防衛体力
公開日:2016年7月25日 11時00分
更新日:2019年2月 1日 16時36分
防衛体力とは外界からのストレスに対する自動調節能力
広義にとらえた体力の定義は、「人間として生存、生活するための基礎的能力」とされ、大きく身体的要素と精神的要素の2つから構成されています。さらにそれぞれが積極的な要素としての行動体力と、受け身的な防衛体力に大きく分けることができます。
防衛体力は行動体力(リンク1参照)に対して用いられる概念です。
生体には外部環境が変化しても内部環境を常に一定に維持しようとする能力(ホメオスタシス:恒常性)、外界からの刺激に対してしなやかに適応する能力(適応性)、いろいろな病原菌に対する抵抗力(免疫力)などが備わっています。
防衛体力とは、これらの恒常性、適応性、免疫力などの働きによって、生体をとりまく外界からのいろいろなストレスに耐えて、健康を積極的に維持しようとする自動調節能力です。
ストレスの種類
ストレスの種類には、物理化学的ストレス(寒冷、暑熱、低酸素、高酸素、低圧、高圧、振動、化学物質など)、生物的ストレス(細菌、ウイルス、その他の微生物、異種蛋白など)、生理的ストレス(運動、空腹、口喝、不眠、疲労、時差など)、精神的ストレス(緊張、不快、苦痛、恐怖、不満、悲哀など)があるとされています。生体はこれらのストレスから防衛体力によって心身を守り、健康を保っています。
適度な運動は免疫力を高める
今日まで、スポーツを継続して行うことで、持久力や筋力などの競技成績などに直接関係する身体的要素としての行動体力に大きな関心が寄せられ、積極的に研究も行われていました。それらの研究成果は、競技力の向上や健康の維持・増進のための運動処方に役立てられてきました。
一方で、「スポーツ・運動を始めてから風邪をひかなくなった」などと言われるように経験的に知られていた防衛体力とスポーツ・運動との関係は、近年の研究により徐々に明らかになりつつあります。
たとえば、トレーニングによって白血球機能が修飾を受けることが知られてきましたが、適度な運動では免疫力を高めるのに対し、強すぎる運動やオーバートレーニング症候群といわれる状態になると免疫力が低下することがわかってきました。「マラソン選手はかぜをひきやすい」ともいわれています。やはり何事もほどほどがよろしいようです。
高齢者についても言えることで、自宅に閉じこもるよりは外界に触れる意味も含めてスポーツ・運動を通して防衛体力を高めることが、健康寿命の延伸に大きく貢献するものと思われます。