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介護負担とは

公開日:2018年12月18日 13時00分
更新日:2019年7月17日 11時04分

介護負担とは

 介護負担とは,人口の高齢化に伴い,様々な障害を有する高齢者とその介護に携わる家族が増加してきたことによって,1980年代から注目されるようになった概念です。特に認知症患者(リンク1参照)を介護することによる家族の介護負担は,認知機能障害に加えて多彩な行動障害や精神症状への対処が求められるため,大きな問題とされています。近年では,介護に伴う身体的疲労や精神的疲弊の結果,うつ状態に陥ってしまう介護者や,高齢者に対して暴力を振るう介護者等が報告されるようになったことから,適切に介護負担を評価し,必要な介入を行うことが求められています。介護保険制度も、そのような家族の介護負担を軽減する観点から導入されたものです。

リンク1 認知症

介護負担の評価

 介護負担を評価する方法については、1980年代末から1990年代にかけて多くの研究が発表されてきました。その中でも,もっとも有名な評価法は米国のZaritによるものです。Zaritは介護負担を「親族を介護した結果,介護者の情緒的,身体的健康,社会生活および経済的状態に関して被った苦痛の程度」と定義し、22項目から構成されている介護負担尺度を作成しました(Zaritetal.,1980)。

 この評価法は荒井ら(1997)によって日本語訳が作成され、わが国の医療・介護の現場においても介護負担の評価に使用されています。また,現場では時間が限られていることから、より簡便に介護負担を評価できる短縮版も作成されています(荒井ら,2003)。

 その他にも、介護負担を主観的な負担(精神的疲弊感や身体的疲労感)と客観的な負担(経済的負担や患者の症状)に区別して捉える方法や,ストレスに対する認知として捉える方法など,様々な評価法があります(安部,2001)。

 これまでの研究では、介護負担の関連要因として、認知症による行動障害や精神症状だけでなく、介護者を援助してくれる人がいるかどうか、そして介護者の認知症に対する理解があるかどうかなどがあげられています。

介護負担の軽減に向けて

 介護負担を軽減するためには、認知症患者に対する薬物・非薬物療法(リンク2、リンク3参照)だけでなく、介護者に対する介入が必要であるといわれています。具体的には、介護者が一時的に介護を離れ、息抜きや気晴らしをすることが有効であると考えられます。また、病気や介護に対する理解を深めるための介護教室や同じような悩みを抱えている家族の会への参加も有効と思われます。介護サービスだけでなく、様々な社会的資源を上手に利用することが、介護負担を軽減し、介護する側・される側双方にとってより良い介護を行うためにも必要であると思われます。

リンク2 認知症の薬物療法

リンク3 認知症に対する非薬物的療法

介護保険料の減免制度

 介護保険料を納付することが困難な場合には、介護保険料の減免制度があります。減免が対象となる条件は、収入が減り著しく生活の苦しい場合や、災害により大きな損害を受けた場合です。必ずしも誰もが受けられる制度ではないため、市町村の介護保険課や保健福祉課に相談していく必要があります。

引用文献

  1. 安部幸志.主観的介護ストレス評価尺度の作成とストレッサーおよびうつ気分との関連について.老年社会科学2001;23(1):40-49.
  2. Arai Y, Kudo K, Hosokawa T, Washio M, Miura H, Hisamichi S.Reliability and validity of the Japanese version of the Zarit Caregiver Burden Interview. P sychiatry Clin Neurosci1997;51:281-287.
  3. 荒井由美子,田宮菜奈子,矢野栄二.Zarit介護負担尺度日本語版の短縮版(J-ZBI_8)の作成:その信頼性と妥当性に関する検討.日本老年医学会誌2003;40(5):497-503.
  4. Zarit, S.H., Reeves, K.E., &Bach-Peterson, J.Relatives of the impairedelderly:Correlates of feelings of burden.Gerontologist1980;20:649-655.

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