健康長寿ネット

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高齢者の食事摂取基準

公開日:2016年7月25日 07時00分
更新日:2025年2月17日 10時15分

日本人の食事摂取基準とは

 健康増進法第16条の2に基づき厚生労働大臣が定めるものとして、国民の健康の保持・増進を図るうえで摂取することが望ましい食事によるエネルギー及び栄養素の摂取量について、「食事による栄養摂取量の基準」を示すものです1)

 対象とするのは健康な個人または健康な人を中心として構成される集団で、高血圧、脂質異常、高血糖、腎機能低下に関するリスクを有していても自立した日常生活であれば含まれます。

 エネルギーと栄養素の指標があり、エネルギーの指標はエネルギー摂取の過不足を回避する目的として設定されています。また栄養素に関しては、3つの目的から5つの指標で構成されています。

 栄養素の摂取不足を回避するための指標は推定平均必要量、推奨量、過剰摂取による健康障害の回避は耐容上限量、生活習慣病の予防には目標量が栄養素ごとに設定されています。

高齢者に必要な摂取カロリー

 エネルギーの摂取量及び消費量のバランスの維持を示す指標にBMIを使用します。目標とするBMIの範囲内に体重を設定し、肥満以外に、高齢者の場合には低栄養予防のためにも、エネルギーをしっかりと補います。

 高齢者に必要な摂取カロリーは表1-1、1-2、目標とするBMIの範囲は表2の通りです。

表1-1:推定エネルギー必要量(男性)(kcal/日)1)
身体活動レベル低いふつう高い
65~74歳 2,100 2,350 2,650
75歳以上 1,850 2,250
表1-2:推定エネルギー必要量(女性)(kcal/日)1)
身体活動レベル低いふつう高い
65~74歳 1,650 1,850 2,050
75歳以上 1,450 1,750
※身体活動レベル:
「ふつう」は自立している者、「低い」は自宅にいてほとんど外出しない者に相当する。「低い」は高齢者施設で自立に近い状態で過ごしている者にも適用できる値である。
表2:目標とするBMIの範囲
年齢目標とするBMIの範囲
65~74歳 21.5~24.9
75歳以上 21.5~24.9

高齢者に必要な栄養素摂取量

 高齢者に必要な栄養素摂取量を考えるうえで、特に高齢者の場合は、たんぱく質が不足にならないように気を付けましょう。たんぱく質不足は低栄養を招きやすいため、1日3回の食事でたんぱく質豊富に含まれる肉や魚、大豆製品を取入れるとよいでしょう。また、食事だけでなく間食を取入れ、間食に牛乳・乳製品を摂るように心がけましょう。

 また、女性においては骨粗鬆症(こつそしょうしょう)予防のため、カルシウムの摂取は必要です。

 また、ビタミンや亜鉛などのミネラルの摂取は、皮膚の健康や免疫機能、体の調子を整えるうえで必要な栄養素です。日々の食事では、日本食の「一汁三菜」に代表されるバランスの良い食事メニューを心がけ、日々の食事から、1日に必要なエネルギーやたんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルを補うようにしましょう。

炭水化物・たんぱく質、脂質、ミネラル、ビタミンの5大栄養素を表すイラスト。食事摂取基準は、1日の摂取カロリーと栄養素の摂取量の基準を示しています。エネルギーの摂取量及び消費量のバランスの維持を示す指標にBMIを使用しますが、肥満の他高齢者は、低栄養予防のエネルギー補給やカルシウムの摂取も大切です。

高齢者に1日に必要な3大栄養素(たんぱく質・脂質・炭水化物)の摂取量

 高齢者に1日に必要な3大栄養素(たんぱく質・脂質・炭水化物)の栄養摂取量は表3-1、3-2の通りです。

表3-1:3大栄養素の基準値(男性)1)
栄養素量区分65~74歳75歳以上
たんぱく質(g/日)a推奨量 60 60
脂質(%エネルギー)目標量 20~30b 20~30b
飽和脂肪酸(%エネルギー)目標量 7以下b 7以下b
n-6系脂肪酸(g/日)目安量 10 9
n-3系脂肪酸(g/日)目安量 2.3 2.3
炭水化物(%エネルギー)目標量 50~65b 50~65b
食物繊維(g/日)目標量 21以上 20以上
表3-2:3大栄養素の基準値(女性)1)
栄養素量区分65~74歳75歳以上
たんぱく質(g/日)a推奨量 50 50
脂質(%エネルギー)目標量 20~30b 20~30b
飽和脂肪酸(%エネルギー)目標量 7以下b 7以下b
n-6系脂肪酸(g/日)目安量 9 8
n-3系脂肪酸(g/日)目安量 2.0 2.0
炭水化物(%エネルギー)目標量 50~65b 50~65b
食物繊維(g/日)目標量 18以上 17以上
  1. 65歳以上の高齢者について、フレイル予防を目的とした量を定めることは難しいが、身長・体重が参照体位に比べて小さい者や、特に75歳以上であって加齢に伴い身体活動量が大きく低下した者など、必要エネルギー摂取量が低い者では、下限が推奨量を下回る場合があり得る。この場合でも、下限は推奨量以上とすることが望ましい。
  2. 範囲に関しては、おおむねの値を示したものであり、弾力的に運用すること。

高齢者に1日に必要なビタミンの栄養摂取量

 また、ビタミンには脂溶性ビタミン4種(表4-1A、4-1B)と水溶性ビタミン9種(表4-2A、4-2B)あります。

表4-1A:脂溶性ビタミンの基準値(男性)1)
栄養素量区分65~74歳75歳以上
ビタミンA(㎍RAE/日)a推奨量 850 800
ビタミンD(㎍/日)目安量 9.0 9.0
ビタミンE(mg/日)b目安量 7.5 7.0
ビタミンK(㎍/日)目安量 150 150
表4-1B:脂溶性ビタミンの基準値(女性)1)
栄養素量区分65~74歳75歳以上
ビタミンA(㎍RAE/日)a推奨量 700 650
ビタミンD(㎍/日)目安量 9.0 9.0
ビタミンE(mg/日)b目安量 7.0 6.0
ビタミンK(㎍/日)目安量 150 150

 ビタミンAは2700(㎍RAE/日)、ビタミンDは100(㎍/日)、ビタミンEは65歳以上の男性800(mg/日)、65~74歳の女性700(mg/日)、75歳以上の女性650(mg/日)の耐容上限量が設定されています。サプリメントや健康食品の過剰摂取によって耐容上限量を超えないよう、栄養素の含有量を確認して摂取します。

  1. 推定平均必要量、推奨量はプロビタミンAカロテノイドを含む。耐容上限量は、プロビタミンAカロテノイドを含まない。
  2. α-トコフェロールについて算定した。α-トコフェロール以外のビタミンEは含んでいない。
表4-2A:水溶性ビタミンの基準値(男性)1)
栄養素量区分65~74歳75歳以上
ビタミンB1(mg/日)推奨量 1.0 1.0
ビタミンB2(mg/日)推奨量 1.4 1.4
ナイアシン(mgNE/日)推奨量 14 13
ビタミンB6(mg/日)推奨量 1.4 1.4
ビタミンB12(㎍/日)目安量 4.0 4.0
葉酸(㎍/日)推奨量 240 240
パントテン酸(mg/日)目安量 6 6
ビオチン(㎍/日)目安量 50 50
ビタミンC(mg/日)推奨量 100 100
表4-2B:ビタミンの基準値(女性)1)
栄養素量区分65~74歳75歳以上
ビタミンB1(mg/日)推奨量 0.8 0.7
ビタミンB2(mg/日)推奨量 1.1 1.1
ナイアシン(mgNE/日)推奨量 11 10
ビタミンB6(mg/日)推奨量 1.2 1.2
ビタミンB12(㎍/日)目安量 4.0 4.0
葉酸(㎍/日)推奨量 240 240
パントテン酸(mg/日)目安量 5 5
ビオチン(㎍/日)目安量 50 50
ビタミンC(mg/日)推奨量 100 100

 ナイアシンは65~74歳の男性300(mgNE/日)(80)、75歳以上の男性300(mgNE/日)(75)、65~74歳の女性250(mgNE/日)(65)、75歳以上の女性250(mgNE/日)(60)、ビタミンB6は65~74歳の男性55(mg/日)、75歳以上の男性50(mg/日)、65~74歳の女性45(mg/日)、75歳以上の女性40(mg/日)、葉酸は900(㎍/日)の耐容上限量が設定されています。サプリメントや健康食品の過剰摂取によって耐容上限量を超えないよう、栄養素の含有量を確認して摂取します。

  • ※ナイアシン(mgNE/日):耐容上限量はニコチンアミドの重量(mg/日)、( )内はニコチン酸の重量(mg/日)。

高齢者に1日に必要なミネラルの栄養摂取量

 ミネラルは多量ミネラル5種(表5-1A、5-1B)と微量ミネラル8種(表5-2A、5-2B)があります。ナトリウムの目標量は食塩相当量として示されています。

表5-1A:多量ミネラルの基準値(男性)1)
栄養素量区分65~74歳75歳以上
ナトリウム(食塩相当量)(g/日)目標量 7.5未満 7.5未満
カリウム(mg/日)目標量 3,000以上 3,000以上
カルシウム(mg/日)推奨量 750 750
マグネシウム(mg/日)推奨量 350 330
リン(mg/日)目安量 1,000 1,000
表5-1B:多量ミネラルの基準値(女性)1)
栄養素量区分65~74歳75歳以上
ナトリウム(食塩相当量)(g/日)目標量 6.5未満 6.5未満
カリウム(mg/日)目標量 2,600以上 2,600以上
カルシウム(mg/日)推奨量 650 600
マグネシウム(mg/日)推奨量 280 270
リン(mg/日)目安量 800 800

 カルシウムは2,500(mg/日)、リンは3,000(mg/日)の耐容上限量が設定されています。サプリメントや健康食品の過剰摂取によって耐容上限量を超えないよう、栄養素の含有量を確認して摂取します。

  • ※マグネシウム(mg/日):通常の食品以外からの摂取量の耐容上限量は、成人の場合350(mg/日)とした。通常の食品からの摂取の場合、耐容上限量は設定しない。
表5-2A:微量ミネラルの基準値(男性)1)
栄養素量区分65~74歳75歳以上
鉄(mg/日)推奨量 7.0 6.5
亜鉛(mg/日)推奨量 9.0 9.0
銅(mg/日)推奨量 0.8 0.8
マンガン(mg/日)目安量 3.5 3.5
ヨウ素(㎍/日)推奨量 140 140
セレン(㎍/日推奨量 30 30
クロム(㎍/日)目安量 10 10
モリブデン(㎍/日)推奨量 30 25
表5-2B:微量ミネラルの基準値(女性)1)
栄養素量区分65~74歳75歳以上
鉄(mg/日)推奨量 6.0 5.5
亜鉛(mg/日)推奨量 7.5 7.0
銅(mg/日)推奨量 0.7 0.7
マンガン(mg/日)目安量 3.0 3.0
ヨウ素(㎍/日)推奨量 140 140
セレン(㎍/日推奨量 25 25
クロム(㎍/日)目安量 10 10
モリブデン(㎍/日)推奨量 25 25

 亜鉛は65~74歳の男性45(mg/日)、75歳以上の男性40(mg/日)、女性35(mg/日)、銅は7(mg/日)、マンガンは11(mg/日)、ヨウ素は3,000(㎍/日)、セレンは65~74歳の男性450(㎍/日)、75歳以上の男性400(㎍/日)、女性350(㎍/日)、クロムは500(㎍/日)、モリブデンは男性600(㎍/日)、女性500(㎍/日)の耐容上限量が設定されています。サプリメントや健康食品の過剰摂取によって耐容上限量を超えないよう、栄養素の含有量を確認して摂取します。

参考文献

  1. 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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