前立腺肥大症の診断
公開日:2016年7月25日 12時00分
更新日:2023年8月 4日 11時50分
前立腺肥大症の診断について
前立腺肥大症であるかどうかは、いくつかの検査によって分かります。検査は基本的な検査と、必要に合わせて受ける個別の検査があります。
基本的な検査には、自覚症状の評価、直腸内指診、尿検査、尿流測定、残尿測定、前立腺超音波検査、血清PSA(前立腺特異抗原)測定などです。
必要に合わせて受ける個別の検査には、排尿日記、血清クレアチニンの測定、尿流動態検査、上部尿路超音波検査などがあります。
基本的な検査
自覚症状の評価
自分の病状を正確に伝えることは難しいことです。そこで前立腺肥大症の自覚症状は「国際前立腺症状スコア(IPSS)」1)を使って、評価されています。計算方法としては、以下の7つの質問項目に対し、6段階評価(全くない:0点、5回に1回の割合より少ない:1点、2回に1回の割合より少ない:2点、2回に1回の割合位:3点、2回に1回の割合より多い:4点、ほとんどいつも:5点)で答えます。評価の合計点が7点以下は軽症で、8~19点は中等程度、20点以上は重症と考えられています。合計点が軽度症や中等症でも頻繁に尿閉症状続く人は、重症という評価になります。
1ヶ月の間に、どのくらいの割合で次のような症状があったか
- 尿をしたあとにまだ尿が残っている感じがありましたか
- 尿をしてから2時間以内にもう一度しなくてはならないことがありましたか
- 尿をしている間に尿が何度も途切れることがありましたか
- 尿をがまんするのが難しいことがありましたか
- 尿の勢いが弱いことがありましたか
- 尿をし始めるためにお腹に力を入れることがありましたか
- 夜寝てから朝起きるまでに、ふつう何回尿をするためにおきましたか(6段階評価:0回が1点、1回が1点、2回が2点、3回が3点、4回が4点、5回以上が5点)
また、QOLスコアでは、今の病状がどれほど日常生活の質に影響を与えているかを客観的に評価する示す指標で,0点(とても満足)から6点(とてもいやだ)までの7段階で評価し,軽症(0~1点),中等症(2~4点),重症(5~6点)に分類することができます。
直腸内指診
前立腺の大きさや硬さ、痛みを調べる検査です。肛門から直接指を入れて前立腺を直診します。直診することで前立腺肥大症以外の病気を区別することができます。前立腺に炎症があるときは強い痛みを伴い、硬い腫瘤は前立腺がんの疑いになります。直腸内指診は、診察台で膝を抱えるような姿勢をして行われます。
尿検査
尿を検査用のコップに採取して調べる方法です。尿はさまざまな体調の変化を測るバロメーターです。患者さんに苦痛なく行うことが可能です。
尿流測定
尿の勢いや排尿量、排尿にかかる時間を測定する検査です。トイレ型の検査機器に排尿することで、尿に関するさまざまなデータを数値化してグラフ表示してくれます。排尿障害があるかどうかも調べることが可能です。
残尿測定
おしっこをした後、膀胱にどれくらいの量のおしっこが残っているかが分かる検査です。測定の方法は、おしっこをした後、膀胱に超音波をあてることで検査をします。
前立腺超音波検査
皮膚の上から超音波をあてて前立腺の大きさを測定する検査です。直腸内指診よりも正確に前立腺の大きさを知ることができます。検査方法は、超音波の器械を患部にあてるか肛門からブローブ(細い超音波装置)を挿入する方法があります。
血清PSA(前立腺特異抗原)測定
血液検査によって、血液中のPSA濃度を測る検査です。前立腺肥大症や前立腺がんのスクリーニング検査として活用されています。
必要に合わせて受ける個別の検査
排尿日記
排尿した時間と量を記録するものです。1日の排尿の回数や1回の排尿量を知ることができます。また、昼と夜との差も比較することができ、頻尿の原因を探ることにも有効な方法です。
血清クレアチニンの測定
血液検査で血中のクレアチニンの測定をします。これは、前立腺が特に大きく肥大していたり、残尿量が多いときに行われる検査です。クレアチニンの数値が上昇すると腎機能障害の可能性があります。
尿流動態検査
膀胱に尿を蓄えているとき、尿意が正常か、過活動膀胱になっていないか、どれくらいの尿を貯めることが可能かということを調べることができます。排尿するとき、膀胱の収縮力や尿道の通過具合も分かります。検査方法は、尿道から膀胱にカテーテルを入れて、生理食塩水を注入しながら膀胱の内圧を測定して、膀胱の畜尿機能を検査する方法と、膀胱を生理食塩水でいっぱいにしたら、排尿して膀胱の収縮圧と尿流測定を同時に測り、膀胱の排尿機能を検査します。
上部尿路超音波検査
腹部超音波検査で腎臓を検査します。前立腺肥大症の合併症で腎臓が腫れていないか(水腎症)を確認します。
参考文献