サルコペニア予防のための生活習慣
公開日:2021年10月29日 10時00分
更新日:2023年7月14日 10時28分
サルコペニアの予防・治療には運動と栄養が重要な要素になりますが、いずれも継続しなければ効果を持続させることはできません。つまり、運動や良い食事の習慣を生活の一部に含め、習慣化させることが重要になります。そのような点から考えると、ご自身にとって高い難易度のところから始めるのではなく、取り組みやすい内容から始めることをお薦めします。
では、どのようなところから始めるべきでしょうか。例えば、レジスタンス運動は、筋肉の力や量、機能を改善する効果に優れていますが、これまであまり運動してこなかった方に対してはやや難易度が高い運動と言えます。そのため、そのような方の場合には、ウォ―キングやラジオ体操など、無理なく始められる軽い運動から開始することをお薦めしています。十分に慣れてくれば、「サルコペニアに対する運動」で紹介したような運動を行っていただければと思います。
食事に関しても同様です。筋肉を作る上では、大豆などの植物性たんぱく質よりも、肉や魚などの動物性たんぱく質の方が有用とされています。しかし、日頃からあまり動物性たんぱく質を摂らない方にとっては、肉や魚を食べることが苦痛と感じる場合もあると思います。まずは、ご自身が摂りやすいものからたんぱく質を摂るように工夫してください。プリンやソフトクリーム、どら焼きなどには、たんぱく質を豊富に含む卵、牛乳、大豆などの食材が使用されています。時にはこのようなものからたんぱく質を摂ることも良い方法だと思います。スーパーやコンビニエンスストアに陳列してある製品には図1のように栄養成分表示がついていますので、たんぱく質の含有量をチェックしながらお買い物をすることをお薦めします。
運動や良く食事を習慣化させる方法の一つとして、記録をつける方法があります。例えば、カレンダーにその日の歩数を記録したり、「サルコペニアに対する栄養」で紹介した多様性スコアを記録したりするなど、日々の活動を見える化することをお薦めします。行動を見える化することで、様々な気づきがあり、習慣化への第一歩になると思います。サルコペニア対策から健康長寿を目指しましょう。
この写真はCC BY-NCのライセンスを許諾されています
文献
筆者
- 山田 実(やまだ みのる)
- 筑波大学人間系 教授
- 最終学歴
- 2010年 神戸大学大学院医学系研究科博士後期課程修了(保健学博士)
- 主な職歴
- 2008年 京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻助手、2010年 同・助教、2014年 筑波大学人間系准教授、2019年 同・教授、現在に至る。
- 専門分野
- 老年学、リハビリテーション
フレイルとは何?サルコペニアとは何?
フレイルとサルコペニアの概要、原因、評価方法、予防方法などについて国立長寿医療研究センター理事長 荒井 秀典 先生に解説いただきました。本動画は第32回日本老年学会総会「成熟社会への課題~高齢者は幸せになったか~」の市民公開講座にて公開された動画です。
長寿科学研究業績集「フレイル予防・対策:基礎研究から臨床、そして地域へ」について
長寿科学研究業績集は学術的研究成果の中で、社会のニーズにあったテーマを医療等従事者向けに編集した研究マニュアルです。各関係機関に活用いただくことで研究成果の普及啓発を図かっております。
令和2年度長寿科学研究業績集は「フレイル予防・対策:基礎研究から臨床、そして地域へ」(令和3年3月発刊)と題し、著名な先生方にご解説いただきました。
公益財団法人長寿科学振興財団のホームページで長寿科学研究業績集をご覧いただけます。