頚椎症
公開日:2016年7月25日 09時00分
更新日:2019年6月11日 13時48分
頚椎症とは
頚椎症とは、具体的には図1のとおり首の骨と骨の間の椎間板(ついかんばん)が変性して狭くなり、骨の角が尖がって骨棘(こつきょく)を形成してきます。それにともなって、首の痛みだけでなく、時には、肩や腕、肩甲骨に痛みがツーンと走ることがあります。
また、「肩こり」という場合の痛みは、腕の付け根である肩関節ではなく、首の付け根に多いので、頚椎症と関連していることがあります。
脊髄症と神経根症
首は、頭を支えるという役目と手足にいく神経を保護するという機能を持っています。
したがって、頚(くび)の痛みはあまり強くなくても、字が書きにくい、ハシが使いにくい、シャツのボタンがかけにくいなどの手の器用な運動の障害、足が突っ張って歩きにくい、走ると転びそうになるというような足の障害がある場合には、背骨の神経(脊髄神経:せきずいしんけい)全体が圧迫を受けており、「脊髄症(せきずいしょう)」という病気が疑われます(図2)。
一方、痛みが首だけでなく、腕や肩甲骨にも走り、手がしびれたり、力が入らなくなったりする場合には、手にいく神経の枝(神経根:しんけいこん)が圧迫されているので、「神経根症(しんけいこんしょう)」が疑われます。
矢印の部分で頚椎の前方からの椎間板および後方からの靭帯により神経が圧迫を受けていることを示しています。
神経根症の治療
治療に関して、神経根症の場合は椎間板や骨棘(こつきょく)という骨の角が神経の枝に触って症状が出現するので、椎間板が吸収されたり、骨棘と神経の位置が少し変わったりするだけでも痛みが軽くなることがあります。
したがって、8割は痛み止めの内服や首の牽引(けんいん)をすることにより、自然に痛みが軽快しますが、極端に痛みが強い場合や、手の力が入らなくなった場合にのみ手術が必要となります。
脊髄症の治療
しかし、脊髄症の場合は、生まれつき神経の通り道が狭いことや骨と骨をつなぐ靭帯が厚くなり、神経全体の通り道を狭くしているので、3分の2は変わらないか、ますます症状が悪くなってきます。手が動かなくなってからでは、手術しても元のように手が使えるようにはなりにくいので、手術のタイミングが重要です。
また、軽い交通事故や転んでアゴや頭を軽くぶつけただけでも、手のしびれが強く出たり、気分が悪くなったりすることがあります。ひどい場合には手足が動かなくなってしまうこともあるので、症状に心当たりのある人は、一度、整形外科か脳神経外科の専門医を尋ねて、MRI(核磁気共鳴イメージ)を受けることをお奨めします。
頚椎症の手術治療
頚椎症の手術的治療は、神経根症では首の前から椎間板をくりぬいて神経の圧迫を取り除き、椎間板の空間に骨を詰めて固定します。最近では、人工骨を用いたり、椎間板をくりぬかずに手術したりする方法も開発されています。
神経根症でも、2~3箇所と広い範囲に神経の圧迫がある場合や脊髄症の場合には、首の後ろから、神経の通り道を構成している後ろの骨(椎弓:ついきゅう)を削って、扉を開くようにして通り道全体を拡大していきます。
神経への直接の操作が少ないため、神経への障害は生じにくく、手術後に手足が動かなくなることはほとんどありませんが、首を支える筋肉が弱くなってしまうため、手術後に重い肩こりが生じることがあります。