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甲状腺機能低下症

公開日:2017年6月30日 13時38分
更新日:2019年6月21日 11時46分

甲状腺機能低下症とは

 甲状腺は、頚部、気管の前に位置するホルモンを産生する臓器の一つです。甲状腺ホルモンは新陳代謝を調節する非常に重要なホルモンでヨードを材料として作られ、多すぎても少なすぎても体に重大な影響を及ぼします。

 甲状腺機能低下症は文字通りその働きが足りなくて引き起こされる様々な症状の総称です。

甲状腺機能低下症の原因

 甲状腺機能低下症の原因として最も多いのが、慢性甲状腺炎によるものです。また、亜急性甲状腺炎の経過として現れることがあります。

 その他、沿岸地域などではヨードの豊富な昆布などの海藻類のとり過ぎによるものもしばしば見られます。高齢の方で、特に原因がなく徐々に進行する一群が見られます。比較的稀ですが、甲状腺の働きを支配している下垂体の異常によることもあります。

 なお、医原性のものとして甲状腺機能亢進症の治療に用いられる抗甲状腺剤の過剰投与や放射性ヨード治療後、甲状腺切除術後、慢性肝炎に対するインターフェロン治療後のものなどがあげられます。

甲状腺機能低下症の症状

 甲状腺機能低下症の代表的な症状としては、疲れやすい、寒さに弱い、体がむくみやすい、眉がうすくなる、体重増加などが見られます。血液中のコレステロール高値は自覚症状ではありませんが、最初に分かる異常であることがあります。

 慢性甲状腺炎やヨード過剰によるものでは、甲状腺全体が腫れること(びまん性甲状腺腫)が多いですが、甲状腺腫は明瞭でないこともあります。

 高齢者では認知症(物忘れ)がその症状であることがあります。

甲状腺機能低下症の診断

 採血により甲状腺ホルモンを測定し、低下があれば甲状腺機能低下症と診断されます。同時に下垂体から分泌され甲状腺の働きを支配している甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定します。甲状腺ホルモンが低値でありTSHが高値であれば、下垂体の働きは正常で機能低下になっている状態と考えられます。慢性甲状腺炎では抗甲状腺抗体が陽性になるので、診断の助けにします。

 また、甲状腺の機能を調べるための放射性ヨードの取り込みを見る検査(シンチグラフィー)や超音波検査が行われることもあります。

 なお、TSHが低値である場合は、その他の下垂体ホルモンの測定や、下垂体・視床下部の異常など頭蓋内の病変を調べるためのMRI(核磁気共鳴映像法)など精密検査が必要となります。

 TSHがやや高いが症状が見られず悪化もしない方が、高齢者の10%程度に見られることが知られており、潜在性甲状腺機能低下症といわれています。最近、これらの方では認知機能や活動性に問題がないばかりか平均余命が長いという研究結果が報告され、注目されています。今後の検討が必要と考えられます。

甲状腺機能低下症の治療

 慢性甲状腺炎や放射性ヨード治療後・手術後が原因である場合は、甲状腺ホルモンの補充療法を行います。投与量は徐々に増やして2~3ヶ月かけて正常に戻すようにします。

 高齢者では、慎重に治療必要性の検討および投与量の調節を行います。また、薬で治癒するのではなくホルモンを補充するのであり、内服を中止すれば再発しますから、一旦治療を開始したら、その継続が必要です。

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