健康長寿ネット

健康長寿ネットは高齢期を前向きに生活するための情報を提供し、健康長寿社会の発展を目的に作られた公益財団法人長寿科学振興財団が運営しているウェブサイトです。

生涯学習の支援

公開日:2019年7月30日 09時50分
更新日:2019年7月30日 09時50分

人生100年時代に必要な生涯学習

 生涯学習とは、年代や内容に関わらず、新しい知識や技術を学び、生活の糧としていく行動のことです。学ぶ内容そのものをさすこともあります。現代は人生100年の時代といわれており、いくつになっても生涯にわたって学習していくことが、豊かな人生につながると考えられています。

生涯学習の意義1)

写真1:生涯学習を行う高齢者

 生涯学習を行う意義は大きく2つあります。

 1つ目は、社会や経済が刻々と変化していることに関係します。現代は、海外からの影響、自然災害や環境の変化などさまざまな要因によって、それまでの価値観や考え方だけでは対応できない事柄が増えています。このような変化に対応するために、新しい知識や技術を習得していくことが求められています。

 2つ目は、社会が成熟していくにつれ、心の豊かさや生きがいを求める人が増えていることに関係します。65歳で定年退職をしても、その後の人生は長く、まだまだ元気な高齢者はたくさんおり、高齢者の社会参加や地域の活性化が求められています。

 また、日本の男女の平均寿命は80歳を超え人生100年時代になった現代において、いつまでも有意義な生活を続けていくためには、生涯にわたって体の健康だけではなく、こころの健康、こころの成長も必要とされています。

生涯学習の意欲

 少し古いデータですが、内閣府が公表している「平成25年(2013年)度 高齢者の地域社会への参加に関する意識調査結果」をみると、全国の60歳以上の高齢者のうち、およそ40%の人が何らかの形での学習活動に参加したいと考えていました(図1)2)

図1:高齢者の学習活動への参加意向を示すグラフ。カルチャーセンターなどの民間団体が行う学習活動が最も参加意向の割合が高いことをあらわす
図1:学習活動への参加意向2)より作図
表1:学習活動への参加意向2)より作図
学習活動割合(%)
カルチャーセンターなどの民間団体が行う学習活動 17.2
地方公共団体など公的機関が高齢者専用に設けている高齢者学級や老人大学 11.5
地方公共団体など公共機関や大学などが開催する公開講座や学習活動 11.1
テレビ、ラジオ、インターネット、郵便など通信手段を用いて自宅にいながらできる学習 12.7
大学、大学院への通学 2.6
各種専門学校への通学 1.2
その他(具体的に) 1.3

 学習活動の参加においてもっとも多かった回答は「カルチャーセンターなどの民間団体が行う学習活動」でした。次に「テレビ、ラジオ、インターネット、郵便など通信手段を用いて自宅にいながらできる学習」が続きます。地方公共団体などの公的機関や大学などが開催するいわゆる「学校」や「公開講座」などよりも、民間企業が開催するものや、家に居ながらにして取り組める内容の方が、その内容や体制などから、高齢者が選択しやすい要素があるのかもしれません。

写真2:イーラーニングを行っている写真

 同調査の中では、実際に学習活動に参加しているかについても問いかけていますが、やはりもっとも割合が高かったのは「カルチャーセンターなどの民間団体が行う学習活動(6.4%)」でした。ただし、2位は「地方公共団体など公共機関や大学などが開催する公開講座や学習活動(4.1%)」であり、「地方公共団体など公的機関が高齢者専用に設けている高齢者学級や老人大学(3.2%)」や「テレビ、ラジオ、インターネット、郵便など通信手段を用いて自宅にいながらできる学習(3.1%)」となっています2)

生涯学習に参加する際の障壁

 内閣府が公表している「平成25年(2013年)度 高齢者の地域社会への参加に関する意識調査結果」からは、学習意欲があるにも関わらず、実際に参加しているのはそのおよそ1/4から1/3程度に留まっていることが分かりました2)。なぜ、学習意欲があるにも関わらず参加していない人がいるのでしょうか。

 平成20年(2008年)に行われた同様の調査では、参加しない理由について問いかけています。結果としては、「健康・体力に自信がないから」が 36.4%で最も高く、次に「家庭の事情があるから」が 26.5%、「同好の友人・仲間がいないから」が 11.2%、「気軽に参加できる活動がないから」が 9.6%などとなっています3)

 高齢者にとって、カルチャーセンターや公共機関が開催する公開講座など、決められた時間に決められた場所に出向いて学習をするのは、身体的にも難しいのかもしれません。また友人や仲間がいないなどにより学習のきっかけがつかめない人にとっては、いつどこでどのような講座が開催されているのか、実際にはどのような内容なのか、それが「自分が本当に知りたいことなのか」などといったことが高齢者にとって分かりにくく、障壁となっているのかもしれません。

どこでも学べるMOOC(ムーク)4)

写真3:Moocをあらわす写真

 生涯学習は、日本だけで必要とされているものではありません。2012年にアメリカで「MOOC(ムーク:Massive Open Online Course)」とよばれる、大規模公開オンライン講座が始まりました。MOOCは、インターネット上で公開された大学を始めとする高等教育機関等の講座を、誰もが無償でパソコンなどの情報端末を用いて受講できるという教育サービスです。2013年からは日本でも「JMOOC(ジェイムーク)」としてスタートしています(リンク1)。

リンク1 JMOOC 無料で学べる日本最大のオンライン大学講座(MOOC)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

 JMOOCでは、個人の知識やスキルを社会的な評価へ繋げていくことを目指しており、歴史、統計学、プログラミング、心理学など、性別や年代を問わず、大学や専門学校の講師からの講義を受けることができます。一部のオプションを除き無料で受講できます。

 インターネット環境と「学びたい」という意欲があれば、本格的な学びを得られるかもしれません。こうしたシステムを利用して、生涯学習に取り組んでみてはいかがでしょうか。

参考文献

  1. 文部科学省 平成18年版 文部科学白書 第2部 第1章 第1節 1.生涯学習の意義(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 内閣府 平成25年度 高齢者の地域社会への参加に関する意識調査結果 第3章 集計結果(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 内閣府 平成20年度 高齢者の地域社会への参加に関する意識調査結果(全体版)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. JMOOC 受講Q&A(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  5. 文部科学省 超高齢社会における生涯学習の在り方に関する検討会 報告書 長寿社会における生涯学習の在り方について~人生100年 いくつになっても 学ぶ幸せ 「幸齢社会」~<巻末資料6/7>(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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