高齢者版:新型コロナウイルスにかからない・うつさないための「新しい生活様式」
公開日:2020年5月26日 09時00分
更新日:2024年2月 8日 13時57分
1.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の高齢者への影響
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とは
(2020年5月26日時点)
コロナウイルスは、一般の風邪の原因になるウイルスをはじめ複数の種類があり、今流行しているのは「新型コロナウイルス(病名:COVID-19、ウイルス名:SARS-CoV2)」です1)2)。新型コロナウイルス感染症は、2019年12月、中華人民共和国湖北省武漢市において確認されました3)。おもな症状は発熱や呼吸器症状が1週間前後つづくことが多く、強いだるさ(倦怠感)を訴える方が多くなっています4)。一般には飛沫感染、接触感染で感染します4)。
新型コロナウイルス感染症の高齢者への影響
(2020年6月22日時点)
世界保健機関(WHO)の報告によると2020年2月20日時点における中国での55,924の新型コロナウイルス感染症検査確定例のうち、新型コロナウイルス感染症にかかった約80%の方は軽症で経過し、治る例も多いことを報告しています。一方、感染症にかかった人のうち14%の方は肺炎や息切れなどの重い症状、6%の方は呼吸困難や敗血症、多臓器不全など命にかかわる症状がみられます。とくに、60歳以上の高齢者や基礎疾患のある方※1では重症化する危険が高いことも報告されています16)
- ※1基礎疾患のある方:
- 糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD等)等の基礎疾患がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤などをつかっている方4)。
また、新型コロナウイルス感染症にかからない・うつさないためには人が多く集まる場所を避けることなどが言われております。そのため、高齢者にとってはずっと家に閉じこもり、一日中テレビを見てぼーっとしてしていたり、食事もたまに抜かしてしまう、 誰かと話すことも少なくなった・・・・などの「生活不活発」により、フレイル(虚弱)が進みます。フレイルが進むと、心と体、脳の機能が低下していきます。体の回復力や抵抗力が低下し、疲れやすくなります5)。
2.高齢者の日常の「新しい生活様式」の実践
(2020年9月9日時点)
高齢者には新型コロナウイルス感染症にかからない、周りの人にうつさないために日常で「新しい生活様式」6)の実践と、フレイルが進まないために適度な運動を行い、栄養バランスの良い食事をとり、心の健康(メンタルヘルス)を保ち、質の良い睡眠が求められます。
1.適度な運動5)
新型コロナウイルス感染症にかからない・うつさないために外出を控え、動かない不活発な生活が続くことにより、心と体の機能が低下してフレイル(虚弱)になることが心配されます。自宅内での軽い運動や屋外での散歩を適度に行い、身体を動かすことを心掛けてください。また、自宅の片付けや掃除も結構な運動量になります。また、これから暑くなるにつれ熱中症への注意が必要になります。こまめな水分摂取と、室内の温度調整を行ってください。
座っている時間を少なくしましょう!
立ったり歩いたりする時間を増やすことも大切です。テレビのコマーシャル中に足踏みしてみるなど身体を動かしてください。また、自宅の片付けや掃除も結構な運動量になります。
筋肉を維持しましょう!
関節も固くならないように気を付けてラジオ体操のような家の中でできる運動でも、筋肉の衰え予防に役立ちます。スクワットなど足腰の筋肉を強くするレジスタンス運動や室内の階段の上り降りも有効です。
日の当たるところで散歩くらいの運動を心掛けましょう!
天気が良ければ、屋外など開放された場所で身体を動かしましょう。散歩はお勧めです。ただし、人混みは避けましょう
自宅でできる体操動画
厚生労働省は全国各地の体操動画やリーフレットをまとめて紹介しています。
在宅活動ガイド2020
長期の活動自粛により心身機能が低下することを防ぐため個々の機能に応じて自宅で実践できる運動や活動のメニューの紹介、また、適切な栄養の摂り方についても解説されています。
健康長寿教室テキスト第2版
フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームの概念、お口の体操、運動、フレイルや低栄養予防のための食事の工夫やレシピなどが掲載された、健康寿命の延伸を目的としたパンフレットです。
2.栄養バランスの良い食事5)7)
低栄養を予防し、免疫力を低下させないために、多様性に富んだ食事を三食欠かさず食べることを意識してください。免疫力を維持することにも役立ちます。さらに身体(特に筋肉)を作る大切な栄養素であるたんぱく質をしっかりとることが大切です。
また、毎食後、寝る前に歯を磨きましょう!そして、お口周りの筋肉を保ちましょう。
3.心の健康(メンタルヘルス)
(2020年6月27日時点)
電話・メールでの人との交流
高齢者は人との交流はとても大切です。
緊急事態宣言が解除されてからも、感染症にかからないために外出を控えたり、人と会う機会が減ったりすることで、孤独感やストレス、不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
このような状況では、安心できる人と話したり笑ったりすることで、気持ちが楽になります。感染症対策のため、直接会って話をすることは難しくても、電話やテレビ電話、オンライン通話、SNS(LINE®などのソーシャルネットワークサービス)などを使って、家族や友だちと連絡を取り気持ちを言葉にして共有することが大切です。安心できる人とつながっていることは、心の安定につながります8)。
日本福祉大学健康社会研究センターは23,917人の高齢者を対象とした調査の分析結果により、電話・メール・手紙などの人と直接会わない交流のみでも、直接会う人と同じくらい抑うつになる危険性が軽くなる可能性があると発表しました18)。
そこで、直接人と会って話すことが難しいときに、インターネットを使ってスマートフォンやパソコン画面から顔をお互い見ながら話すことができるアプリケーションソフトのZoom(ズーム)の利用が注目されています。Zoom利用の手引きについて埼玉県共助の総合ポータルサイト「埼玉共助スタイル」からダウンロードできます。
情報に振り回されない
また、テレビやインターネットで流れる新型コロナウイルス感染症に関する根拠のないうわさ話しに振り回されたり、番組に出演するコメンテーターの根拠のない不安をあおるような発言に惑わされないように、時にはテレビのスイッチを消したり、スマートフォンの電源を落とすことも、不安の解消にもつながります。
4. 質の良い睡眠
新型コロナウイルス感染症の影響で自宅で過ごす方に対しても、ストレスを最小限にし、社会生活に支障を及ぼさないために睡眠のコントロールは重要であることが報告されています9)。睡眠は心身の回復を図る働きがあり、毎日の健康を保つための大切な時間です。厚生労働省で示されている健康づくりのための睡眠指針を参考に質の良い睡眠に取り組みましょう。
関連情報:新型コロナウイルス感染症対策で留意すること
特別養護老人ホーム等の高齢者福祉施設における面会について
(2020年5月26日時点)
特別養護老人ホーム等に入居している利用者と家族等との面会についても、感染拡大防止のため、緊急やむを得ない場合を除き、直接の面会は控え、テレビ電話等の活用を行うことを検討します。また、緊急事態宣言が解除された地域に所在する特別養護老人ホーム等の入居施設については、利用者や家族等の心情等にも配慮し、例外的な取り扱いを行うことが考えられます10)。くわしくは施設にお問い合わせください。
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための「新しい生活様式」における熱中症予防のポイント17)
(2020年6月23日時点)
1.マスクの着用について
高温・多湿のときのマスク着用は、熱中症の危険性が高くなります。屋外で人と少なくとも2メートル以上離れている時は、マスクをはずすようにしましょう。また、周囲の人との距離を十分にとれる場所で、マスクを一時的にはずして休憩することも必要です。
2.水分補給
のどが渇いていなくてもこまめに水分補給を心がけましょう。1日あたり1.2リットルの水分補給が目安です。
3.エアコンの使用について
一般的な家庭用エアコンは、空気を循環させるだけで換気を行っていません。新型コロナウイルス対策のためには、冷房時でも窓開放や換気扇によって換気を行う必要があります。
4.涼しい場所への移動について
少しでも体調に異変を感じたら、速やかに涼しい場所に移動しましょう。
5.日頃の健康管理
毎朝の提示の体温測定や健康チェックを心掛けましょう。平熱を知っておくことで、発熱に早く気づくこともできます。
新型コロナウィルス感染症禍において通いの場を開催する際の工夫
(2020年9月9日時点)
通いの場 開催の8の工夫
国立長寿医療研究センターは、新型コロナウイルス感染症禍において感染防止対策を行いながら高齢者の「通いの場」を安全に開催するための注意点をまとめたポスターを公開しました。
- 何より、楽しく行いましょう
- 換気をしましょう(1時間に2回以上)
- 距離を開けましょう(なるべく2メートル、最低1メートル)
- 人数が多い場合は時間帯を分けて開催しましょう
- 手洗い、消毒を行いましょう
- マスクをしましょう
- 食事はなるべく控えましょう
- 健康管理を行いましょう
通いの場×新型コロナウイルス感染症対策ガイド
東京都健康長寿医療センターは、新型コロナウイルス感染症と共存した「新しい通いの場」を運営するために、感染症対策や地域社会の情勢、個々の心情の変化等をふまえた通いの場の運営と実践をしていくための考え方のポイント冊子にまとめました。同センター社会参加と地域保健研究チームのウェブページのNews&Topicsよりガイドと活動再開の留意点を確認することができます。
魔法の声かけのヒント
公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団は、「通いの場」を再開するにあたり、多くの団体が従来から抱えている課題解決のヒントに加え、「新しい通いの場」をさらに魅力的な「通い続けられる場」にしていく為の『魔法の声かけ』のヒントを詰め込んだリーフレットを制作しました。またコロナ禍での『魔法の声かけ』のヒントについて動画でも配信されています。
3.高齢者の日常における「新しい生活様式」の実践に対する支援
高齢者が日常における「新しい生活様式」を実践するために新型コロナウイルス感染症に関連してととのえられた支援制度について案内します。
新型コロナウイルス感染症に関する相談支援
厚生労働省の電話相談窓口
(2020年5月26日時点)
厚生労働省では新型コロナウイルス関連肺炎の発生について、電話相談窓口を設置しております。
- 厚生労働省電話相談窓口
- 電話番号:0120-565653
- 受付時間:9:00~21:00(土日・祝日も実施)
内閣府の自治体の取り組み・連絡先
(2020年5月26日時点)
内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室では新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言の対象区域の連絡先を公開しております。
新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言の対象区域の連絡先 内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室
LINE®自治体の公式アカウント
(2020年5月26日時点)
お住まいの自治体や省・庁などの行政機関のLINE®公式アカウントから最新の新型コロナウイルス感染の情報を知ることができます。
自治体や省庁の公式アカウント一覧 新型コロナウイルス、LINEで何ができる?
オンライン診療
(2020年5月26日時点)
「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」(2020年4月7日閣議決定)により電話、パソコン、スマートフォン、タブレットなどを用いて、病院の予約からビデオ通話での診察・決済・薬または処方箋の受け取りをインターネット上で行う診察・治療方法です。厚生労働省ではオンライン診療の手順の案内や全国のオンライン診療に対応できる病院などの医療機関リストを公表しております。
生活を支えるための経済支援
新型コロナウイルス感染症の影響による国・自治体からの経済支援についてまとめました。なお、経済支援に関連した詐欺が多発しております。詐欺にご注意ください!絶対に教えない!渡さない!
特別定額給付金
(2020年5月26日時点)
特別定額給付金は新型コロナウイルス感染症による経済的影響への緊急経済対策の一施策として、2020年に実施される日本に住民基本台帳がある世帯主に定額の現金を給付する制度、またはその給付金です。1人当たり一律10万円支給されます。
緊急小口資金11)
(2020年5月26日時点)
- 対象:
- 新型コロナウイルスの影響を受け、休業等により収入の減少があり、緊急かつ一時的な生計維持のための貸付を必要とする世帯
- 内容:
- 子供の休校によりやむなく休業、または個人事業主等の特例の場合、急な生活費を要する方に20万円、その他の場合に10万円
- 返却期限:
- 2年以内(借りた後最大1年間返済を猶予、その後2年以内に返済)※返済時の所得状況に応じて免除可能
- 申込先:
- お問合せ:
- 個人向け緊急小口資金・総合支援資金相談コールセンター
TEL 0120-46-1999
受付時間 9:00~21:00(毎日)
総合支援資金
(2020年5月26日時点)
- 対象:
- 新型コロナウイルスの影響を受け、収入減や失業により生活維持が困難な世帯
- 内容:
- 原則、自立相談支援事業等による継続支援を受けることが要件
単身:月15万円以内
2人以上:月20万円以内
原則3ヵ月、最長12ヵ月 - 返却期限:
- 10年以内 ※返済時の所得状況に応じて免除可能
- 申込先:
- お問合せ:
- 個人向け緊急小口資金・総合支援資金相談コールセンター
TEL 0120-46-1999
受付時間 9:00~21:00(毎日)
家賃の支援:住居確保給付金
(2020年5月26日時点)
- 対象:
- 休業等により収入が減収し、家賃の支払いが同様に困難になっている方、また65歳以上の方
- 内容:
- 3ヵ月から最長9ヵ月、一定額を上限に家賃相当額を自治体から支給されます。
- お問合せ:
国民健康保険、後期高齢者医療及び介護保険の保険料の減免等
(2020年5月26日時点)
- 対象:
- 一定程度収入が下がった人
- 内容:
- 個人が納める保険料の減免等、納税を1年間猶予
- お問合せ:
-
- 国民健康保険料(税):お住まいの市区町村の国民健康保険担当課(国民健康保険組合にご加入の方は、加入されている組合)
- 後期高齢者医療の保険料:お住まいの市区町村の後期高齢者医療担当課
- 介護保険料:住まいの市区町村の介護保険担当課
住民税、固定資産税等の納付猶予
(2020年5月26日時点)
- 内容:
- 新型コロナウイルス感染症の影響により税金等の納付が困難な方
- 適用期間:
- 令和2年2月1日〜令和3年1月31日に納期限がくる税(納期限が過ぎた未納の国税・地方税についても、さかのぼり利用可能)
- 連絡先:
- お住まいの地域の市区町村の税務担当窓口
その他納税が困難な場合(国税の猶予制度)
(2020年5月26日時点)
国税の猶予制度は、一時に納税をすることにより事業の継続や生活が困難となるときや、災害で財産を損失した場合などの特定の事情があるときは、税務署に申請することで、最大1年間、納税が猶予される制度です。国税局猶予相談センターでは、新型コロナウイルス感染症の影響により、国税を一時に納付することが困難な方からの、猶予制度に関する質問や相談を専門にお受けしています。国税局ではお住まいの地域を管轄する国税局猶予相談センターを公表しております。国税の猶予制度については地域の国税局猶予相談センターにお電話でご相談ください。
公共料金等の支払い猶予12)
(2020年5月26日時点)
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、電気・ガス料金の支払いなど生活に不安を感じておられる方に対し、上下水道13)、電気・ガス14)、固定電話・携帯電話・インターネットサービス15)の料金の支払いについて、猶予等、柔軟な対応を行うことを国から各企業に要請しました。料金の支払いのご相談は契約されている企業にお問い合わせください。
NHK受信料の支払い猶予
(2020年5月26日時点)
- 対象:
- 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により影響を受けた方
- 内容:
- 期日までに受信料を支払うことが難しい場合等に関するご相談
- 連絡先:
新型コロナウイルス感染症におけるトラブルについて
(2020年7月3日時点)
日本弁護士連合会では新型コロナウイルス感染拡大が原因による法的な悩みごとについて、弁護士が初回無料の法律相談に応じます。
- 全国共通電話番号
- 0570-073-567(平日午前11時~午後4時)
- ※日弁連「新型コロナウイルス法律相談全国統一ダイヤル」につながります。
- ※日本弁護士連合会のホームページでは24時間受付けのオンライン申込みができます。
また、日本弁護士連合会のホームページには新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって生じ得る消費者問題に関し、その対応について、日本弁護士連合会の消費者問題対策委員会がまとめたQ&Aが公開されています。イベント、旅行、定期券、ホテルなどのキャンセルなどについて詳しく解説しております。また、借金の支払い、給与を事実上の担保として資金を提供し手数料を要求する「給与ファクタリング」、住宅関連、悪質商法対策なども取り上げております。
文献
- 新型コロナウイルス感染症関連 資源エネルギー庁
- 「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイントをまとめました(新型コロナウイルス感染症)厚生労働省
- 日本福祉大学健康社会研究センター 新型コロナ対策への示唆 電話・メールでの交流のみでも健康リスクは軽減されるのか(第1報). JAGES Press Release No:225-20-16