健康長寿ネット

健康長寿ネットは高齢期を前向きに生活するための情報を提供し、健康長寿社会の発展を目的に作られた公益財団法人長寿科学振興財団が運営しているウェブサイトです。

認知機能の老化

公開日:2016年7月25日 13時00分
更新日:2019年2月 1日 16時52分

認知機能とは

 認知とは理解、判断、論理などの知的機能のことを言い、五感(視る、聴く、触る、嗅ぐ、味わう)を通じて外部から入ってきた情報から、

  • 物事や自分の置かれている状況を認識する
  • 言葉を自由に操る
  • 計算する、学習する
  • 何かを記憶する
  • 問題解決のために深く考える

などといった、人の知的機能を総称した概念です。

 認知とは、心理学の分野では知覚を中心とした概念です。心理学的には知覚以外にも判断や想像・記憶・言語理解などを含んだすべてを包括して「認知」と呼びます。

 しかし、一般的に「認知機能」は、主に認知症における障害の程度を表す場合に、用いられることが多くなっているようです。認知症はもの忘れにみられる記憶障害のほか、判断・計算・学習・言語などを含む脳の高次の機能に障害がみられますが、その障害がみられる脳の機能を「認知機能」と表現されます。

認知機能の低下とは

 認知機能の低下とは、理解力や判断力、記憶力や言語理解能力など、認知機能に係る能力が低下している状態のことを指します。認知機能が低下することで日常生活に様々な影響を及ぼしますが、この認知機能の低下が特に著しく、日常生活に影響を及ぼしている状態が6か月以上継続している状態を「認知症」と呼びます。

高齢者の認知機能の特徴

 高齢者の認知機能は、個人差が非常に大きいという特徴があります。これは、遺伝、ストレス、体調、精神状態などの内因的な因子に加えて、高齢者として長年生きてきた中で積み重ねられてきた、教育、職業、趣味、周囲との人間関係など、「社会的因子」と呼ばれる多数の因子が複雑に絡み合うことによって、影響を与えているためと考えられます。

加齢と認知機能の変化

 加齢の影響は認知機能を構成するそれぞれの要素によっても異なります。

 例えば知能を次の二つに分別するとします。

  • 教育や学習などの社会文化的経験によって発達した能力
  • 新しい環境に適応するために問題を解決していく能力

 社会文化的経験によって発達した能力は、高齢になっても比較的良く保たれます。高齢になっても活躍をする芸術家、文芸家、政治家、組織や企業の指導者などは、世の中にたくさんいますし日本には昔から「円熟」「老練」「長老の知恵」という言葉があります。

 それに対し、新しい環境に適応するために問題を解決していく能力は、加齢に伴ってその機能が低下することが知られています。また、脳内での処理速度が加齢に伴って遅くなっていくため、課題を遂行するのが総じて遅くなっていき、瞬時の反応や判断というものは苦手になっていきます。

認知機能の種類

 認知機能にはいくつかの種類があり、その分類方法も様々ですが、一般的には記憶、遂行、言語理解、判断能力などがあります。その機能が低下あるいは老化した状態が、認知機能の老化症状へとつながります。

認知機能老化による症状

高齢者の認知機能低下の症状を表すイラスト。認知機能が低下する1番の原因は加齢で、60歳を過ぎると認知機能が少しずつ衰える老化現象。

 認知機能が老化することによる主な症状として「記憶障害」「失語(しつご)」「失行(しっこう)」「失認(しつにん)」「遂行(すいこう)機能障害」の5つがあります。

記憶障害

 記憶障害とは、いわゆる「物忘れ」のことです。若年者あるいは健康な人でも見られますが、体験したことの一部を忘れたり、物忘れをしている自覚がある場合の物忘れは、生理的健忘(けんぼう)といいます。
 生理的健忘に対して病的な物忘れの場合は体験そのものを忘れてしまい、本人には忘れた自覚がないということが特徴となります。

失語

 失語とは、運動性失語という「聞いた言葉は理解できるが話せない」ものと、感覚性失語という「話はできるが言い間違いが多かったり話の内容が理解できていない」というものの、2種類があります。

失行

 失行とは、運動障害が見られないにもかかわらず、日常生活で普通に行っている行動ができなくなることです。

失認

 失認とは、目や耳などの異常はみられないが、物体を認識できない、普段歩き慣れている道が分からなくなる、などのことを言います。

遂行機能障害

 遂行機能障害とは、計画を立てて物事を行うことができなくなることです。

認知機能老化の原因としくみ

 認知機能が老化する1番の原因は加齢です。60歳を過ぎると認知機能が少しずつ衰えるといわれています。

 加齢以外には、アルツハイマー病やピック病、レビー小体型の認知症などといった神経の変性疾患、脳梗塞や脳出血などの脳疾患、クロイツフェルト・ヤコブ病などの感染症などのさまざまな病気が挙げられます。また、甲状腺機能低下症や、ビタミンB12 欠乏症、脱水など、内科系の病気も原因となることがあります。

 他にも、統合失調症やうつ病といった精神疾患、抗不安薬や睡眠薬、抗うつ薬などのさまざまな薬剤も、認知機能の低下の原因になるとされています。これらの原因により脳の神経細胞が正常に稼働しない、あるいは衰えることによって認知機能は老化していきます。

加齢以外で認知機能を老化させる要因

  • 神経変性疾患:アルツハイマー病、ピック病、レビー小体型認知症など
  • 脳疾患:脳梗塞、脳出血など
  • 感染症:クロイツフェルト・ヤコブ病
  • 内科系の疾患:甲状腺機能低下症、ビタミンB12 欠乏症、脱水など
  • 精神疾患:統合失調症、うつ病など
  • 薬剤:抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬など

無料メールマガジン配信について

 健康長寿ネットの更新情報や、長寿科学研究成果ニュース、財団からのメッセージなど日々に役立つ健康情報をメールでお届けいたします。

 メールマガジンの配信をご希望の方は登録ページをご覧ください。

無料メールマガジン配信登録

寄附について

 当財団は、「長生きを喜べる長寿社会実現」のため、調査研究の実施・研究の助長奨励・研究成果の普及を行っており、これらの活動は皆様からのご寄附により成り立っています。

 温かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。

ご寄附のお願い(新しいウインドウが開きます)

このページについてご意見をお聞かせください(今後の参考にさせていただきます。)