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喘息の診断

公開日:2016年7月25日 12時00分
更新日:2019年2月 1日 20時12分

喘息の病態とは?

 「喘息予防・管理ガイドライン」の2015年版では、喘息の定義として「気道の慢性炎症を本態(基本的な病態)とし、臨床症状として変動性を持った気道狭窄(喘鳴、呼吸困難)や咳で特徴付けられる疾患」とされています。気道の慢性的な炎症を起こす原因は様々ですが、炎症が続くと気道の内側表面が傷害を受けます。さらに気道構造の変化(リモデリング)を起こすと、非可逆性(元には戻らない)気流制限(空気の通りが悪くなる)をもたらすとされています。

 喘息患者さんの気道内側の表面には、解剖学的にみて様々な変化が起きています。また、免疫学的にみると、特にアトピー型の喘息患者さんの場合、環境アレルゲン(アレルギーの元となる物質)に対するアレルギー反応がみられます。

 喘息にはいくつかの分類方法がありますが、一般的には

  • 環境アレルゲンに対するアレルギー反応がみられるアトピー型
  • アレルギー反応がみられない非アトピー型

の2つに分けられます。小児喘息の患者さんは、アトピー型であることが多いのですが、成人以降で発症する喘息患者さんは、小児期に発症する人よりも非アトピー型が多くなる、という特徴があります。つまり、小児期に発症した場合と、成人になってから発症した場合では、治療方法が変わってくる可能性があります。

喘息の診断基準とは

 喘息の診断の目安は、おおよそ次のようなものがあります。

  1. 発作性の呼吸困難、喘鳴(ぜんめい)、胸の苦しさ、咳(特に夜間や早朝に多く咳が出る)などを繰り返す
  2. 可逆性(薬の投与などのきっかけで元に戻ること)の気流制限がある
  3. 気道過敏症(少しの刺激でも反応しやすくなる)の亢進
  4. アトピー素因(アレルギー反応を起こす要因)がある
  5. 気道炎症がある
  6. 他の疾患を除外できる

 このうち、特に1.2.3.6.が重要であるとされています。しかし、喘息の初期では、喘鳴や呼吸困難が著明ではないこともあり、診断が難しくなることがあります。また、成人の喘息の場合、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や心不全を発症している人では、やはり喘息の確定診断が難しくなります。

喘息の重症度と発作強度の見極め

 喘息の重症度と発作強度を見極めることは、喘息の管理だけではなく、薬物療法で使用する薬剤や投与量を決めるために、重要な項目です。喘息の治療は基本的に、自覚症状を基準に考えられますが、重症度などを判断する場合は、PEF値、FEV1などの呼吸機能測定のデータが必要となります。

 喘息の重症度を決めるときは、この2つのデータを元に、%PEF、%FEV1というデータを算出し、その値と自覚症状の様子により判断されます。

PEF値とは:
吐き出した息の量ではなく、十分に息を吸い込んで思いっきり早く吐き出したときの最大の息の速さの事 (最大呼気流速度)で、ピークフローともいう。
FEV1とは:
最大吸気位(最大限まで息を吸い込み、肺がパンパンになった状態)から、できるだけ速く息を吐き出した(努力呼出)ときの、最初の一秒間に吐き出すことのできた息の量のこと。

軽症間欠型

  • 喘息症状の頻度:週に1回未満
  • 喘息症状の強度:軽度で軽い
  • 夜間の喘息症状:1か月に2回未満
  • %PEF、%FEV1:80%以上で、変動は20%未満

軽症持続型

  • 喘息症状の頻度:週に1回以上だが、毎日ではない
  • 喘息症状の強度:月に1回以上、日常生活や睡眠が妨げられる
  • 夜間の喘息症状:1か月に2回以上
  • %PEF、%FEV1:80%以上で、変動は20%~30%

中等症持続型

  • 喘息症状の頻度:毎日
  • 喘息症状の強度:週に1回以上、日常生活や睡眠が妨げられ、しばしば増悪(悪化)する
  • 夜間の喘息症状:1週間に2回以上
  • %PEF、%FEV1:60%以上80%未満で、変動は30%を超える

重症持続型

  • 喘息症状の頻度:毎日
  • 喘息症状の強度:日常生活に制限があり、しばしば増悪(悪化)する
  • 夜間の喘息症状:しばしば
  • %PEF、%FEV1:60%未満で、変動は30%を超える

 自覚症状のあらわれ方や頻度は主観的なものであり、人によって変わりますので、これだけで重症度を決めるのは難しくなります。そのため、%PEFや%FEV1といった、客観的なデータが必要となります。これらを総合的に判断し、投与する薬剤や投与量が決まります。

喘息発作の強さや発作強度による分類もある

 喘息に対する治療方針を決めるときには、もう1つの判断基準、発作強度があります。これは、大きく5つの段階に分けられますが、主に呼吸困難の程度で判断されます。また、発作が起きたときは気管支拡張薬が投与されますが、投与後の酸素飽和度(SpO2)や、動脈血酸素分圧(PaO2)などのデータも参考になります。

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