健康長寿ネット

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最新研究情報(機関誌Aging&Health No.74 2015夏号より)

公開日:2016年8月26日 12時00分
更新日:2019年2月 1日 22時20分

血清ビタミンD濃度と骨折リスクとの相関はUカーブを示す?

 血清25水酸化ビタミンD(25OHD)濃度と骨折リスクとの関係は議論が尽きない。地域在住高齢男性(70~97歳)1,662名を平均4.3年間追跡したCHAMP研究では、123例の新規骨折が認められたが、25OHDが第4番目の5分位(25OHD60 〜 72 nmol/L)の群を標準とすると、第1番目の5分位(25OHD < 36 nmol/Lのハザード比は3.5(95% CI 1.7-7.0)、第5番目の5分位(25OHD > 72 nmol/L)のハザード比は2.7(95% CI 1.4-5.4)と、両群で骨折リスクが有意に高値を示した(Bleicher K et al. J Bone Miner Res29. 2024-2031, 2014)。

遅老延寿:われわれはそこへどれだけ近付けただろうか

 近年、老化の基礎研究から老化のメカニズムがずいぶんと理解できるようになった。中でも老化を促進する細胞内シグナル系研究の進展は著しい。ただし動物実験レベルではあるが。2013年秋にイタリアの長寿の島、シチリアのエリチェの町に、老化の基礎研究分野の世界的なリーダーたちが一堂に会したという。そのときの議論のまとめがごく最近、Aging Cellに出た。議論の焦点は老化を遅らせる戦略について。30の著者名を眺めて、それぞれの研究成果の一端をかじれば、今の基礎老化の最先端がみえてくる気がする。米国USCのLongoが中心に取りまとめているが、この分野での欧米の主要な研究を俯瞰することができる(LongoVD et al. Aging Cell. April 22 (Epub),2015)。

クロトーとアルツハイマー病の接点?

 アルツハイマー病(AD)の発症には老化そのものが大きなリスクとなる。一方で、日本発の老化制御因子としてKlothoの存在が知られている。Klothoを過剰発現するとマウスの寿命が延び、脳機能が改善され、認知能も向上する。ではこれはADを止めることができるだろうか?ヒトでのADを模倣したhAPP高発現マウスで調べてみると、Klothoは海馬のシナプスでNMDA受容体レベルを上げ認知能を亢進した。ADの治療戦略の1つとしてKlothoの活性化も効果的かもしれない。サンフランシスコにあるUCSFを中心とした研究である(Dubal DB et al. J Neurosci. 35. 2358-2371, 2015)。

スマートフォンを用いた不整脈の判別

 心拍数を計測できる多くのスマートフォンが販売されているが、疾病の異常診断はできなかった。Chongらは、判別アルゴリズムを内蔵したスマートフォンを開発した。RR間隔の時間解析から正常洞調律と心房細動、心室性・心房性期外収縮を判別するという。99名の対象者に対して2分間の心拍計測で、それぞれの感度、特異度は0.97以上であり、簡単なスクリーニングが可能になったといえる(Chong JW et al.Arrhythmia Discrimination using asmart phone. IEEE JBHI, 2015)。

活動量センサによる夜間排尿の定量的評価

 良性前立腺肥大(BPS)は高齢者にとって最も一般的な排尿障害である。BPSは夜間排尿回数に関連する。これまでは質問票を用いて回数を把握していたが、解体型活動量センサと光センサと室内の挙動を観察するセンサの組み合わせで、夜間排尿回数を検出する方法が試みられた。15名の対象者による基礎実験では、排尿回数の誤検出が0.33であったという。簡単なセンサにより、より客観的に診断、治療をできることが示唆された(Huppert V et al.Quantification of nighttime micturition with an ambulatory sensor-based system. IEEE JBHI, 2015)。

TREM2はミクログリアの脂質センサーである

 TREM2のR47H変異は晩発性アルツハイマー病の遺伝的危険因子として注目されている。ワシントン大学のWangらは、TREM2がミクログリア上でリン脂質の受容体として働くこと、R47H変異はTREM2のリン脂質認識を低下させることを見出した。TREM2を欠損させたアルツハイマー病モデルマウス脳では、Aβ蓄積周囲のミクログリア集積が乏しいことから、TREM2が脳において脂質を受容してミクログリアを活性化させ、老人斑の除去に関与する可能性を示唆した(Wang Y et al.Cell. 160. 1061-1071, 2015)。

TBK1遺伝子のハプロ不全はALSおよび前頭側頭型認知症(FTD)の原因

 デューク大学のCirulliらは、ALS患者の全エクソーム解析を行い、新規病因遺伝子としてTBK1を同定した。ウルム大学のFreischmidtらもエクソーム解析から、TBK1遺伝子の機能欠失変異を複数同定した。TBK1は、ALSとの関連が示唆されるoptineurinやp62などの炎症シグナル・オートファジー関連タンパク質と結合し、リン酸化することから、ALSやFTD発症との関連が注目される(Cirulli ET et al.Science.347. 1436-1441, 2015 / Freischmidt A etal. Nature Neuroscience.18. 631-636, 2015)。

転載元

公益財団法人長寿科学振興財団発行 機関誌 Aging&Health No.74

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