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下痢

公開日:2016年7月25日 17時00分
更新日:2019年6月19日 15時23分

下痢の症状

 医学的には、厳密な下痢(げり)の定義はありません。おおむね、便が水っぽくなっている状態や、固まっていない便が1日に何度も排出される状態のことを指して「下痢」と呼んでいます。それほど珍しい症状ではなく、体調によっては便がゆるくなるという方も多いと思います。

 下痢は、症状が続く期間で大きく2つに分けられます。発症からおおむね1週間以内に症状が落ち着くものを「急性下痢」、下痢が1か月以上続くものを「慢性下痢」としています。期間で分けるのは、急性下痢と慢性下痢では原因が異なることが多いからです。

 下痢のときに出てくる便には色々な状態の便があります。ただ便が柔らかい、もしくは水っぽいだけのこともあれば、便が黒い・白い・赤いなどいつもとは違う色がついているもの、さらには便に血液や粘液が混じっている場合もあります。便の形や色、臭いは下痢の原因を診断するときに非常に重要な手掛かりになります。

 下痢と同時に出現しやすい症状として、腹痛、発熱、悪心・嘔吐、発疹などがあります。これらが同時に出ているかどうかも、下痢の原因を考える上で大切なヒントとなります。

下痢の原因

 急性下痢を起こす原因のほとんどは、暴飲暴食や刺激物・アルコールの摂りすぎなど、生活習慣の乱れに基づくものです。それ以外に多いのは、ウィルスや細菌の感染によるものや食あたりによる下痢です。そのほか、薬剤性の下痢や心理的要因によるものなどがあります。

 急性下痢の中には、命に係わる病気が隠れているケースがまれにあります。例えば、細菌感染が重症化した場合(敗血症)や心筋梗塞、大動脈瘤の破裂、胃腸からの出血などの初期症状が下痢である、ということがあり得ます。これらの場合は、下痢のほかに腹痛や胸痛、血圧低下・ショック症状など他の症状が一緒に現れますので、注意が必要です。

 慢性の下痢の原因として、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)や大腸がんなどの腫瘍、乳糖不耐症、薬剤性の下痢などがあげられます。最近非常に増えてきたのが過敏性腸症候群という病気です。過敏性腸症候群は、腸そのものに異常はないのに腸の動きや分泌機能に異常が出る病気であり、ストレスなど心理的要因も原因の一つとされています。腸に異常があるような病気の場合は、やはり下痢のほかに体重減少や発熱などの症状を伴うことが多いので、鑑別(病気の見分け)に役立ちます。

下痢の診断

 下痢の期間や排便の回数、便の色や性状、最近の海外渡航歴や既往歴など、細かい問診を行います。ウィルス性腸炎などの場合は、問診のみでほぼ診断が可能です。細菌性腸炎を疑う場合には、便中の白血球数を調べたり便培養(ばいよう)を行ったりすることもあります。しかしながら、便培養の陽性率は決して高くないため、重症例や施設・病院内での感染流行を疑うような特殊な場合以外は行わないことがほとんどです。

 慢性の下痢で腸に異常があるような場合は、血液検査に加え腹部CT検査や上下部内視鏡検査など追加の検査を行い、診断を確定します。

下痢の治療

 急性下痢の場合は、特に治療をしなくても自然と良くなることがほとんどです。場合によっては整腸剤を投与しますが、必ず投与するべきものというわけでもありません。薬が原因であると思われる場合は、可能な限り被疑薬(ひぎやく;原因と疑われている薬)を中止します。腸の中で有害な細菌が増えてしまわないように、細菌性腸炎ではないことがわかるまで、下痢止め(止痢薬;しりやく)の投与は行いません。細菌性腸炎が疑われる場合でも、重症でない限り抗菌剤の投与はかえって有害であるとする報告がほとんどです。下痢が原因で脱水を起こしているが嘔吐などで口から水分を取れない場合には、点滴による水分補給などを行います。

 慢性の下痢の場合、原因となる病気がある場合にはその治療を行います。

下痢の予防・ケア

 急性下痢のほとんどは、生活習慣の乱れから起こります。便がゆるくなってきたら、暴飲暴食を控え、おなかを温かくしてゆっくり休養を取りましょう。下痢をしているときには、脂っこい食事や辛いもの・アルコールやコーヒーなどの刺激物を控え、冷たいものの食べ過ぎ・飲みすぎには注意しましょう。

 下痢をしているときには、身体の水分が便と一緒に出てしまうため、脱水状態になりやすいです。皮膚や口の中が乾いているな、と思ったら脱水状態にあるサインです。経口補水液なども上手に利用し、適度な水分補給を心がけましょう。

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