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前頭側頭型認知症

公開日:2016年7月26日 18時00分
更新日:2019年11月 8日 16時21分

前頭側頭型認知症とは

 前頭側頭型認知症とは「神経変性」による認知症の一つで、脳の一部である「前頭葉」や「側頭葉前方」の委縮がみられ、他の認知症にはみられにくい、特徴的な症状を示します。神経変性による認知症は、脳の中身である神経細胞が徐々に減ってしまったり、一部に本来みられない細胞ができ、脳が委縮することで発症することがわかっています。

前頭側頭葉型認知症の症状

 脳の中で、前頭葉は「人格・社会性・言語」を、側頭葉は「記憶・聴覚・言語」を主につかさどっています。

 そのため、前頭側頭葉型認知症を発症すると、これらが正常に機能しなくなることにより、下記のような特徴的な症状が表れます。

社会性の欠如

 万引きのような軽犯罪を起こす、身だしなみに無頓着になるなど、社会性が欠如します。

抑制が効かなくなる

 相手に対して遠慮ができない、相手に対して暴力をふるう、度を越したふざけをするなど、自分に対して抑制が効かなくなります。

同じことを繰り返す

 いつも同じ道順を歩き続ける、同じような動作を取り続けるといった、同じ行動を繰り返すようになります。

感情の鈍麻(どんま)

 感情がにぶくなる、他人に共感できない、感情移入ができないといった、感情の鈍麻(どんま:感覚がにぶくなる)が起こります。

自発性な言葉の低下

 相手に言われたことをオウム返しする、いつも同じ言葉を言い続けるといった、自発的な言葉が出にくくなります。

 これらの症状が緩徐(かんじょ:ゆるやかで静か)に進行し、発症後平均6~8年で寝たきりの状態となります。

前頭側頭葉型認知症の原因

 前頭側頭型認知症の原因は現在研究が進められており、最近の研究で脳の神経細胞の中にある、「タウ蛋白」および「TDP-43」というたんぱく質が関与していることがわかってきました。

 しかし、原因解明までには未だ至っていません。

 前頭側頭葉型認知症の中でも、ピック球と呼ばれる神経細胞の一種が見られるものを、前「ピック病」と呼び、前頭側頭葉型認知症の一つとしています。

前頭側頭型認知症の診断

 前頭側頭型認知症を疑う場合、まず「問診」を行い、前頭側頭型認知症特有の症状が出ているかを確認します。

 このとき、患者本人以外に家族にも同席してもらい、自宅での様子を客観的視点から聞くことで、総合的に診察を勧めていきます。

 問診の結果、前頭側頭型認知症の疑いがある場合には、アルツハイマーと区別するためにCTやMRIによって前頭葉や側頭葉前部に委縮が認められるかを調べます。

 アルツハイマーの場合は記憶をつかさどる「海馬」と呼ばれる部分から委縮が始まり、やがて脳全体が委縮するため、CTやMRIでも前頭側頭型認知症とアルツハイマー病は区別することができます。

 また、必要に応じて脳内の血の流れを見るための「脳血流シンチグラフィー」や、がんの発見にも効果的な「PET」と呼ばれる検査によって、血流や代謝の低下を認めることで、前頭側頭葉型認知症と診断します。

前頭側頭型認知症の治療

 前頭側頭型認知症に対して、症状を改善したり、進行を防いだりする有効な治療方法は開発されていません。

 前頭側頭型認知症の特徴的な症状に対して、抗精神病薬を処方する対症療法が主に行われています。

前頭側頭型認知症のケア

 前頭側頭型認知症は、発症年齢が50~60代と比較的若く、働き盛りの年代で発症することが多いことや、患者さんご本人が「自分は病気である」という自覚がないこと、特徴的で対応が難しい症状が多いことから、ご家族による介護の負担はとても大きなものとなります。そのため、家族だけで抱え込まず、専門医や福祉サービス、家族会などプロの方や同じ境遇の方々と情報を共有し、連携していくことが大切となります。

関連書籍

 公益財団法人長寿科学振興財団は超高齢社会における喫緊の課題として認知症の実態、診断・予防・ケアについて学術的研究成果を「認知症の予防とケア」と題して研究業績集にまとめました。研究業績集の内容を財団ホームページにて公開しております。是非ご覧ください。

公益財団法人長寿科学振興財団 「認知症の予防とケア」平成30年度 業績集

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