更年期障害
公開日:2017年7月 4日 10時00分
更新日:2022年11月24日 14時43分
更年期障害とは
更年期障害とは、すべての女性におこるわけではありません。首から上のほてり、腰や手足の冷え、肩こりや関節の痛みや油の切れた機械のようなぎこちなさ、疲れやすくやる気が起こらないなど、器質的変化に相応しない自律神経失調症を中心とした不定愁訴を主訴とする症候群と定義されています。
一方WHOでは、「閉経とは、卵巣における卵胞の消失による永久的な月経の停止」と閉経の定義を定めています。
更年期は正確な定義がなく、40~60歳の期間を指しています。更年期障害の程度を評価するため、1999年に日本人女性を対象とした更年期スコアが作成されました。
更年期障害の発症要因と障害
更年期障害の発症要因として、女性ホルモンの消退にともなう自律神経要因、対人関係や家族の問題などの社会的環境的要因、生来の性格や生育歴などの心理的性格的要因が考えられます。
またホルモンの低下により脂質代謝の変動、基礎代謝量が減少し、脂質異常症(高脂血症)、骨密度の減少、萎縮性膣炎、皮膚の衰えや尿失禁、性器脱、循環器系の老化や認知症の進展もみられます。
人生50年といわれていた時代は、死ぬまで月経が続いていました。令和3年(2021年)簡易生命表によると1)、女性の平均寿命が87.57歳となった今、50歳以降の女性は全人口の約51%(2021年)を占めるようになり2)、女性ホルモンが低下した状態で女性は37年以上も過ごすことになりました。
しかし更年期障害は、いつまでも続くわけではありません。またやる気がなくなったり情緒不安がみられる更年期の女性の中には、心の病気と混在している場合があります。
更年期障害の診断
採血によってホルモン値(エストラジオール、FSH)を測定し、更年期スコアでの評価、そして似たような症状があらわれる他の疾患(甲状腺疾患(リンク2参照)、うつ病や神経症などの精神神経疾患など)を除外することが必要です。
更年期障害の治療
ホルモン補充療法、漢方療法のほかに鎮痛剤、抗不安薬、抗うつ薬などの対処療法を行います。
特にホルモン補充療法は低下したホルモンを補うもので、更年期障害には非常に効果があります。しかし2002年のアメリカの臨床試験では、この治療を行った女性に乳癌、卵巣癌、虚血性心疾患、静脈血栓症が増加したという結果が発表されました。
しかし高度の肥満者、喫煙している女性、高齢者などを臨床試験の対象としていたこのアメリカの結果は、果たして日本の女性にもあてはまるものなのかが疑問視されました。よって日本更年期医学会では、この捨てがたいホルモン補充療法については低用量、投与期間の短縮、内服でなく貼付剤、徹底した管理を推奨しています。
また2005年12月、ホルモン補充療法を受けた日本人女性の乳癌の発症が、受けていない女性に比べ3割減少したことを厚生労働省研究班が発表しました。このように日本人女性に対する有効で安全性の高い治療法が確立されるのも遠くないと考えます。