脳血管疾患の診断と治療
公開日:2016年7月25日 11時00分
更新日:2019年2月 1日 21時51分
脳血管疾患の診断
脳血管疾患の場合、「どの疾患なのか」によって、その後の治療方針も対応も異なってくるため、初期診断が非常に重要となります。脳血管疾患を疑うときには、以下の項目が当てはまるかどうかを確認することが大切です。
意識レベル
重度の脳血管疾患の場合、意識障害が起こりやすいために、意識障害がないかどうかをまずは確認します。意識レベルの確認には、名前や場所、今日の日付を答えてもらい、いずれも答えられない場合には、意識障害ありとの判断をします。
麻痺やしびれの有無
初期の脳血管疾患の場合、多く出現するのが麻痺やしびれです。脳血管疾患の場合、時間が経過するごとに進行するため、一晩たったらしびれ程度だったものが完全に麻痺してしまったということもあります。
長い期間をかけてゆっくり進行するしびれの場合は脊髄など神経疾患によるものも考えられますが、数日で急激に進行している場合は、脳血管疾患を疑い、しびれの場所や程度を確認します。
頭痛の有無
特にくも膜下出血の場合は、突然の激しい頭痛から症状が出現します。一方、脳梗塞では頭痛が起こることはまれであり、ほとんどの症例では認められません。そのため、頭痛があるかどうかも、脳血管疾患の判別において重要な項目です。
脳血管疾患の治療
脳血管疾患の場合、多くはなんらかの後遺症が残存するため、治療を行う「急性期」と、リハビリテーションを行う「回復期」におおまかにわけられます。
急性期
脳血管疾患の急性期では、症状がより進行し重篤となることもあるため、SCUという脳血管疾患の中でも特に脳卒中に特化した集中治療室が整備されている病院もあります。
急性期は治療がメインとなり、より重篤な症状が起きないように観察を強化するとともに、これ以上症状を進行させないための治療が行われます。
脳卒中の場合、発症から3時間以内であれば血流を回復させる「血栓溶解術」を行える可能性もあるため、「どれだけ早く治療を開始するか」が重要なポイントとなります。
また、くも膜下出血の場合、発症から72時間以降、2週間以内に脳血管攣縮(けいしゅく)を発症する恐れがあります。脳血管攣縮は発症すると脳全体が虚血(きょけつ:血が足りなくなること)状態となるため、脳梗塞を併発しやすく、発症すると予後は非常に悪くなります。
このように、発症後の急性期では症状が急変しやすく、ここでどれだけ治療できたかによってその後の後遺症の程度も大きくことなるため、非常に重要な期間であるといえます。
リハビリ期
急性期を脱し、症状が安定したら、残存している機能を生かして後遺症の程度を軽減する目的でリハビリが積極的に行われます。脳血管疾患の場合、多くは急性期を脱した時点でリハビリ病院や病棟へ移動し、専門的なリハビリを受けます。リハビリを受けられる期間は症状や程度によって異なりますが、おおむね6か月以内となります。
発症した年齢が若ければ若いほど、残存している機能を生かしやすく、動ける範囲は飛躍的に向上することが多くなります。