パーキンソン病のリハビリテーション
公開日:2016年7月25日 10時00分
更新日:2019年2月 1日 21時53分
パーキンソン病との上手な付き合い方を身に付け、快適な日常生活を送るためにはリハビリテーションが有効です。自分の病状に合った支援を受けることで、社会生活を長く続けていくことも可能となります。
身体機能を維持・向上させるためのリハビリテーション
歩行障害や姿勢障害、関節のこわばりなどの症状の進行を遅らせ、身体機能を維持・向上させるための訓練を行います。
関節が固くなるのを防ぎ、動きを保つ訓練
関節が固くなったり、動かしづらくなったりするのを予防するためには、日頃から自分の関節を動かせる範囲で動かしておくことが大切です。
指を組んでゆっくり両手を上げ下げしたり、体を前後左右に曲げ伸ばししたりといった体操を行うことで体の柔軟性を維持することができます。
バランス訓練
転倒のリスクを減らすため、片膝立ちや四つ這いでの片手上げなど、それぞれの身体機能のレベルに応じたバランス訓練を行います。訓練士がそばについた状態で、わざと体のバランスを崩し、それに対応できるような動きを引き出す練習を行うこともあります。
歩行訓練
「突進歩行」や「すくみ足」などの影響で転倒リスクが高くなりますので、歩行の安定性向上を目的とした訓練を行います。
一定の間隔につけた目印をまたぎながら歩いたり、「1、2、1、2」と声をかけながら数歩足踏みをしてから歩き出したりすると、スムーズに歩行が可能になる場合があります。方向転換が苦手になる場合が多いため、スラローム歩行等を取り入れる場合もあります。
いずれにしても、歩行の際は歩幅を大きくとり、腕を大きく振り出しながら歩くよう意識すると良いでしょう。
日常生活を安全に行うための支援
身の回りのことをできる限り自分で行えるように、動作の安全性の向上や動作効率の改善を図るとともに、介助者に対する介助指導も行います。
食事
箸の操作が困難な場合、太柄のスプーン・フォークへの変更や安定感のある食器の使用、食器の下の滑り止めの使用などを指導します。
飲み込みが難しくなってきた場合は、食事の形態を変更したり、水分にとろみをつけたりといった工夫によって改善されることもあります。
食事姿勢については、足底を床に付けた状態で腰かけ、背筋を伸ばして食事をするようにすると上肢の操作性も向上します。
入浴
浴槽や浴室への出入りや方向転換の際に転倒リスクが高くなりますので、必要に応じて手すりやバスボードの設置を行います。体を洗う際は背もたれのついたシャワーチェアに腰かけ、ループ付きタオルや長柄のブラシを用いるとよいでしょう。
トイレ
便座からの立ち上がりや、排泄後の後始末の動作が困難になりがちです。立ち上がりを助けるため、手すりの設置や便座の高さの調整が必要なこともあります。ウォッシュレットの設置もトイレ動作自立のためには有効です。
着替え
着替えの動作はバランスを崩しやすいため、背もたれ付きの椅子を使用するなど、転倒の危険性が少ない姿勢で行うように指導します。ゆったりとした前開きの服や大きなボタンの付いた服、ゴムのズボンなどを選ぶと着替えの際の動作が容易になります。靴下をはくのが難しい場合は「ソックスエイド」という自助具によってスムーズに行えることもあります。
コミュニケーションに関する支援
パーキンソン病が進行すると、声が小さく聞き取りづらくなるうえ、話しているうちにどんどん早口になってしまいます。自分の意思がしっかり伝えられるように、発声・発語に関しての支援も行います。
呼吸訓練
腹式でゆったりした呼吸を行うことで声が出やすくなります。仰向けに寝た状態でおなかに手を置き、鼻から息を吸って、口から息を吐き出します。お腹に載せた手がしっかり上下に動くように腹式呼吸を意識します。
発声訓練
「パ・タ・カ・ラ」と、声に出して繰り返します。発音がはっきりするだけでなく、ものを食べる際に必要な口腔の筋肉も鍛えられます。
リハビリテーションを行う際の注意点
リハビリテーションを行う際は、治療薬が効いて体が動かしやすい時間帯に行うようにして下さい。また、パーキンソン病の方は疲れやすいため、疲労感を感じたら休憩をとることも大切です。
リハビリテーションについて疑問点や不安な点がある時は、リハビリテーションの専門家である理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などに相談してみて下さい。