アルツハイマー病
公開日:2016年7月26日 19時00分
更新日:2019年11月 8日 15時59分
アルツハイマー病とは
アルツハイマー病とは、進行性の脳の病気で、現在の治療では治癒することができません。記憶や思考能力がゆっくり障害され、最後には単純な作業もできなくなります。全認知症の約半数がアルツハイマー型認知症です。多くの方が亡くなるまでの10年以上、認知症の症状が続きます。
アルツハイマー病の症状
症状には脳の細胞が壊れて起こる中核症状と、行動・精神症状とも言われる周辺症状があります。患者には病気であるという認識がありません。
中核症状
中核症状の代表は記憶障害です。最近のことが覚えられず、同じことを何度も聞いたりします。病気が進むと昔の経験や、学習した記憶も失われます。
他にも、今日がいつか今どこにいのかがわからなくなる(見当識障害)、順序立てて作業(料理など)ができない(遂行機能障害)、見たものが何かわからない(ご飯を見ても食事とわからない)(失認)などがあります。そしてやらなくなったことに対して様々な言い訳をするようになります。
周辺症状
中核症状が出てくると、今までできたことができなくなったと落ち込んだり、周囲に怒鳴り散らす人もいます。居場所や地図が分からず徘徊もみられます。「物を盗られた」「夫が浮気している」などの妄想が出ることもあります。睡眠障害も伴うと昼夜逆転し、夜になるとさらに妄想や幻覚などが加わって出やすいのが夜間せん妄です。
このような症状がゆっくり進行していきますが、時間によって、日によって、接する人によって症状は大きく変化します。
アルツハイマー病の原因
アルツハイマー病の脳組織にはアミロイド斑や神経原線維変化が見られます。さらに脳の中の神経細胞のつながりがうまくいかなくなっているのが特徴です。
脳の中で記憶に関係する部位にアミロイド、神経細胞の中にタウという異常たんぱくが蓄積し、はじめに海馬が萎縮して、最後には脳全体が萎縮します。このような変化は症状が出る10年以上前から起きていると考えられます。
約10%の家族性アルツハイマー病では遺伝子の異常が判明してきていますが、ほとんどの患者は異常たんぱくが蓄積する原因はわかっていません。
アルツハイマー病の診断
記憶を中心とした長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やミニメンタル・ステート検査(MMSE)などの認知機能の検査が行われます。
画像検査ではCTやMRIで脳の萎縮を確認します。特に海馬の強い萎縮が特徴的なので、脳のMRIではVSRADという方法で海馬の大きさを評価します。
VSRADとはVoxel-Based Specific Regional Analysis System for Alzheimer's Diseaseの略で、前駆期を含む早期アルツハイマー型認知症の診断を支援するためのソフトのことです。
アルツハイマー病の治療
残念ながらまだ根本的な治療法はありませんが、この病気で脳内に不足している物質を補う薬物治療で、記憶障害の進行を遅らせることは可能になってきました。その他に異常な行動に関しては抗うつ剤などが使用されます。
現在異常アミロイドが溜まらないようにする治療が開発されつつあります。
アルツハイマー病のケア
アルツハイマー病は治癒する病気ではありませんが、早くに発見して治療を開始することで進行を遅らせることができます。治療が不十分である以上、ケアも重要で、家族1人で看護・介護し続けることは困難です。介護保険など社会資源を十分に使いましょう。
アルツハイマー病の介護で難しいのは、患者が他人や同居していない家族の前ではきちんと受け答えするため、周囲にアルツハイマー病と理解してもらえないところです。
患者の訴えを周りの人が相手にしないと、見捨てられたとさらに妄想が強くなることもあります。その人らしさを大切にして、妄想などの訴えには必ずその人なりの原因があること、昔を思い出す話や作業は患者の安心感を得られることなどを覚えておきましょう。
関連書籍
公益財団法人長寿科学振興財団は超高齢社会における喫緊の課題として認知症の実態、診断・予防・ケアについて学術的研究成果を「認知症の予防とケア」と題して研究業績集にまとめました。研究業績集の内容を財団ホームページにて公開しております。是非ご覧ください。