高齢者の生きがいとは
公開日:2016年7月25日 11時00分
更新日:2019年2月 6日 10時43分
生きがいとは
人は誰でも、何らかの「生きがい」を持つことで、人生の価値や意味を見い出そうとします。広辞苑によれば、生きがいとは「生きるはりあい。生きていてよかったと思えるようなこと」と定義されています。つまり、人にとって「生きる価値や意味」を与えるものである、と捉えることができます。
「生きがい」という言葉の使い方としては、「生きがいを感じる」というのが一般的であり、主観的な感情を表す用語であるともいえます。従って、何を生きがいと感じるかは人によって様々であり、一概に定義できるものではありません。人によっては「生きていく上でのはりあい」というやや消極的なものから、「人生をどう生きていくか」というその人の人生の根源ともいえるような積極的なものまで、さまざまな捉え方があります。
高齢者はどの程度生きがいを感じているのか
では、高齢者は、どの程度の生きがいを感じているのでしょうか。平成25年に内閣府が行った「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査(平成25年)」1)によれば、高齢者のうちおよそ8割の人が、生きがい(喜びや楽しみ)を感じていると回答しています(グラフ1)。しかしその一方で、生きがいを感じる人は年々減少傾向となっています。
十分感じている | 多少感じている | あまり感じていない | まったく感じていない | 分からない | |
---|---|---|---|---|---|
平成10年 (n=2303) |
41.8 | 43.3 | 12.5 | 1.5 | 0.9 |
平成15年 (n=2860) |
39.5 | 42.2 | 14 | 2.9 | 1.5 |
平成20年 (n=3293) |
44.2 | 38.3 | 14.2 | 2.7 | 0.6 |
平成25年 (n=1999) |
38.5 | 40.7 | 16.4 | 3.9 | 0.5 |
また、年齢階級別にみると、年齢が高くなるほど、生きがいを感じている人の割合は、わずかではありますが低くなる傾向にあるようです(グラフ2)。
十分感じている | 多少感じている | あまり感じていない | まったく感じていない | 分からない | |
---|---|---|---|---|---|
60歳代 | 38.5 | 42.4 | 14.9 | 3.9 | 0.3 |
70歳代 | 39.3 | 38.6 | 17.3 | 4.2 | 0.7 |
80歳代 | 36.6 | 40.7 | 18.6 | 3.4 | 0.7 |
高齢者はどのような時に生きがいを感じるのか
高齢者が「生きがいを感じるとき」について見てみると、孫など家族との団らんの時(48.8%)が最も多くなります。一方で、前回調査した5年前と比較すると、「仕事に打ち込んでいる時に生きがいを感じる」と回答した人の割合は減少しています。では、男女別でみてみましょう。
男性の場合
男性は「趣味やスポーツに熱中している時(49.0%)」に生きがいを感じている人がもっとも多く、これに「孫など家族との団らんの時(40.7%)」、「旅行に行っているとき(36.4%)が続いています。
女性の場合
女性は男性と比べ、「孫など家族との団らんの時(55.4%)」、「友人や知人と食事、雑談をしている時(50.9%)」、「おいしい物を食べている時(44.4%)」に生きがいを感じている人が多い、という結果が出ています。
生きがいと健康の関連
では、生きがいと健康状態には、関係があるのでしょうか。
上記同様、内閣府が平成21年に行った「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査(平成20年度)」2)では、「趣味やスポーツに熱中している時」「仕事に打ち込んでいる時」「旅行に行っている時」に生きがいを感じると答えた人は、健康状態が良い層(良いとまあ良いの計)と、健康状態が良くない層(良くないとあまり良くないとの計)との差が大きいことがわかっています。一方で、「孫など家族との団らんの時」に生きがいを感じると答えた人の中では、両者の差はほとんどみられません。
このように、何が生きがいであるのか、どのような時に生きがいを感じるのかは、人それぞれであるのかもしれません。しかしながらこれらの調査結果から、健康状態や身近な人との関係が、高齢者の生きがいに深くかかわっていることが読み取れます。
健康を維持し、親しい友人や仲間との良好な関係を築き、親密な交流をもつことが、高齢者の生きがいを高める、大きな要因となるでしょう。