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多系統萎縮症の原因

公開日:2016年7月25日 13時00分
更新日:2019年2月 1日 20時34分

多系統萎縮症の原因について

 多系統萎縮症の根本的な原因は、まだ解明されておらす、国の難病として指定されています。しかし、髄鞘(ずいしょう)を形成する神経細胞の1つ、オリゴデンドログリアの細胞質内に、過剰にリン酸化されたα-シヌクレインというたんぱく質が、繊維化して凝集し、封入体※1を形成する所見が見られるため、これが病態に深く関係していると考えられています。

 また、多系統萎縮症の様々な症状を発生させる原因として、数は少ないですが、神経細胞内封入体、核内封入体など、複数のタイプの封入体が形成されることも、症状のあらわれ方に関係しているといわれています。
基本的には、小脳、中小脳脚(中脳と小脳をつなぐ部分)、脳幹(生命の中枢を司る部位で、黒質、オリーブ核などにより形成されている)、大脳基底核、大脳(特に運動野)など、自律神経に関連する各部位での変性が起こることで、発症するとされています(図)。

図:脳の解剖図。脳は小脳、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉、中脳、小脳、脳幹で構成されていることを示す
図:脳の解剖
※1 封入体:
封入体とは、細胞や核の中に存在する、本来は存在しない物質のことで、いくつかの感染症や、多くの神経性疾患において、特有の封入体が確認されている。神経性疾患の場合は、各疾患に特異的なタンパク質の立体構造が変化し、細胞内の封入体となっている

線条体黒質変性症の原因

 線条体黒質変性症の原因は現在のところ未解明とされています。線条体黒質変性症のみならず多系統萎縮症では線条体の他にも黒質、小脳皮質、橋核、オリーブ核、大脳皮質運動野などの神経細胞の変性やオリゴデンドログリア細胞質内のα-シヌクレインを含む封入体(グリア細胞質内封入体、ともいいます)を特徴的な臨床所見とされています。さらに、神経細胞質内や、グリア・神経細胞核内にも封入体が見られ、これも原因の1つであると考えられています。

 また、線条体黒質変性症は、ほとんどの例が孤発例(先天性、遺伝性ではなく、その個人だけに発症する例)とされているものの、ごく希に家族内や血縁関係での発症があります。現在、疾患のメカニズムについて、封入体や遺伝要因などを手がかりとした研究が、進められています。

オリーブ橋小脳変性症(OPCA)の原因

 多系統萎縮症 オリーブ橋小脳変性症(OPCA)の原因は、現在ではまだ、明確にはなっていませんが、臨床所見としては、特に小脳と脳幹が萎縮するケースが多く見られます。この部分の神経細胞とオリゴデンドログリアには、繊維化(不溶化)したα-シヌクレインが蓄積し、オリゴデンドログリアに嗜銀性封入体とよばれる異常所見が認められることから、これが原因となっているのではないかと推測されています。

 また、極めて稀ではありますが、血縁者での発症を認める例があることや、主症状もしくは病型の頻度に人種の差が大きくあることなどから、多系統萎縮症の一種であるオリーブ橋小脳変性症(OPCA)には病気に、この疾患になりやすい、何らかの要因が関係しているのではないかと考えられています。

シャイ・ドレーガー症候群の原因

 シャイ・ドレーガー症候群の原因も現時点では解明されていません。しかし、臨床所見として、交感神経節や脊髄灰白質(せきずいはいはくしつ)の中間質外側部、延髄(えんずい)の下オリーブ核、迷走神経背側核、橋核、中脳の黒質、線条体、小脳皮質など、自律神経や体の動きに関係する部分に、神経細胞の変性や脱落などが顕著に見られます。このことから、多系統萎縮症の他の病型と同じく、α-シヌクレインが過剰に発現、蓄積し、オリゴデンドログリアに嗜銀性封入体を生じることが、原因であると考えられています。

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