嚥下性肺炎の予防
公開日:2016年7月25日 13時00分
更新日:2019年2月 1日 21時26分
誤嚥をきたしやすい疾患
以下のような疾患があると誤嚥性肺炎をきたしやすいと考えられます。
- 脳出血・脳梗塞などの脳血管障害
- パーキンソン病
- アルツハイマーなどの認知症
- その他神経疾患
- 胃食道逆流症(またこの状態になりやすい胃切除後や食道裂孔ヘルニア)
- 食道運動疾患(アカラシア・強皮症)
- 口腔内乾燥
- 口腔内癌
- 歯の噛みあわせの異常(もしくは義歯不適合)
- 寝たきり状態
- 経管栄養の使用(経管栄養が誤嚥の原因ではなく、誤嚥の危険があるので経管栄養になっていると考えられます。)
- 睡眠薬の使用
誤嚥しない食事の工夫
食事形態は重要です。一般的にはペースト状やゼリー状、ムース状が嚥下しやすい形態となります。これらの形態は歯が悪くて十分に噛めなくてもそのまま飲みこむことができ、また、口の中に食べ物が散らばらず1つの塊となることでまとまって飲みこむことができ、残った食物残渣で誤嚥する可能性を減らします。しかし、病状によっては他の形態が勧められることもあります。
また、嚥下反射は常温のものよりも冷たいもの・熱いもので起きやすいため火傷しない範囲で温度にも気を配りましょう。
黒コショウのニオイは嚥下反射をつかさどる脳の一部、島皮質の血流を増やして唾液分泌を増やし嚥下機能を改善させたという報告もあり、服に貼るタイプの芳香シートが市販されています。
その他に食後すぐに横にならないことも重要で、できれば食後2時間は座位を保ちましょう。寝たきりの場合でも可能であれば30°程度頭を上げることで誤嚥を防ぎます。
誤嚥しても肺炎になりにくいよう細菌を減らす
口腔ケアをして口に中の細菌を減らすことは重要です。特にブラッシングは口腔内をきれいにするだけでなく、ブラシが口腔内を刺激して嚥下や咳の反射を改善させます。
薬によって咳を増やす
薬の副作用で咳が増える薬があります。使用が可能な患者の場合にはその作用を利用して咳を増やし、誤嚥を防ぎます。その他に胃の動きを良くして逆流や嘔吐を防いだり、化学性肺炎を予防するため胃酸を減らす薬を使用します。
主に使用される薬
- アマンタジン(ドーパミン遊離促進薬)
- アンギオテンシン変換酵素阻害剤
- 胃酸分泌抑制薬(プロトンポンプ阻害剤)
- モサプリド(セロトニン受容体作動薬)
経口以外で栄養をとる
これらの予防を行っても嚥下性肺炎を繰り返す場合には喉から栄養を通さない栄養方法を検討します。
胃瘻(いろう 正式名称:経皮内視鏡的胃瘻造設術)
お腹の皮膚から(経皮)、胃カメラを使って(内視鏡的)、胃へのトンネルを(胃瘻)、作る手術(造設術)です。過去にお腹の手術をしたことがある場合や、生まれつき胃の位置が異なる場合などでは外科的にお腹を切って胃瘻を留置する方法もあります。
さらに、胃の病気で胃を全部取っている人などの場合には胃より下にある腸に管をつける腸瘻という手術もあります。
気管食道分離術
呼吸の通り道と食事の通り道を分ける方法です。通常は喉の奥の部分である喉頭までは1本の通り道で、そこから呼吸の通り道である気道と食べ物の通り道である食道に分かれます。喉頭には喉頭蓋という蓋があり、主に気道の蓋の役目をします。普段は喉頭蓋は開いている状態ですが、物を飲み込むときだけ気道に蓋をして食べ物が食道にのみ入るように働いています。
気道食道分離術では喉から気道につながる道を塞ぎ、代わりに気道の出口を喉の前面に作る手術です。