腸閉塞
公開日:2017年6月30日 09時19分
更新日:2019年6月21日 11時31分
腸閉塞とは
腸閉塞とは、種々の原因により腸の内容物の肛門側への通過に障害をきたした状態を指します。
通過が障害されると腸の中に食べたものや胃液や腸液などの消化液、ガスなどがたまり腸が膨らみます。医学用語では、「イレウス」と言われています。このような閉塞は小腸でも大腸でも生じることがあります。
腸閉塞の分類
腸閉塞は、原因により「機械的腸閉塞」と「機能的腸閉塞」に分類されています。頻度的には「機械的腸閉塞」が大多数をしめます。
機械的腸閉塞
機械的腸閉塞は腹部手術による腸の癒着などが原因で、ねじれや折れ曲がりが生じたり、また腫瘍などで腸の中がふさがれてしまい生じるものです。この中に腸の閉塞によって腸への血流が絶たれてしまうものがあります。ヘルニア(脱腸)がはまり込んだり、腸が捻れたりして生じるもので重症になりやすく緊急手術が必要になります。
機能的腸閉塞
機能的腸閉塞は腸の動きをつかさどる神経の異常や炎症の波及により腸の動きが悪くなり内容物が肛門の方へスムーズに移動できない状態です。広範囲に広がった腹膜炎や腸を動かす神経にダメージを生じた場合に発症します。
腸閉塞の症状
腸閉塞の症状は、激しい腹痛、吐き気、嘔吐、お腹がはる、排便やオナラがでない等があります。
先に述べた血流が絶たれることにより生じる腸閉塞(絞扼性(こうやくせい:締めつけられる状態)といいます)は、急激に全身状態が悪化し、激痛、発熱、脱水、ショック状態(血圧が保てなくなること)、意識障害などを呈することもあります。
腸閉塞の診断
腸閉塞の診断は、病歴や診察所見にて腸閉塞を疑った場合に腹部X線写真や腹部CT(断層写真)を撮影して、閉塞部とその口側の著明に拡張した腸管を確認します。CTは閉塞部位の同定や腫瘍性病変の有無に有用である場合があります。
腸閉塞の治療
腸閉塞の治療は、腸閉塞が疑われた場合は入院が必要になります。口から飲んだり食べたりすることはできないので点滴を行います。
鼻から胃や腸にチューブを入れ、たまった液体を外に出して胃や腸の中を減圧します。この方法で症状が改善し、オナラや便がでるようになりX線写真でも異常なガスが消失していればチューブからの吸引をとめ、問題なければチューブを抜きます。
以上のような治療法では改善しない場合や絞扼性の場合は、外科手術を行います。
腸閉塞の予後
腸閉塞は、日常の診療では珍しくない病気です。高齢者に多いものは腸の腫瘍(例えば大腸がん)による閉塞ですが、腹部手術後の癒着による腸閉塞も決して少なくはありません。腹部の手術歴がある方に上記のような症状が認められた場合は腸閉塞を疑う必要があります。
癒着より腸閉塞を生じた場合は、高頻度(約3割)に再発を認めますので、退院後は、食事の取り方(具体的には1回食事量の軽減、食物繊維の制限、咀嚼の回数を多くすることなど)に注意する必要があります。