高齢者の神経症
公開日:2017年6月29日 13時40分
更新日:2019年10月15日 10時16分
高齢者の神経症の原因
高齢になると、身体的不調や身体疾患が出現しやすくなり、さらに疾患のために生活が制限されることが多くなります。
また、定年退職や引退、隠居といった地位や役割を失う事や、収入が減るといった経済的な問題、近親者や知人との死別といった生活環境の変化があります。さらに、自分自身の死という危機感が増強します。これらの事柄が、高齢者における神経症の要因となる可能性があります。
神経症になりやすい傾向の性格も神経症の要因となる可能性があります。
このように、神経症の要因としては、身体要因、環境要因、性格要因が関連した心理的要因が挙げられます。たとえ性格要因といったひとつの要因が弱くても、環境要因や身体要因といったほかの要因が強いと神経症を発症する可能性があります。
高齢者の神経症の種類
高齢者においてよく認められる神経症には、抑うつ神経症(神経症性うつ病)や、不安障害、心気症が挙げられます。
抑うつ神経症とは
抑うつ神経症は神経症うつ病とも呼ばれ、不安、焦燥感などの症状を伴う抑うつ気分を主体とした疾患です。
うつ病では、気分が朝に悪いという、症状が一日のうちで変化するという事が一般的にありますが、抑うつ神経症では、このような変化は見られなく、また、心理的要因がなくなるとうつ症状もうつ病に比べ速やかに改善します。
不安障害とは
不安障害では、以下に示すようなさまざまな身体徴候や精神症状が認められ、うつ病を併発する事が多く見られます。また、上記のように、身体疾患の発症を契機に不安障害が発症しますが、不安障害が身体疾患の危険因子になる場合もあります。
不安障害の身体的徴候
- 体の震え
- 背中や頭の痛み
- 体のこわばり
- 呼吸の障害
- 疲れやすさ
- 驚愕反応※
- 紅潮や蒼白
- 頻脈
- 発汗
- 手指の冷感
- 下痢
- 口渇
- 頻尿
- 感覚異常
- 飲み込みにくさ
- ※驚愕反応:
- 驚愕反応とは、その人の生命を脅かす非常に大きな出来事、たとえば地震や台風・大雨などによる自然災害、事故といった場面に出会ったときに、手足が麻痺して動けなくなる、つまり腰をぬかしてしまったり、理性を失ってやみくもに走りまわってしまったりすることです。
不安障害の精神症状
- 恐怖感
- 集団困難
- 睡眠障害
- 性欲減退
- 胃部不快感
心気症とは
心気症は、十分な医学的説明がなされない身体症状が存在し、その身体症状に対する誤った解釈に基づき、自分が重篤(じゅうとく:病状が非常に重いこと)な病気にかかる恐怖、または病気にかかっているという観念にとらわれることを特徴とします。
神経症の症状
それぞれの疾患の典型的な症状を挙げましたが、高齢者において、必ずしも典型的な症状を示す事はなく、また抑うつ神経症ではなくても抑うつ症状を高頻度に伴う事が特徴です。
心気症以外では、高齢者はより若い世代に比べて、神経症にかかっている人の割合は低いという報告があります。しかしながら、高齢者は不安やそれに伴う身体症状を年のせいや身体疾患のためと思い込むため、見過ごされ、神経症にかかっていると思わず、治療を受けていない可能性があります。そのため、この報告をもって高齢者が神経症にかかりにくいとは断言できません。
神経症の治療
治療として、抗うつ薬や抗不安薬を用いた薬物療法や、精神療法があります。また、合併している身体疾患の治療を同時に行うことも、神経症を治療する上で重要です。