進む症状が見られるため"早老症"と呼ばれますが、実際には約10の疾患が含まれています。その中にはハッチンソン・ギルフォード症候群やウェルナー症候群などが含まれていますが、疾患や患者本人の状況により、老化の症状が進む早さには違いがあります。

 特にウェルナー症候群は、全世界での報告数のうち、6割が日本人であり、日本人に多い早老症といわれています。しかし、他の早老症に関しては、日本人の報告例が非常に少ないことから、日本での実態は不明です。

 早老症は現在、国の指定難病になっています。

早老症全般にみられる症状とは?

 早老症に分類される疾患に共通して見られる症状は、"実年齢よりも早くみられるようになる老化徴候(見た目の変化)"であり、その老化現象は急速に進んでしまうことが一番の特徴です。代表的な見た目の変化には、次のようなものがあります。

  • 白髪、脱毛、禿頭
  • 尖った鼻(鳥のような顔つき)
  • 小顎(上顎よりも下顎が小さくなる)
  • 音声の異常(高調性の嗄声(させい):高音域の声を出そうとすると声がかすれてしまうこと)
  • 四肢(両手・両足)末梢の皮膚の萎縮、硬化(シワシワになる)
  • アキレス腱など、軟部組織の石灰化

 老化が進むにつれて、若年性の白内障や、四肢末梢の難治性皮膚潰瘍、インスリン抵抗性の強い糖尿病、早発性の動脈硬化、脂質異常症、間葉系悪性腫瘍(かんようけいあくせいしゅよう)などを合併します。これらの合併症により、死に至ることもあります。

 早老症は遺伝性の疾患であり、これらに対しての根治療法(完全に治す方法)は、まだ見つかっていません。治療は、対症療法(疾患の原因を正すのではなく、主な症状を軽減するための治療)が主体となります。日本では、ウェルナー症候群の患者数が多いことから、治療法のガイドラインが作成されていますが、他の早老症に分類される疾患では、まだ治療法が確立されていない疾患もあります。

早老症の原因とは?

 早老症全体において共通する原因は、"体細胞分裂の不全に伴う染色体異常に起因するタンパク質の異常化"といわれています。つまり、成長に伴って細胞が分裂する時に、染色体をコピーする段階での異常が生じ、通常通りの細胞分裂が出来なくなり、異常なタンパク質が形成されてしまう、ということです。

 それぞれの早老症を発症させる原因の遺伝子を、表1に示します。

表1:早老症の疾患名と原因遺伝子
早老症に分類される疾患名 原因遺伝子
ウェルナー症候群 WRNヘリカーゼ※1
ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群 ラミンA遺伝子
コケイン症候群 CSA遺伝子
ブルーム症候群 BLMヘリカーゼ
色素性乾皮症 XP遺伝子
ワーナー症候群 WRN遺伝子
ダウン症候群 21番染色体トリソミー※2
※1 ヘリカーゼ:
ヘリカーゼとは、DNAの2本鎖、RNAの二次構造を、ほどく(分離させる)酵素のこと
※2 トリソミー:
トリソミーとは、通常は2本である遺伝子が、3本になっている状態のこと

 それぞれの早老症をおこす原因遺伝子は解明されつつありますが、遺伝子異常により早老症を発症するメカニズムや、老化を促進するメカニズムについては、十分に解明されていません。ワーナー症候群では、近親婚など、家族性のDNA異常も関係していると考えられています。

早老症の診断は?

 早老症の診断は、疾患によって異なりますが、共通している診断項目としては、早老症特有の症状が出現しているかどうか、という点です。日本でも患者数が多いウェルナー症候群では、10歳から40歳までの間で、特有の症状が出現しているかどうかも、診断の上でのポイントとされます。また、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群では、乳児期に成長の遅れが見られるか、なども診断のポイントとなります。

 症状が出始める年齢、特有の症状がどれくらいみられるか、原因とされる遺伝子の変異があるかどうかなど、総合的な判断により診断が確定します。

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