中耳炎
公開日:2017年7月 5日 13時19分
更新日:2019年6月13日 11時48分
子供と高齢者に多い中耳炎
中耳炎と聞くと、子供の病気と思いませんか?実は子供と高齢者の両方に多いのです。中耳炎とは鼓膜の奥にある中耳で炎症が起こる状態を指しますが、耳の痛くなる急性中耳炎、痛みはなくて難聴を起こす滲出性中耳炎、中耳炎が慢性化した状態である慢性中耳炎、中耳の癌ともいわれ手術加療が必要な真珠性中耳炎と様々な病態があります。急性中耳炎に限っては子供に多いですが、それ以外の中耳炎は高齢者にも多くみられます。
耳の中に液体がたまる「滲出性中耳炎」
滲出性中耳炎とは中耳に液体が溜まってしまう中耳炎のことです。急性中耳炎の後、治りきらずに滲出性中耳炎になる場合や、はじめから滲出性中耳炎になる場合があります。滲出性中耳炎には耳管という中耳と鼻腔内をつなぐ管の機能が非常に重要です。耳管は中耳に液が溜まっても鼻腔内へと排出する役割をしています。
小児ではこの耳管が短いので、鼻汁中の細菌が耳へと逆に侵入しやすいため、急性中耳炎や滲出性中耳炎になりやすいと考えられています。
高齢者では耳管の長さは短いわけではないのですが、開け閉めの機能が悪くなるために滲出性中耳炎になりやすいと考えられます。治りの悪い滲出性中耳炎では耳管の出入り口(耳管咽頭口)に腫瘍ができていることがあり、一度は鼻の奥にある咽頭口を診察しておくことが必要です。
耳管が開きっぱなしになる病気があり、耳管開放症といいます。自分の声や息が直接耳にひびいてこもった感じになります。横になると耳管の血流がよくなって耳管が閉じやすくなるため、症状が改善するのが特徴です。
繰り返し起こる「慢性中耳炎」
慢性中耳炎は、急性中耳炎や滲出性中耳炎を繰り返しているうちに持続的に中耳に炎症が起こってしまった状態です。中耳の粘膜が肥厚したり、耳小骨という鼓膜で拾った音を内耳へと伝える骨の動きが悪くなったり(鼓室硬化といいます)、鼓膜に穴が開きっぱなしになったり(鼓膜穿孔といいます)、鼓膜が凹んで動かなくなってしまったり(鼓膜癒着といいます)と不可逆的な変化が起こってきます。
鼓膜穿孔が原因で聴力低下を起こしている場合、中耳の炎症が落ち着いた後で鼓膜形成術を行うと聴力が改善します。大きな鼓膜穿孔でなければ日帰りで手術することが可能です。鼓室硬化もある場合は入院での手術が必要となってきます。特に鼓膜癒着がある場合には手術成績は決してよいとはいえず、施設によってばらつきがあります。
また、高齢者の慢性中耳炎では免疫力の低下や抗生剤の使用に伴って、通常の抗生剤の効きにくい多剤耐性菌や真菌などが感染する頻度が増え、難治化することがあります。
手術の必要な「真珠腫性中耳炎」
真珠腫性中耳炎は頻度は少ないですが、放置していると奥へと中耳炎が進行し、頭の骨が溶けてしまうような中耳炎です。基本的に手術が必要です。慢性中耳炎から真珠腫性中耳炎へと進行する場合もあります。
このように一口に中耳炎といっても様々な病態があり、中には重篤な状態へ進行する場合もあります。難聴の場合にはこういった中耳炎が隠れている場合があるので、一度は耳鼻咽喉科を受診しておきましょう。