胃ろうの適応と管理
公開日:2016年7月25日 14時00分
更新日:2019年2月 1日 20時11分
胃ろうの目的とは?
胃ろうとは、胃内と体外を結ぶ管状の瘻孔(ろうこう)のことをいいます。胃ろうは、胃に穴をあけて専用のチューブを挿入し、栄養補給をする方法であり、人為的かつ意図的に形成されます。
胃ろうには、経腸栄養の経路にするという目的があり、自発的に食事摂取ができない対象者への栄養管理に用いられます。また、悪性腫瘍などによる幽門部・上部小腸閉塞例においては、減圧の目的のためにも用いられることもあります。
胃ろうの特徴とは
胃ろうには、いくつかの特徴があります。
- 比較的短時間で、胃ろう用カテーテルの挿入術が行える
- 外科的方法に比べて、患者への負担が少なく、比較的安全に行える
- 合併症が少ない
- 挿入後の経過は、良好であることが多い
などです。胃に直接穴をあけて、カテーテルを挿入していることから、経管栄養と比較すると誤嚥のリスクが低く、誤嚥を繰り返す患者には改善も見られることがあります。
また、高齢者では、入院医療から在宅医療、施設で最期を過ごす人が多くなっていますので、そのようなケースでも、家族による管理が容易であったり、経管栄養よりも施設側に受け入れてもらえる傾向にあります。
胃ろうには、チューブ型とボタン型があります。チューブ型には、専用のチューブがあらかじめ付属していますので、そこから栄養剤を注入します。ボタン型には専用チューブが付属していないため、チューブをボタンに装着して栄養を注入します。
胃ろうの適応と禁忌(きんき)は
胃ろうの適応は、必要な栄養を自発的に摂取できないことと、正常な消化管機能を有しているということ、経管栄養の期間が長期に渡ると推測されることが、最初の検討項目です(図)。
そのうえで、
- 脳血管障害や認知症などによる自発的な摂食意欲の低下
- 神経筋疾患などによる嚥下機能の低下
- 頭部や顔面外傷による摂食障害
- 食道・胃噴門部病変(いふんもんぶびょうへん)※1による経口摂取機能の低下
- 長期の栄養補充が必要なとき
- 誤嚥性肺疾患の予防と治療が必要な場合
- 誤嚥性肺疾患を繰り返している
- 経鼻胃管留置に伴う誤嚥がある場合
など、検討すべき項目は多岐に渡っています。
一方、胃ろうが禁忌となる場合としては、
- 内視鏡の挿入が困難な口腔・咽頭のため、胃ろう増設部の確認ができない
- 食道や胃噴門部が狭窄※2している
- 大量の腹水が貯留している
- 極度の肥満
- 著明な肝腫大がある
- 胃の潰瘍性病変や急性粘膜病変、胃の手術の既往がある
- 横隔膜ヘルニアや高度の出血傾向
- 全身状態不良で予後不良と考えられる例
- 消化管吸収障害の場合
などがあります。
- ※1 食道・胃噴門部病変:
- 食道・胃噴門部病変とは、食道から、胃の入口である噴門(ふんもん)部にかけて、何らかの異常がみられる状態のこと。
- ※2 狭窄:
- 管状の臓器の内側が狭くなっている状態のこと
胃ろうの管理方法は
胃ろうの管理方法として日常的に行われるものは、栄養剤注入前後のケアです。
栄養注入前
注入口のふたを開けて、胃内の空気を脱気させた後、栄養剤を注入します
栄養剤注入時
注入時には、吐き気や腹痛、腹部膨満感などを起こしやすいので、注入量や注入速度、腹部の症状を確認しながら注入します。
栄養注入後
微温湯を注入し、チューブ内に栄養剤が残存することによる閉塞、栄養剤の腐敗を防ぎます。注入に使用したチューブは、よく流水で洗い、10倍希釈した酢酸水や0.01%の次亜塩素酸ナトリウムに1時間つけてよく乾燥させます。
胃ろうの管理のポイント
胃ろうの管理のポイントとして、胃ろうの観察を行うことも大切です。胃ろう周囲の皮膚は、栄養剤や胃液が胃内からの漏れたり、異物である胃ろうのチューブが接触することによる皮膚炎や皮膚潰瘍を起こしやすくなっています。皮膚を観察し、発赤や腫脹の有無を確認します。
また、胃ろうとチューブは、チューブに付属している風船(バルーン)を水で膨らませることによって固定されています。しかし、日が経つにつれてその水が少なくなってくる可能性があります。1~2週間に1度は、固定水の量を確認し、減っているようであれば適宜追加しましょう。固定水の量は製品によって違うため、医師や看護師の指示を仰ぐようにします。
胃ろうのチューブは、半年に一回の交換が目安です。前回交換してからの日数、次回交換までの経過、皮膚症状などの有無などを考慮し、交換の計画を立てます。
胃ろうは、チューブが一度抜けてしまうと、徐々に閉塞してしまいます。そのため、万が一胃ろうが抜けてしまった場合はすぐに元の穴に押し戻したうえで、病院に連絡して指示を受けるようにしましょう。
参考文献
- 静脈経腸栄養ガイドライン 第3版 Quick Reference 一般社団法人日本静脈経腸栄養学会