MDS(骨髄異形成症候群)と白血病の症状
公開日:2016年7月25日 15時00分
更新日:2019年2月 1日 18時58分
MDS(骨髄異形成症候群)の症状
MDS(myelodysplastic syndrome)は、3種類の血液細胞(赤血球、白血球、血小板)の元になる造血細胞に異常が起こった病気です。そのため体の中には必要量の血液成分を作り出すことができず、正常な血液が不足してしまうため、様々な症状が出現します。
血液成分として主に上げられるのは「白血球」「赤血球」「血小板」の三つです。これらの血液成分が足りなくなると、以下のような症状が出現しやすくなります。
赤血球の不足による貧血
赤血球の役割は「酸素の運搬係」です。呼吸によって体内に取り込んだ酸素を赤血球が全身の細胞に送り届けることで、人は全身を動かすことが可能となります。
この赤血球がMDSによって減少すると、酸素を全身に届けにくくなるため、疲れやすくなる、めまいや動機、息切れがするなどの症状が出現します。
通常の貧血ならば、鉄分やビタミンB12、葉酸など赤血球の生産を助ける栄養素を取ることである程度の改善が期待できますが、MDSによる貧血の場合は血液を作る元となる細胞に異常があるため、いくら栄養素をとっても改善はされません。他の2つの症状に比べ、貧血症状は自覚しやすい症状とされています。
白血球の不足による易感染状態(いかんせんじょうたい)
白血球の役割は「外部からのウイルスや菌と戦うこと」です。よって、正常な白血球が減少すると、外部からのウイルスや菌と戦う力が弱まるため、感染 症になりやすくなります。
具体的には発熱しやすくなる、風邪などをひきやすくなることなどがあげられます。この症状については、「最近よく風邪をひくようになったな」と感じる程度で、なかなか風邪が治らないので医療機関を受診し、血液検査をしてみたら偶然MDSが発覚した、というケースも少なくありません。
血小板の不足による出血傾向
血小板の役割は「出血時、すぐに固まることで止血すること」です。よって、正常な血小板が減少すると、なかなか止血ができないという状態になってしまいます。そのため、痣が出来やすくなる、鼻血が止まりにくいといった症状が起こります。また、何もしていないのに、皮膚上に点状の出血が見られる「点状出血」が起こることもあります。
白血病の症状
白血病には大きくわけて「急性骨髄性白血病」「急性リンパ性白血病」「慢性骨髄性白血病」「慢性リンパ性白血病」があります。
その中でも今回は「急性骨髄性白血病」と「急性リンパ性白血病」が当てはまる「急性白血病」について解説していきます。
症状には大きくわけて「造血障害」と「白血病細胞の臓器浸潤」の二つがあります。
造血障害
白血病も、MDSと同様に「正常に血液が作れなくなること」で発症します。そのため、正常な血液が作られなくなることで起こる症状も、MDSと同様に「貧血」「易感染状態」「出血傾向」の三つとなります。
それぞれの症状について、詳しくはMDSの症状をご参照ください。
白血病細胞の臓器浸潤
MDSは「前白血病状態」とも呼ばれており、造血障害はMDSに比べて急性白血病の方が強く出現します。
急性白血病はMDSに比べて異常が起こった造血細胞の割合が高いため、より様々な臓器に浸潤し、以下のような症状が出現します。
- 歯肉に浸潤し、腫れて出血しやすくなる
- 中枢神経に浸潤し頭痛や嘔吐を引き起こす
- リンパ節が腫脹する
- 肝臓や脾臓が腫脹する
これらのうち、リンパ節や肝臓、脾臓の腫脹が比較的よく見られる症状となります。
MDS(骨髄異形成症候群)と急性白血病の症状の違い
MDSは白血病の前症状段階とも言われていますが、それは症状の違いにも表れています。
白血病の中でも特に急性白血病は、白血病細胞が劇的に増加するため、血液成分の低下による様々な症状が出現します。
映画などでもよく白血病発症時に「鼻血が止まらない」「口内炎ができて治りにくい」という描写がありますが、それらは症状の進行を表しているものです。
一方、MDSは急性白血病と違いゆっくりと進行します。そのため、体が血液成分の減少に徐々に慣れてしまい、血液成分の低下による症状が出現せず、無症状で経過することがあります。この場合は、たまたま受けた健康診断で血液成分の減少に気づき、精密検査の結果MDSがわかる、というケースもよく見られます。