健康長寿ネット

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健康長寿になるためのこころの持ち方

公開日:2019年7月30日 09時40分
更新日:2024年9月10日 09時28分

人生100年時代におけるストレスの多様化

 人生100年時代に突入した現代において私たちを取り巻く環境は大きく変化しています。そのため、変化に伴いストレスの原因が多様化しています。ストレスがたまったまま解消されずにいると、頭痛やうつ病、自律神経失調症、高血圧などさまざまな病気になることがあります。

高齢者のストレスについて1)

 日本人の平均寿命が延び、高齢化が進む中、高齢者にとってこころの健康を保つことは大きな課題となっています。高齢者特有のストレスについて見てみましょう。

心理的要因:退職、配偶者の死、経済的問題などの喪失体験

 退職時期が思っていたよりも早かったり、退職によって社会的地位を失ったりなど、喪失体験が重なることで人生に希望を失ってしまいます。

身体的要因:身体的な衰え、視覚や聴覚などの感覚機能の低下

 加齢に伴う感覚機能の低下から見えづらい、聞こえづらいということから孤独感や疎外感を抱きやすく、「お世話されること」は劣等感へとつながります。

生物学的要因:脳の萎縮による記憶力、判断力の低下

 脳の萎縮による記憶力、判断力の低下から物事に対し的確な判断ができなくなるなど、日常生活に影響を及ぼします。

社会文化的要因:人間関係や、精神的な病気などに対する偏見

 高齢になると悩みや不調があっても我慢してしまう傾向があります。

 このように、加齢に伴うストレスは若いときのものとは異なっています。うつ病などのストレスが原因となる病気を防ぐためには、ストレスに気づき早めに対処することが大切なのです。

高齢者のストレスの対処法

 高齢者は、心理的健康や身体的健康などを失うことが原因となり、ストレスを感じることが多いということが分かりました。このようなストレスを解消するにはどうしたらよいのでしょう。

 少し古いデータですが、内閣府による平成8年(1996年)度の「高齢者の健康に関する意識調査」では、高齢者のストレス解消法についての報告がなされています(表1)。

表1:高齢者のストレス解消法2)
高齢者のストレス解消法全体男性女性
友人に話を聞いてもらう 20.9% 12.5% 27.5%
配偶者に話を聞いてもらう 14.4% 17.3% 12.2%
スポーツなどをして身体を動かす 12.6% 16.8% 9.3%
趣味の集い等に参加する 9.5% 6.9% 11.6%
配偶者以外の家族に話を聞いてもらう 7.7% 4.0% 10.5%
酒を飲んだりタバコを吸う 7.3% 14.8% 1.5%
専門の相談窓口を利用する 2.6% 2.2% 2.9%
特にない 41.9% 42.9% 41.2%

 表1のとおり、高齢者のストレス解消法で多く見られたのが「友人に話を聞いてもらう」「配偶者に話を聞いてもらう」です。友人や家族に話を聞いてもらうことは、不安な気持ちを落ち着かせ、安心感を得る効果があります。話すうちに、自分自身悩んでいたことが整理され、気持ちが楽になるということもあるでしょう。悩みやストレスをひとりで抱えこまないためにも、普段から相談できる相手を持つことは大切です。それとは逆に相談される立場になる場合は、アドバイスをしてあげることより、まずは相手の話をしっかり聞いてあげましょう。

写真1:会話をしている高齢男性と高齢女性

 とくに女性は「趣味の集い等に参加する」「配偶者以外の家族に話を聞いてもらう」など、つながりのある人に話を聞いてもらうことが最もストレス解消になっているといえるでしょう。

 一方、男性は「スポーツなどをして身体を動かす」ことがストレス解消に繋がっているようです。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準2013」では、身体活動や運動が生活習慣病の罹患率や死亡率を低下させるとともに、気分転換やストレス解消につながり、メンタルヘルス(こころの健康)の改善にも効果があるとしています。

 ストレスの感じ方や度合いは人によって異なるものです。それは物事に対する考え方やとらえ方の違いが関係していることがあります。考え方を変えることは容易ではありませんが、自分にとってどんなことがストレスになるのか、また、そのストレスに対してどう感じているのか、自分自身のストレスに向き合うこともひとつの方法です。このように改めて自分自身に向き合い考えてみることでストレスの対処法が見つかることもありますし、悩むほどのことではなかったということに気づくこともあります。

 抱えているストレスがあるなら、自分に合った解消法を試してみましょう。また、ストレスを増やさないためにも、日頃からこころの持ち方を意識して過ごすことが大切だといえるでしょう。

写真2:笑顔でテニスをする高齢男女

健康長寿になるためのこころの持ち方のポイント3)4)

 最近の研究では「笑うこと」によってストレスホルモンが下がり、免疫力が上がるという結果が報告されています。大阪府立健康科学センターの研究によると、普段から声を出して笑っている人は唾液中のストレスホルモン(コルチゾール)が下がっている割合が多いことが分かっています。また声を出して笑うことによって腹式呼吸となり、リラックス効果があるとも言われています。普段から声を出して笑うことを心がけ、寄席や落語、テレビのお笑い番組など、笑う機会を意識的に増やしてみるのもよいでしょう。

 また、ストレスに負けないために人生に目標を持って生きることも大切です。どんな小さな目標であっても、目指すものがあれば私たちは前向きな気持ちで過ごすことができるものです。無理のない範囲で目標を持つことで、ストレスと上手く付き合いながら、心身ともに健康で豊かな人生を過ごしましょう。

高齢者のうつ病を見落とさないために5)

 ストレスは私たちが生きていく上で避けることができないものですが、対処しないままでいると、こころや身体の健康に悪い影響を与える可能性があります。高齢者にとって特に注意が必要なストレス関連疾患として、老年期うつ病があります。老年期うつ病は高齢者本人も周囲の人も発症に気づかないことが多く、また認知症とも間違われやすいため見落とされることもあります。老年期うつ病を避けるためには、うつ病のサインに早期に気づき対処することが大切なのです。

参考文献

  1. 奈良市西部地域及び生駒市における高齢者問題研究会 高齢者のメンタルヘルス(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 内閣府 平成8年度 高齢者の健康に関する意識調査の結果について,  (外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 大阪がん循環器病予防センター ストレス・もっと詳しく(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 大阪府 大阪発笑いのススメ(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  5. 日本老年医学会:老年医学系統講義テキスト. 初版, 西村書店, 東京, 2013年, P81-82

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