健康長寿ネット

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高齢者向けヨガの健康効果とは

公開日:2016年7月24日 00時00分
更新日:2021年1月 7日 11時11分

ヨガとは

 ヨガは、今から4500年前にインダス文明から始まり、瞑想から始まった心身の鍛錬の手段です。自分自身を見つめるためのツールや生き方として、健康法と一言では語ることのできない奥深さを秘めています。

 ヨガという言葉は「つなぐ」、「結びつける」という意味を持っています。ヨガは、心と体を結び付けて自分自身を見つめ、サーマディ(悟り:すべてのことから解放され、形や時を超えた悟りの境地1)に到達するための過程であるとされています。

 ヨガにはたくさんの流派が存在しています。その中でもハタヨガが世界的に盛んであり、ポーズ(アーサナ)、呼吸法(プラーナーヤーマ)、瞑想(ディアーナ)で構成されています。

ヨガのポーズ

 ヨガのポーズは非常にたくさんあります。ポーズをうまくとることが重視されがちですが、様々なポーズをとり自分の身体と向き合うことが本来の目的です。ポーズによって普段使わない筋肉が伸ばされて血流がよくなり、冷えの解消や代謝の向上、内臓の働きが促されます。身体の柔軟性が増して、筋力・体力・バランス能力の向上も期待できます。

ヨガの呼吸法

 ヨガは呼吸法を非常に大切にしています。息を吸って外界からエネルギーを身体へと充満させ、深く吐いて考えや感情を流していきます。ポーズを保つときはゆっくりした呼吸を行い、身体への意識を深めていきましょう。意識的な呼吸によって交感神経と副交感神経の働きが整えられ、ストレスの緩和、抑うつ気分の改善、心身の調和が図られます。

ヨガの瞑想

 ヨガでは瞑想を通して自分の心や身体に意識を向けていきます。自分を客観視することにより、本来の自分の心と身体の声に気づきやすくなります。心や身体の不調や変化に早目に気づいて対応できるので、セルフケアも行いやすくなります。

高齢者向けのヨガで期待できること

 ヨガは全身を動かしコリをほぐすことで、身体を柔軟に導き、筋力や持久力、バランス能力の低下を予防することが期待できます。また、近年の研究によると、瞑想には脳を休ませる効果があるとされ、認知症予防効果も期待されています2)。さらに、呼吸法や瞑想などの多面的なアプローチによって、心血管機能、呼吸機能の維持や抑うつ気分の改善、認知機能の維持など心身ともに効果が期待できます3)。すなわち高齢者向けのヨガは加齢による心身が衰えた状態である「フレイル」の予防につながると言えるかもしれません。

 ヨガは比較的安全に実施できると言われていますが、頑張りすぎるとかえって身体の痛みや怪我を引き起こす場合もあります。無理をせず身体が"心地の良い"と感じる範囲で実施することが重要です。

高齢者向けヨガの効果に関する研究

 イギリスで行われた65~85歳の方を対象に行われた研究によると、ヨガをすることで片足立ち時間の改善、バランス感覚・筋力の改善や、幸福感・倦怠感の改善効果が示されています4)

 片足立ち時間の改善は、転倒リスクを軽減し、骨折などの重大な怪我の予防効果が期待できます。また、幸福感や倦怠感など精神面のケアも加わることで、意欲・活動量の低下を防ぐことができます。

高齢者のフレイルとは

 フレイルとは、健康な状態と要介護状態の中間に位置し、ストレスに対する回復力が低下しているために、不活発な生活や様々な病気などによって簡単に要介護に至る状態のことを言います。年齢を重ねると社会的な交流が少なくなり、活動量が減りがちです。この状態が続くと、筋力低下や、食事量の低下、意欲低下などを引き起こし、心身の衰弱を招きます。こうした心身の衰弱が、更なる筋力の低下や体重減少、意欲の低下を引き起こす悪循環を繰り返すことにより、フレイルが進行する可能性が高くなります。

図1:フレイルの進行の過程を表す図。

 このようなフレイルの症状は、後期高齢者(75歳以上)における要介護の要因の1位と言われています5)。一方で、フレイルには可逆性があり、家族や医療者が早くフレイルに気付き対応することができれば、フレイルの状態から健康に近い状態へ改善したり、要介護状態に至る危険性を減らせたりする可能性があります。

高齢者向けヨガを安全に楽しむために

補助具を使って安全に

 椅子や壁、毛布、クッションなどの補助具を用いることで、安心・安全な環境でヨガができるようになります。また、補助具や壁に身体を委ね休ませるポーズをとることもでき、更なるリラックス効果も期待できます。例として、自宅でできる3つのポーズを紹介します。

椅子を使ったヨガの例

図2:椅子を使ったヨガの一例を表す図。
  1. 椅子に浅く腰をかけ、骨盤をたてます。
  2. 手を腰に当て、息を吸いながら背筋を伸ばします。
  3. 吐きながら、右ななめ後ろを振り返りましょう。
  4. 2~5呼吸程度、ポーズを保持します。
  5. 吸いながら、正面に戻ります。
  6. 反対も同様に行います。

タオルを使ったヨガの例

図3:タオルを使ったヨガの一例を表す図。
  1. 仰向けになり、右足を曲げ、足裏をマットにつけます。
  2. フェイスタオルを左足裏にかけ、天井に向かって伸ばします。
  3. ふくらはぎ・太ももの裏が心地よく伸びているのを感じるところで2〜5呼吸程度、ポーズを保持します。
  4. ゆっくり左足を緩め、マットに下ろします。
  5. 反対側も同様に行います。

壁を使ったヨガの例

図4:タオルを使ったヨガの一例を表す図。
  1. 膝を曲げ、壁にできるだけお尻を近づけて横向きに寝ます。
  2. ゆっくり仰向けになり、足裏を天井に向かって伸ばします。
  3. 3~15分程度、ゆっくりした呼吸を行いながらポーズを保持します。

※両手は頭の下でも、体側でも、心地が良いところで構いません。

 いずれも、ポーズの完成形を目指すのではなく、自分の身体の状態を確認しながら、気持ちのいい呼吸ができる範囲で行うことが大切です。

高齢者向けヨガはどこでできるか

 ヨガは全国のヨガスタジオや個人のヨガ教室、フィットネスクラブ、地域のスポーツセンターや公民館などで行われています。デイサービス(通所介護)のプログラムとしてヨガを取り入れているところもあります。ヨガは、行う場所によって実施スタイルも異なります。情報をよく収集して、レベルや雰囲気、費用が自分に合ったヨガの学び場を見つけましょう。

 ヨガの本やDVDなども発売されています。自分の興味が持てるものや無理なく行えそうなものを選んで、自宅で行ってみるのもよいでしょう。

 ヨガ教室などでは体験レッスンを実施しているところも多いので、まずは実際に体験して自分との相性を見極めましょう。

心配なことは、事前に共有する

 一般のヨガ教室などは健康な人を対象としているので、現在何かの疾患を持っていて治療中の方は、ヨガを始める前にかかりつけ医にヨガを始めてよいか、注意する点はあるかを確認しましょう。実際にヨガを行う際は、インストラクターに、治療中の病気についての注意点などを事前に相談しておいた方がよいでしょう。

文献

  1. ヨガが丸ごとわかる本 Yogini編集部編 枻出版社
  2. Zhang Y.et al.: The Effects of Mind-Body Exercise on Congnitive Performance in Elderly: A Systematic Review and Meta-Analysis. Int J Environ Res Public Health 2018; 15(12):2791
  3. Chen KM. et al.: Silver yoga exercises improved physical fitness of transitional frail elders. Nurs Res 2010; 59(5):364-70
  4. Oken et al.:RANDOMIZED, CONTROLLED, SIX-MONTH TRIAL OF YOGA IN HEALTHY SENIORS EFFECTS ON COGNITION AND QUALITY OF LIFE. Altern Ther Health Med 2006; 12(1):40-47
  5. 荒井 秀典:フレイルの意義. 日老医誌 2014;51:497-501

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