健康長寿ネット

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運動器不安定症

公開日:2016年7月25日 09時00分
更新日:2023年8月16日 14時17分

運動不安定症とは

 運動器不安定症とは、「高齢化により、バランス能力および移動歩行能力の低下が生じ、閉じこもり、転倒リスクが高まった状態」と定義された病気です。平成18年4月に認められた新しい病名です。

 運動器とは、骨、関節、筋肉、靱帯などから構成され、日々の活動を行う重要な器官です。運動器に障害を受けると自分の身の回りのことができなくなって、介護を必要とすることにもなります。

 高齢者社会の到来とともに、運動器の機能が低下してきて、転倒したり、最悪骨折を受傷してしまったり、介護を受ける必要がでてきた高齢者が増加してきたために、新しくつくられた病名です。

 主として整形外科を中心とした科で運動器不安定症と診断されることが多いですが、これらの方は、医療機関において保険診療で運動器リハビリテーションを受けることが可能となります。医療機関におけるリハビリテーションでは筋力強化、関節の動きをよくする訓練および歩行訓練などにより治療をし、バランス機能、歩行の安定性を向上させます。

 また、日々活動的な生活を送ったり、散歩や軽い運動を継続することは運動器不安定症の予防に役立ちますので自分で実行するとよいでしょう。

運動器不安定症の診断  

 運動器不安定症と診断するには、背中が後や横方向に曲がっている、足に骨折が生じた後、骨粗鬆症、膝や股関節の変形性関節症、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)、脊髄や筋肉・神経の病気、関節炎、下肢の切断、長期間の臥床後、頻繁に転倒する、などの状態や病気になっている人や、以前になっていた人で日常生活がほぼ自立しているか、外出に介助を要する虚弱高齢者である必要があります。運動器不安定症になる運動機能低下をきたす疾患は次の通りです。

  • 脊椎圧迫骨折および各種脊柱変形(亀背、高度腰椎後彎・側弯など)
  • 下肢骨折(大腿骨頚部骨折など)
  • 骨粗鬆症(骨がもろくて骨折しやすい)
  • 変形性関節症(股関節、膝関節などの関節が痛くなる)
  • 腰部脊柱管狭窄症(立っているときに足に痺れや痛みがでる)
  • 脊髄障害(脊髄症、脊髄損傷など)
  • 神経・筋疾患
  • 関節リウマチおよび各種関節炎
  • 下肢切断
  • 長期臥床後の運動器廃用(長い期間寝たきりであったもの)
  • 高頻度転倒者

 医療機関で運動器不安定症であることを確かめる方法としては患者さんに目を開いて片足で立っていただき、15秒間以上立てなかった場合や椅子から立ち上がり3m先の目印を回って再び椅子に座るまでの時間が11秒以上かかる場合のいずれかが該当する場合と決められています(表)。

表:運動器不安定症の診断としての機能評価基準
評価項目評価基準
1.日常生活自立度 ランクJまたはA(要支援+要介護1,2)
(日常生活がほぼ自立か介助を要する虚弱高齢者とは介護保険制度では要支援か要介護1,2と認定された人に相当します。)
2.運動機能 次の1または2の状態にある方
  1. 開眼片足起立時間15秒未満(目を開いて片足で立っていただき、15秒間以上立てなかった場合)
  2. 3m Timed up and go testで11秒以上要する方(椅子から立ち上がり3m先の目印を回って再び椅子に座るまでの時間が11秒以上かかる場合)

運動器不安定症の予防の必要性  

 人間は、年をとると誰しもバランス能力が低下し、歩行時に転びやすくなります。近年、糖尿病、高血圧、高脂血症などのメタボリックシンドローム(リンク2参照)の予防する目的であったり、健康維持のために運動が勧められています。しかし、運動器に障害があれば運動をすることは困難です。

 また、運動器の障害である運動器不安定症の先には要介護、寝たきりの危険が待っています。自分の身の回りのことが自分で可能な健康寿命をのばすためには、骨・関節・筋肉などからなる運動器の健康は必要で、自分で運動を行ったり、医療機関でリハビリテーションを行って運動器を健やかに保って寝たきり知らずの元気な毎日を送ることが大切です。

参考文献

運動器不安定症について 一般社団法人日本運動器科学会(外部リンク)(新しいウインドウが開きます)

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