高齢社会の介護問題
公開日:2019年6月21日 09時30分
更新日:2023年8月 1日 14時29分
わが国の高齢化率は平成6年(1994年)に14%を超えて高齢社会となってから、その後も増加し続け、平成29年(2017年)には27.7%となり1)、超高齢社会になりました。高齢者が増えるとともに15~64歳の現役世代の人口の割合は低下し、平成27年(2015年)は65歳以上の者1人に対して現役世代2.3人まで低下しています。今後さらに高齢者が増加し、2065年には65歳以上の者1人に対して現役世代は1.3人となると言われています1)。超高齢社会では介護者も高齢となることからさまざまな問題が生じます。超高齢社会で起こる介護問題についてみていきましょう。
高齢社会と介護問題
高齢社会でみられる要介護者の増加、介護者の高齢化、同居介護者の介護負担の増大について、それぞれデータで確認していきましょう。
増える要介護者と介護者の高齢化
高齢者人口の増加とともに、介護保険制度における要介護または要支援の認定を受けた人(以下、要介護者)は増加しており、平成29年(2017年)の要介護者は629万2千人となっています。65歳以上の要介護者数の割合は、第1号被保険者の約18.0%を占めています2)。
要介護者のいる世帯では核家族世帯や単独世帯が多く、介護者は女性の同居の配偶者や子供に占める割合が大きくなっています。同居の介護者が要介護者を介護しているケースでは、70~79歳の要介護者は同じく70~79歳の介護者が介護をしている割合が48.4%と約半数を占めています3)。
要介護者と同居の主な介護者の年齢組み合わせ別の割合は年々増加傾向にあり、平成28年(2016年)の60歳以上同士は70.3%、65歳以上同士は54.7%、75歳以上同士は30.2%となっています3)。今後60歳以上同士の要介護者・介護者が年をとっていくと65歳以上同士の要介護者と介護者の組み合わせの「老老介護(リンク1参照)」はさらに増えることが予測されます(図1、表1)。
60歳以上同士 | 65歳以上同士 | 75歳以上同士 | |
---|---|---|---|
平成13年(2001年) | 54.4 | 40.6 | 18.7 |
平成16年(2004年) | 58.1 | 41.1 | 19.6 |
平成19年(2007年) | 58.9 | 47.6 | 24.9 |
平成22年(2010年) | 62.7 | 45.9 | 25.5 |
平成25年(2013年) | 69.0 | 51.2 | 29.0 |
平成28年(2016年) | 70.3 | 54.7 | 30.2 |
介護が必要な期間が長い
平均寿命が延びていることにより、介護が必要な期間も長くなっています。厚生労働省によると、日常生活が自立している期間である健康寿命も増加の傾向がみられます。令和元年(2019年)の日本人の平均寿命は、男性81.41年、女性87.45年に対し、健康寿命は、男性で72.68年、女性で75.38年であり、介護が必要となる期間は男性8.73年、女性12.06年になります(図2、表2)4)。
平均寿命 | 健康寿命 | 差 | |
---|---|---|---|
平成13年(2001年) | 78.07 | 69.40 | 8.67 |
平成16年(2004年) | 78.64 | 69.74 | 9.17 |
平成19年(2007年) | 79.19 | 70.33 | 8.86 |
平成22年(2010年) | 79.55 | 70.42 | 9.13 |
平成25年(2013年) | 80.21 | 71.19 | 9.01 |
平成28年(2016年) | 80.98 | 72.14 | 8.84 |
令和元年(2019年) | 81.41 | 72.68 | 8.73 |
平均寿命 | 健康寿命 | 差 | |
---|---|---|---|
平成13年(2001年) | 84.93 | 72.65 | 12.28 |
平成16年(2004年) | 85.59 | 72.69 | 12.90 |
平成19年(2007年) | 85.99 | 73.36 | 12.63 |
平成22年(2010年) | 86.30 | 73.62 | 12.68 |
平成25年(2013年) | 86.61 | 74.21 | 12.40 |
平成28年(2016年) | 87.14 | 74.79 | 12.35 |
令和元年(2019年) | 87.45 | 75.38 | 12.06 |
介護度が上がるごとに介護にかかる時間も長くなり、介護時間がほとんど終日という割合は、要介護2は20.7%、要介護3は32.6%、要介護4は45.3%、要介護5では54.6%で、ほとんど終日介護する同居の介護者は妻、娘、夫の順に負担が大きくなっています3)。
高齢者介護が問題になる理由
高齢者介護が問題になる理由としては、要介護者も介護者も高齢である老老介護の割合が増加していること、在宅介護での介護者の負担が大きくなり、離職の理由となっていること、介護施設の諸問題、社会保障費の増加があげられます。
老老介護
超高齢社会になって平均寿命が延びたこと、核家族化が進み、主な介護者が同居の配偶者である割合が増えていることで、要介護者も介護者も高齢者である老老介護が増加しています。介護者の身体的、精神的な負担も大きく、介護者も認知症でありながら介護をしているケースもあり、事故や事件につながるニュースも増えています。
介護者の負担が大きく、離職につながる
生涯在宅での介護を望む高齢者は多く、介護者は同居の妻、娘、夫の割合が大きくなっています。家族の介護や看護を理由に離職する人は平成28年では85万8千人(男性23万2千人、女性62万6千人)でとくに、妻や娘といった女性が介護者である場合が多く、女性は男性の2倍の離職率となっています1)。
介護施設の問題
厚生労働省の平成29年(2017年)3月の発表では、特別養護老人ホームの入所申込者は29万5千人5)であり、減少しているものの待機者数はまだまだ多い状況です。一方で、空きがある介護施設も存在し、医療的ケアが必要な場合や認知症がある場合への対応が困難で受け入れ体制が整わないという理由があげられています。介護職員不足もいわれていますが、介護職員の質、介護施設側の幅広い利用者の受け入れ体制が整うことが求められています。
社会保障費の増大
平成30年(2018年)の社会保障給付費は121.3兆円であり、今後75歳以上の人口が増加していくことで1人当たりの医療費や介護費用が増加し、2040年には190兆円に達すると推計されています6)。国民への負担も大きくなることが考えられます。