特別養護老人ホーム(特養)とは
公開日:2019年2月12日 10時00分
更新日:2019年10月23日 09時00分
特別養護老人ホームとは 1)
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)とは、常時介護を必要とし、在宅での生活が困難な高齢者に対して、生活全般の介護を提供する施設です。略して「特養」とも呼ばれています。
特別養護老人ホームでは、入浴、排泄、食事などの介護、その他の日常生活の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行います。
また、特別養護老人ホームのうち、利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、定員29名以下の施設を「地域密着型介護老人福祉施設」と呼びます。
特別養護老人ホームの特徴 2)
特別養護老人ホームは、公的な施設の中で数も多く、比較的費用が安いのが特徴です。入所希望者も多く、申し込みをしてもすぐに入所できるとは限りません。看取りの対応も可能です。
施設形態には、「多床室」「従来型個室」「ユニット型個室的多床室」「ユニット型個室」があります。従来型は4人部屋が一般的となっており、一部2人部屋や個室があります。ユニット型は全室個室となっており、10人ほどのグループに分けられ、介護を受けることになります。
特別養護老人ホームでは、入所して利用できるサービスに加えて、一時的に入所して、その間に要介護者のお世話をしている家族の方が休みを取ることができる短期入所療養介護(ショートステイ)や日帰りで利用する通所介護(デイサービス)といった介護保険の給付対象となるサービスが利用できます。
特別養護老人ホームの入所基準
2015年4月より特別養護老人ホームの入所基準が変わり、原則として要介護3以上の認定を受けた高齢者が対象となっています。ただし、以下のようなやむを得ない事情がある場合は、要介護1または2の方でも、特例として入居が認められることがあります。詳細につきましては、各市区町村にお問い合わせください。
要介護1・2の特例的な入所が認められる要件(勘案事項)3)
- 認知症で日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、在宅生活が困難な状態にあること。
- 知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られ、在宅生活が困難な状態にあること。
- 家族等による深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難な状態で、在宅生活が困難な状態にあること。
- 単身世帯、同居家族が高齢または病弱等により、家族等の支援が期待できず、地域での介護サービス等の供給が不十分であることにより、在宅生活が困難な状態であること。
特別養護老人ホームの費用負担4)5)
特別養護老人ホームの利用者の費用負担は、原則として保険給付の対象となるサービス(施設サービス費+サービス加算)にかかった費用の1割(または所得に応じて2割から3割)です。介護度によって費用は異なり、施設の設備や職員の体制、施設で対応する処置に応じて介護サービス加算も発生します。その他、居住費・食費・日常生活費などが自己負担として必要となります。また、事業所によって介護職員処遇改善加算(現行加算)、介護職員等特定処遇改善加算(特定加算)が加わります。なお、介護職員処遇改善加算及び介護職員等特定処遇改善加算は支給限度額の対象外です。
なお、施設サービス費は、施設の形態、居室の種類、職員の配置などによって異なります(表1)。
多床室 | 従来型個室 | ユニット型準個室 | ユニット型個室 | |
---|---|---|---|---|
要介護1 | 559円 | 559円 | 638円 | 638円 |
要介護2 | 627円 | 627円 | 705円 | 705円 |
要介護3 | 697円 | 697円 | 778円 | 778円 |
要介護4 | 765円 | 765円 | 846円 | 846円 |
要介護5 | 832円 | 832円 | 913円 | 913円 |
居住費は、個室や多床室(相部屋)など住環境の違いによって自己負担額が変わります。
低所得者の方の利用を妨げないために、世帯の所得に応じて居住費、食費を減額するための制度(特定入居者介護サービス費)が設けられています。
また、介護サービスを利用する際には、1ヶ月の支給限度額がいくらかを把握しておく必要があります。自己負担額を払えば、いくらでも使えるわけではありません。1ヵ月の要介護度別の支給限度額は表2のようになっています。
要支援・要介護度 | 利用限度額(1ヶ月あたり) |
---|---|
要支援1 | 50,320円 |
要支援2 | 105,310円 |
要介護1 | 167,650円 |
要介護2 | 197,050円 |
要介護3 | 270,480円 |
要介護4 | 309,380円 |
要介護5 | 362,170円 |
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の1ヶ月の自己負担の目安は以下の表3および表4の通りとなります。要介護5の方が多床室、ユニット型個室を利用した場合を挙げてみます。
施設サービス費の1割 | 約25,000円 |
---|---|
居住費 | 約25,200円(840円/日) |
食費 | 約42,000円(1,380円/日) |
日常生活費 | 約10,000円(施設により設定されます) |
合計 | 約102,200円 |
施設サービス費の1割 | 約27,500円 |
---|---|
居住費 | 約60,000円(1,970円/日 |
食費 | 約42,000円(1,380円/日) |
日常生活費 | 約10,000円(施設により設定されます) |
合計 | 約139,500円 |
特別養護老人ホームの職員体制
特別養護老人ホームには、必ず医師を常勤させる義務はない(非常勤が認められている)ため、施設に医師が不在の状況はよくあります。職員の配置基準としては、医師が1人以上ですが、看護師は入所者数により変わります。
特別養護老人ホームの看護師の配置基準8)
- 30人以下は常勤換算で1人以上
- 31人~50人は2人以上
- 51人~130人は3人以上
- 131人以上の場合は4人以上
介護職員は入所者100人当たり31人以上と決められています。そのほか、介護支援専門員は入所者100人につき1人以上、栄養士、機能訓練指導員は常時1人以上が配置されていることになります。
参考文献
- 牛越 博文 (監修):図解 介護保険のしくみと使い方がわかる本 (介護ライブラリー). 初版. 講談社. 2018年
- 江田章江ほか編:困りごとから探せる介護サービス利用法[改訂版], 社会福祉法人東京都社会福祉協議会, 東京都, 2017年, P148
- 一般社団法人高齢者住まいアドバイザー協会著:高齢者住まいアドバイザー検定®公式テキスト, 第2版, ブックウェイ, 兵庫県,2018年, P198